スターライト☆イレブン 創作大賞2024 漫画原作部門 第1話
あらすじ
現代、東京の星観ヶ丘高校に入学した月島広夢はクラブユースの選手だったが、半年前に地元の横浜で交通事故に遭い、脚を怪我してしまい、サッカーができなくなってしまった。そんな時、広夢は女子サッカー部に入部しようとしている同じクラスの宮下渚と出会った。渚は怪我でサッカーができなくなった広夢の事情を知り、元気付けるために広夢を部員勧誘を兼ねた女子サッカー部と商店街チームの親善試合に来て貰うように誘った。広夢は親善試合を観たことでサッカーが好きな気持ちを思い出し、部員不足でまだ部として認められていない女子サッカー部を応援するようになった。
主要キャラクター
月島広夢(つきしまひろむ)
・年齢:15歳(高校一年生)
・性別:男
・見た目:身長170cm。細身。普通の長さの茶髪につり目。
・特徴:本作の主人公。元クラブユースの選手でエースストライカーとして活躍していた。半年前、交通事故に遭い、脚を怪我しまい、サッカーを断念してから糸の切れた凧のように生活するようになってしまった。高校の同級生のサッカー少女の宮下渚と出会ったことでサッカーが好きな気持ちを思い出し、次第に前進するようになっていく。
宮下渚(みやしたなぎさ)
・年齢:15歳(高校一年生)
・性別:女
・見た目:身長155cm。小柄な体型。茶髪ロングヘアーの大きな目の美少女。
・特徴:ヒロイン。サッカー少女。ポジションはフォワード。五年前、難病で長い入院生活を送っていた時、広夢がクラブユースの選手として活躍してた試合を動画で観たことがきっかけとなり、元気になったら自分もサッカーをやると決意して手術を受けて退院した後、クラブチームに入り、サッカーを始めた。
第1話 ワンプレイで誰もが輝く
〇歩道(夜)
T「半年前」。
雨が強く降っている。
信号待ちする月島広夢(15)。
広夢「雨が強くなってきたな……」
信号が青に変わり、渡った瞬間、走行
して来たトラックに轢かれる広夢。
〇星観ヶ丘高校・外観(朝)
T「現在」。
都心に建てられている校舎。
〇同・校門・前(朝)
校門の前でスマホを操作しながら立っ
ている伊丹まどか(15)の元にボー
ルを手にしながら駆け寄る宮下渚(1
5)。
渚「まどか、お待たせ」
まどか「渚、遅いよ。八時に校門の前で待ち
合わせって言った当人が十分も遅れるなん
て」
渚「ごめん。入学式が楽しみで昨夜は中々眠
れなかったから」
まどか「遠足とか修学旅行とか何かのイベン
トがある度に遅刻する癖は昔と変わらない
んだから」
渚「あはは」
まどか「見た所、生徒のほとんどは女子生徒
なんだね」
渚「星観ヶ丘は元女子高で去年から共学に変
わったばかりだもんね」
校門をくぐる広夢の姿を目にする渚。
渚「あれ? 今のって……」
〇同・一年一組・教室(朝)
生徒一同、賑わう。
教室に入る豊口麗子(22)。
麗子「みんな、席に着いて」
生徒一同、席に着く。
麗子「皆さん、入学おめでとう。このクラス
の担任となった豊口麗子です。担当教科は
英語です。今年、大学を卒業して晴れて社
会人一年生になりました。皆さんと歳が近
いのでたくさんお話ししたり相談したり親
しくさせて貰いたいと思ってます。どうぞ
よろしくお願いいたします」
生徒一同に拍手を送られる麗子。
麗子「それじゃあ、皆さんからも一人ずつ自
己紹介して貰います」
窓側の最前列の席に座っている渚を目
にする麗子。
麗子「まずは窓側の一番前から自己紹介をお
願いします」
渚「はい」
立ち上がり、振り返る渚。
渚「宮下渚です。私は高校に入ってからやり
たい夢があります。その夢に向かって頑張
りたいと思ってます。よろしくお願いしま
す」
