〜料理で殺すな、食わせろ!〜『料理長殿、ご用心』(1978年米・伊・仏・西独)
『料理長(シェフ)殿、ご用心』
1978年製、米・伊・仏・西独合作という、やたら豪華な国際共同制作映画『料理長殿、ご用心(Who Is Killing the Great Chefs of Europe?)』

上映時間は約112分。
ミステリーとブラックユーモアをバターたっぷりで炒めたような、かなりクセのある一品。

あらすじ
物語は、ヨーロッパの一流シェフたちが次々と「自分の得意料理にちなんだ方法で殺される」という、グルメ界に対する悪意しか感じない連続殺人から始まる。
例えば⋯
フランス料理の巨匠は“ロースト”され、イタリア料理の達人は“水に沈められ”、とにかく「料理人に対するリスペクトどこいった?」と言いたくなる死に方のオンパレードである。
この悪趣味な事件に巻き込まれるのが、オムレツ・チェーン展開を目論むアメリカ人ロビー(ジョージ・シーガル)と、デザート職人ナターシャ(ジャクリーン・ビセット)の元夫婦コンビ。

色気と軽口を交えつつ、ヨーロッパ各地を転々としながら真相に迫っていく。
そして忘れてはならないのが、“食べることが人生そのもの”な大富豪マックス(ロバート・モーレイ)。
医者に止められてもなお食べ続ける姿は、もはやギャグというよりホラー。

彼が主催するグルメ誌が、すべての事件の発端になっているというのだから、食欲は時に殺意を生む。
本作の面白さは、「犯人は誰か?」というミステリーよりも、「どうやって殺すのか?」に妙な期待を抱いてしまう自分に気づくところにある。
完全に倫理観がフランベされている。
キャスト
ロビー ⋯ジョージ・シーガル

ナターシャ・オブライエン ⋯ジャクリーン・ビセット

マックス ⋯ロバート・モーレイ

ルイ・コーナー ⋯ジャン=ピエール・カッセル
ジャン・クロード・ムリノー ⋯フィリップ・ノワレ

スタッフ
監督⋯テッド・コッチェフ
製作総指揮⋯マーヴ・エイデルソン、リー・リッチ
製作⋯ウィリアム・オルドリッチ
原作⋯アイヴァン・ライアンズ、ナン・ライアンズ
脚色⋯ピーター・ストーン
撮影⋯ジョン・オルコット
音楽⋯ヘンリー・マンシーニ

この映画の面白さ
●“料理映画”なのに殺意が濃厚
本作最大の特徴は、「料理が全部うまそう」
なのに「調理器具が全部怖い」ことである。
オーブンを見るたびに不安になり、魚料理を見るたびに死亡フラグを感じる。
観終わったあと、高級レストランでシェフを見る目が少し変わる。

●ヨーロッパ観光映画としても優秀
ロンドン、ヴェネツィア、パリ。
各地の風景が非常に美しく、映像はまるで旅行パンフレット。
だがその裏で、「次はどの料理人がどう料理されるのか」という不穏な期待感が常に漂う。
優雅なのに不吉。
実に1970年代ヨーロッパ合作映画らしい空気である。

●ロバート・モーレイが全部持っていく
この映画、実は犯人探し以上に、「マックスが今日は何を食べるのか」が気になってしまう。
演じるRobert Morleyがとにかく最高。
歩く美食欲望そのもの。
医者に止められても食う。
周囲が死んでも食う。
若干しんみりした空気でも食う。
しかも毎回やたら美味そうに食べるので困る。
この人を見ていると、「人間、最後は健康より食欲だな」という危険思想に染まりそうになる。

注意■こんな人にはオススメできない
・純粋な本格ミステリーを期待する人
・料理を美しく楽しみたいグルメ志向の人
・ブラックユーモアや皮肉が苦手な人
このあたりの人が観ると、「なんでシェフがこんな目に?」というシンプルな怒りだけが残る可能性がある。

逆に言えば、「不謹慎とユーモアは紙一重」というジャンルが好きな人にはかなり刺さる一本だ。
ちなみに原作小説とは犯人が異なるため、「読んでから観る」か「観てから読む」かで二度楽しめる仕様になっているのもポイント。

どちらが好みかは、あなたの“味覚”次第である。
食べることは生きること。
だが、この映画では「食べることは死ぬこと」にもなりうる。
くれぐれも、観賞中の食事にはご用心。

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