生徒一同に拍手を送られ、笑顔で席に
着く渚。
麗子「では、次は後ろの人」
まどか「はい」
立ち上がり、振り返るまどか。
まどか「伊丹まどかです。宮下さんとは幼稚
園の頃からの幼馴染でもあります。宮下さ
んだけでなく皆さんとも仲良くなれたら良
いなと思ってます。どうぞよろしくお願い
します」
生徒一同に拍手を送られ、照れ笑いす
るまどか。
× × ×
廊下側の最後列の席に座っている広夢
を目にする麗子。
麗子「それじゃあ、最後の人」
立ち上がる広夢。
広夢「月島広夢です。去年までは横浜に住ん
でましたが父の仕事の関係で東京に引っ越
して来ました。よろしくお願いします」
生徒一同に拍手を送られ、席に着く広
夢。
〇同・外観
チャイムが鳴る。
〇同・一年一組・教室
席に座りながら本を読む広夢。
会話する生徒一同。
男子生徒A「どこの部活に入る?」
男子生徒B「俺は美術部」
女子生徒A「私、ダンス部」
立ち上がり、教室を出る広夢。
〇同・階段
階段を上がる広夢。
広夢「どいつもこいつも部活の話ばかりしや
がって……俺だって怪我さえしなければサッ
カー部で活動してたはずなのに」
屋上に向かう広夢。
〇同・屋上
屋上にやって来た広夢の足元にボール
が転がる。
広夢「サッカーボール?」
ボールを拾う広夢の元に駆け寄る渚。
渚「すみませーん、ああ、月島君」
広夢「宮下さん」
渚「拾ってくれてありがとう」
広夢「このボールは宮下さんの?」
渚「うん、そうだよ」
ボールを渚に差し出す広夢。
広夢「はい」
ボールを広夢から受け取る渚。
渚「ありがとう」
広夢「宮下さん、サッカーやってるの?」
渚「うん、今日の放課後、女子サッカー部に
入部するの」
広夢「女子サッカー部なんてあったの?」
渚「去年、設立したらしいよ。私、この高校
に入ったら絶対にサッカーをやるって決め
てたの。それでここで少し練習してたの」
広夢「そうだったのか。じゃあ、練習の邪魔
になるといけないから俺は失礼するよ」
渚「あ、待って。月島君に聞きたいことがあ
ったの」
広夢「俺に?」
渚「月島君ってクラブユースの選手だったん
だよね? 横浜マリンスノウでエーススト
ライカーだったんでしょう?」
広夢「俺のことを知ってたのか?」
渚「私、クラブユースサッカー選手権大会の
試合をいつも観てたの。去年の大会の決勝
戦を観客席から観てたよ。月島君が優勝を
決めた時のシュートを見て感動したよ」
広夢「へえ、あの試合、観てたんだ」
渚「ねえ、どうしてなの?」
広夢「え?」
渚「どうしてサッカー部のないこの高校に入
ったの?」
広夢「……サッカーはもう辞めたんだ」
渚「辞めたってどうして!?」
広夢「ほっといてくれ」
立ち去ろうとする広夢の腕を掴む渚。
広夢「おいっ! 離せって!」
涙を流す渚。
広夢「えっ!?」
渚「何で!? 何で辞めたの!? 月島君な
らプロにだってなれるのに!」
広夢「……実は半年前に横浜で交通事故に遭
ったんだ」
渚「こ、交通事故!?」
広夢「ああ、トラックに轢かれてな。その時
に右脚の神経をやられて満足に走れなくな
ったんだ。サッカーはとても無理だって医
者から言われたんだ」
渚「そんな……」
広夢「俺からサッカーを失ったら何も残らな
い。だからサッカー部のないこの高校に入
学したんだ。一日でも早くサッカーを忘れ
るために」
渚「……知らなかったとは言え、ごめんなさ
い!」
泣きながら立ち去る渚。
広夢「……何で泣くんだ?」
〇同・外観
チャイムが鳴る。
〇同・一年一組・教室
生徒一同、教室を出る。
席に座りながら頬杖をついている渚に
声をかけるまどか。
まどか「渚、行こう」
渚「……」
まどか「渚っ!」
渚「え?」
まどか「どうしたの? 休み時間から元気な
いみたいだけど何かあったの?」
渚「ううん、何でもない。ちょっと考え事し
てただけだから。それで何?」
まどか「何って女子サッカー部に入部しに行
んでしょう?」
渚「ああ、そうだった!」
バッグを持って立ち上がる渚。
渚「お待たせ。行こう」
まどかと廊下に向かいながら広夢の席
を見る渚。
渚「月島君、もう帰ったみたい……」
教室を出る渚とまどか。
〇同・部室・前
『女子サッカー部』と書かれている看
板が貼られていた。
〇同・部室・内
ドアを開けて部室に入る阿部倉環奈(
16)。
環奈「みんな、お待たせ」
環奈を目にする篠原美咲(16)と沼
尻彩芽(16)と北沢真央(16)。
美咲「ああ、環奈」
彩芽「風紀委員の仕事お疲れ様」
真央「うちらもさっき来たとこや」
環奈「あら? みんな、スカートをいつも短
くしてない?」
美咲「そんなことないわよ。いつも通りよ」
環奈「ふーん、まあ良いわ。風紀を乱すと校
則を守らなくなる生徒が増えるから注意し
てね」
美咲「ええ、もちろん」
彩芽「環奈の生真面目は相変わらずだね」
真央「ほんまやな」
ドアを叩く音が鳴る。
環奈「はい、どうぞ」
ドアを開けて入る渚とまどか。
渚「あのう、すみません、女子サッカー部の
部室はここですか?」
環奈「ええ、そうよ」
まどか「私達、入部希望なんですけど」
驚く部員一同。
環奈「そうなの!? 歓迎するわ! どうぞ
入って!」
渚「ああ、はい」
部室に入る渚とまどか。
二つの椅子を並べる美咲。
美咲「どうぞ座って」
渚「どうも」
まどか「失礼します」
椅子に座る渚とまどか。
正面に椅子を置いて座る環奈。
環奈「二人はサッカーが好きなの?」
渚「はい、小学生の頃はクラブチームに入っ
てました。ポジションはフォワードです」
まどか「私は初心者ですけど」
環奈「二人共一年生?」
渚「はい、一年一組の宮下渚です」
まどか「一年一組の伊丹まどかです」
環奈「私、二年一組の阿部倉環奈」
美咲「私、二年三組の篠原美咲」
渚「篠原先輩って凄く大人っぽいですね」
まどか「私も女子大生なんじゃないのかと思
っちゃいました」
美咲「ええ、よく間違われるの」
彩芽「僕は二年二組の沼尻彩芽」
渚「へえ、沼尻先輩、僕って呼んでるんです
か?」
彩芽「うん、うちは兄が三人もいるから男の
子っぽい口調になっちゃったの」
真央「うちは二年四組の北沢真央。大阪生ま
れで小三の頃、こっちに引っ越して来たん
や」
まどか「あのう、他の部員の人達はまだです
か?」
環奈「実は、部員はこれで全員なの」
まどか「四人だけですか!?」
環奈「女子サッカー部は去年、私達だけで設
立したの。でも、その後は部員が集まらな
くて」
美咲「部員十一人と顧問がいないと正式な部
として認めて貰えないの。今は同好会って
形で活動してるの」
彩芽「サッカーをやりたがる女子なんてあま
りいないからね」
渚「でも、皆さんはサッカーが好きなんです
よね?」
真央「せや。うちらは小学校の頃から一緒で
よくサッカーして遊んでたんや。高校でも
サッカーやれたらええなって思って部を設
立したんや」
彩芽「今年こそは正式な部として認めて貰え
るように頑張らないとね」
まどか「そうでしたか。私達は去年、学園祭
に来た時に女子サッカー部があると聞いて
知ったんです」
美咲「それはありがとう」
渚「あのう、私も部員勧誘に協力します」
環奈「え? 良いの?」
渚「私、この高校に入ったら絶対にサッカー
をやるって決めてたんです。まどかも協力
するよね?」
まどか「はい、私もできる限り協力します」
環奈「ありがとう」
美咲「ねえ、環奈、昨夜、勧誘用のチラシを
作ったの。どうかしら?」
手にしている『来たれ! 女子サッカ
ー部! 初心者大歓迎! スターライ
トイレブン!」と書かれていたチラシ
を環奈に見せる美咲。
環奈「あら、良いじゃない。美咲が描いたっ
ていう勧誘用のチラシってこれのことなの
ね?」
チラシを見る渚とまどか。
渚「へえ、これって篠原先輩が描いたんです
か? 上手ですね」
美咲「私、小さい頃からイラストを描くのが
好きなの。このチラシを何枚も印刷して配
りながら勧誘しましょう」
環奈「そうね。それじゃあ、みんなで頑張り
ましょう」
部員一同「おおおおおっ!」
〇星観ヶ丘商店街(夕)
人々、賑わう。
〇宮下軒・外観(夕)
商店街に建てられている中華屋。
〇同・店内(夕)
カウンター席に座っている杉山雄二(
40)に水が入ったグラスを差し出す
宮下梓(38)。
梓「はい、杉山さん」
杉山「ありがとう。梓ちゃん」
厨房で調理する宮下明彦(40)。
明彦「杉ちゃん、ラーメン食ってくか?」
杉山「いや、すぐ帰るから遠慮するよ」
店内に入る渚。
渚「ただいま」
梓「ああ、渚、お帰り」
杉山「やあ、渚ちゃん」
渚「ああ、スポーツ店の杉山さん、いらっし
ゃい」
杉山「お邪魔してるよ。今、明彦ちゃんと商
店街チームの練習の打ち合わせをしてた所
なんだ」
渚「そうなんだ」
ため息をつく渚。
梓「渚、どうしたの? 具合でも悪いの?」
渚「ううん、そうじゃないの。今日、女子サ
ッカー部に入部したの。でも、部員が少な
くて勧誘したんだけど部員集めに苦労しち
ゃって」
梓「そうなの? それは大変だったわね」
渚「ねえ、何かないかな? どうすれば部員
が集まるか」
明彦「うーん、ただ勧誘するだけじゃあダメ
かもしれないな」
渚「え? どういうこと?」
明彦「実は、俺らがいた小学校ではサッカー
に興味を持ってくれる男子があまりいなか
ったんだ」
杉山「ああ、そんなことあったな。運動に興
味ない男子が多かったから」
渚「へえ、そんなことがあったんだ」
明彦「そんな時、俺と杉ちゃんがクラスの男
子を集めて試合をやったんだ」
渚「試合?」
杉山「ああ、みんなは最初、あまり乗り気じ
ゃなかったけどやってみたら面白いって言
ってくれてサッカーを好きになってくれた
んだ」
渚「試合か……あ、そうだ!」
〇星観ヶ丘高校・外観(朝)
日差しで明るく照らされている校舎。
〇同・一年一組・教室(朝)
教室に入る広夢の元に駆け寄る渚。
渚「月島君、おはよう」
広夢「ああ、おはよう」
渚「ねえ、月島君、今度の日曜日って何か予
定とかある?」
広夢「今度の日曜日? 特にないけど」
渚「じゃあさ。今度の日曜日の午後三時に月
村橋の河川敷に来てくれる?」
広夢「月村橋の河川敷? ああ、学校の近く
の? まあ、別に良いけど」
渚「本当に? ありがとう。じゃあ、今度の
日曜日に必ず来てね」
広夢「でも、何で?」
渚「それは来てからのお楽しみだよ」
立ち去る渚。
〇河川敷
T「日曜日」。
多くの人が集まっていた。
グラウンドで体操する商店街チーム一
同。
会話する明彦と梓と杉山。
明彦「杉ちゃん、ゴールは任せたぞ」
杉山「ああ、明彦ちゃんも点を入れてくれよ
な」
明彦「梓も今日の審判を頼んだぞ」
梓「了解」
体操するジャージ姿の部員一同。
彩芽「まさか、商店街チームと試合しながら
勧誘するなんて思いもしなかったよ」
真央「ああ、宮下さんのアイディアには驚い
たで」
美咲「商店街チームの人達も宣伝に協力して
くれたおかげで人がいっぱい来てくれたわ
ね」
環奈「後で商店街チームの皆さんにお礼を言
わないとね」
女子生徒一同にチラシを配る渚とまど
か。
まどか「女子サッカー部でーす!」
渚「スターライトイレブンをよろしくお願い
しまーす!」
河川敷にやって来る広夢。
広夢「何だ? この人だかりは?」
広夢の元に駆け寄る渚。
渚「月島君! 来てくれたんだ!」
広夢「まあ、家にいても暇だから。それより
この人だかりは何?」
渚「これから女子サッカー部の商店街チーム
の親善試合が始まるの」
広夢「親善試合?」
渚「月島君に今日の試合を観て貰いたいと思
って誘ったの」
広夢「俺に?」
渚「うん、今日は私達の試合を楽しんでって
ね」
立ち去る渚。
会話する部員一同。
渚「先輩達、頑張りましょう」
環奈「でも、試合するにも私達は六人しかい
ないわよ」
真央「せやな。五人も足りないと試合になら
へんし」
五人の小学生を連れて来るまどか。
まどか「あのう、足りない分はこの子達を入
れるのはどうですか? この子達もやりた
いと言い出して」
彩芽「うん、確かに、この子達を入れれば十
一人になるね」
美咲「環奈、良いんじゃないかしら?」
環奈「そうね。そうしましょう。みんな、よ
ろしくね」
小学生一同「はーい!」
真央「ポジションはどないする?」
渚「まずはゴールキーパーを決めた方が良い
ですよ。誰かやりたい人はいますか?」
まどか「……じゃあ、私がやろうかな」
環奈「それじゃあ、キーパーは伊丹さんにお
願いするわ」
まどか「あ、はい」
グロープをまどかに差し出す渚。
渚「まどか、はい、キーパーグローブ。杉山
さんから借りたの。これを使って」
グローブを渚から受け取るまどか。
まどか「ありがとう」
× × ×
ポジションに就く両チーム。
梓「これより商店街チームと星観ヶ丘高校女
子サッカー部の親善試合を始めまーす!」
ホイッスルを鳴らす梓。
キックオフする商店街チーム。
明彦「見るが良い! これがエースストライ
カー宮下明彦のキックオフシュートだああ
ああ!」
ボールを蹴り損ない、仰向けに倒れる
明彦。
観客一同、笑い声を上げる。
梓「もう恥ずかしいじゃない……」
明彦「だはは、参ったな」
ボールを奪い、ドリブルで上がる渚。
観客一同、驚く。
女子生徒B「宮下さん、上手い」
女子生徒C「流石は経験者」
〇月村橋
橋の上から試合を観る麗子。
麗子「ああ、あれね。女子サッカー部と商店
街チームの試合って……あら? あそこに
いるのは……」
〇河川敷
笑いながら試合を観る広夢。
広夢「あのおじさん、もう息が上がってて日
頃から運動不足だってことが分かるよ。他
のみんなはボールを追いかけるのを楽しん
でるだけでとても試合とは思えないな。こ
れじゃあ、サッカーを始めたばかりのガキ
と変わらないな……」
ハッとなり呟く広夢。
広夢「待てよ……サッカーってそういうスポ
ーツなんじゃないか……俺が初めてサッカ
ーを始めた頃もあんな風だった……勝ち負
けとか関係なくボールを追いかけるのが楽
しくてサッカーを好きになったんだ」
広夢の元に近寄る麗子。
麗子「月島君、こんにちは」
広夢「ああ、先生、こんにちは」
麗子「みんな、楽しそうね」
広夢「そ、そうですね」
麗子「月島君、脚を怪我してサッカーができ
なくなったんでしょう」
広夢「ご存知でしたか?」
麗子「他の先生達から聞いたの。月島君、サ
ッカーができなくて辛いでしょうけど、サ
ッカーが好きな気持ちは大切にした方が良
いわよ」
広夢「はい、分かりました」
試合を観る広夢。
シュートする明彦。
飛び込んでボールを取るまどか。
観客一同、驚く。
明彦「何っ!? 止めた!?」
渚「ナイス! まどか!」
まどか「篠原先輩!」
美咲にパスするまどか。
美咲「真央!」
真央にパスする美咲。
真央「彩芽!」
彩芽にパスする真央。
彩芽「環奈!」
環奈にパスする彩芽。
環奈「宮下さん!」
環奈からパスを受け、ゴールへ駆け上
がる渚。
渚「皆が繋いでくれたこのパス、無駄にしな
い!」
シュートする渚。
手で弾いてボールを外に出す杉山。
ホイッスルを鳴らす梓。
梓「女子サッカー部、コーナーキックのチャ
ンスです!」
会話する部員一同。
環奈「スコアはどっちも無得点。時間も残り
少ないわ。このコーナーキックがチャンス
よ」
彩芽「誰がコーナーキックをやる?」
渚「だったら私がやります。コーナーキック
なら何度もやったことがありますから」
美咲「でも、宮下さんが蹴るとして誰に合わ
せるの? コーナーキックからボールを受
け取ってゴールを決めるのはかなり難しい
わ」
彩芽「僕はやったことないから自信ないな」
真央「うちもや。責任重大やな」
環奈「相当な経験者じゃないとね」
渚「そうだ! ちょっと待ってて下さい」
立ち去る渚。
環奈「宮下さん!」
広夢の元に駆け寄る渚。
広夢「な、何だ?」
渚「月島君、ちょっと来て」
広夢「え?」
広夢の手を引きながらグラウンドに向
かう渚。
広夢「お、おい!」
麗子「ふーん、そういうことなのね」
広夢と一緒に部員一同の元に駆け寄る
渚。
環奈「宮下さん、彼は?」
渚「同じクラスの月島君です。彼はサッカー
経験者なんです。私が彼に合わせてコーナ
ーキックしますので」
広夢「いや、俺は」
彩芽「どうする?」
環奈「まあ、経験者なら良いんじゃないかし
ら」
美咲「じゃあ、私が彼と交代するわ」
渚「篠原先輩、すみません」
美咲「いいえ」
立ち去る美咲。
広夢「どうして俺を?」
渚「せっかく来てくれたのに観てるだけじゃ
あ悪いじゃない。月島君、走ることはでき
なくても蹴ることはできるでしょう」
広夢「まあ、でも、俺なんかで良いのか?」
渚「ワンプレイで誰もが輝く。それがサッカ
ーなんでしょう」
広夢「え?」
渚「それじゃあ、よろしくね」
ゴール前に立つ両チーム。
コーナーアークに立つ渚。
明彦「杉ちゃん、ここを守って延長戦だ」
杉山「おう」
ホイッスルを鳴らす梓。
ボールを高く蹴り上げる渚。
環奈「高過ぎ! 宮下さん!」
高くジャンプする広夢。
杉山「何っ!?」
オーバーヘッドキックする広夢。
ボールに手が届かずゴールを決められ
る杉山。
ホイッスルを鳴らす梓。
梓「ゴール! 女子サッカー部に一点入りま
したー!」
観客一同、歓声を上げる。
ホイッスルを鳴らす梓。
梓「ここで試合終了! 1対0で女子サッカ
ー部の勝利!」
喜ぶ部員一同。
抱き合う渚とまどか。
まどか「やったね! 渚!」
渚「うん! 勝ったよ!」
広夢の元に駆け寄る小学生一同。
小学生A「お兄ちゃん! 凄いよ!」
小学生B「今のってオーバーヘッドキックだ
よね!」
小学生C「僕にやり方教えて!」
広夢「あ、いや、あはははは」
照れ笑いする広夢を見ながら笑顔にな
る渚。
〇月村橋(夕)
夕日で紅く染まっている月村橋。
〇河川敷(夕)
観客一同、立ち去る。
会話する渚と明彦と梓。
渚「私、この後、ミーティングがあるから」
明彦「そっか。俺らは先に帰るから」
梓「暗くなる前に帰って来るのよ」
渚「パパ、ママ、今日はありがとう」
立ち去る明彦と梓。
会話するまどかと環奈。
環奈「さっきの伊丹さんのセーブは素晴らし
かったわ」
まどか「ありがとうございます」
環奈「伊丹さんにはキーパーの素質がありそ
うね」
まどか「そうですかね」
まどかと環奈の元に近寄る渚。
渚「ねえ、まどか、月島君を見なかった?」
まどか「月島君? ああ、さっき帰ったみた
いたけど」
渚「そっか」
まどか「月島君に何か用事でもあったの?」
渚「うん、ちょっとね。まあ、明日、学校で
会えるから良いか」
〇月島邸・外観(夕)
夕日で紅く染まっている月島邸。
〇同・広夢の部屋(夕)
ベッドに座りながら手にしているボー
ルを真剣な眼差しで見る広夢。
〈完〉
第2話 五年前のありがとう
第3話 魅入られた仲間
