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迫撃砲を撃つまでの準備を想像する (本文2787文字)

 迫撃砲はくげきほう(mortar)は、砲口から砲弾を落とし込んで発射する、軽量・簡易構造の歩兵用曲射火砲である。
 高い射角で山なりの弾道(山なり)を描き、着弾直前には垂直に近い角度で落下するので、山や障害物の裏側に隠れた敵を攻撃できる。

 迫撃砲は、戦争映画でよく見かけるし、構造や操作方法が素人にも分かりやすいので、あまり注目されない兵器だと思うが、私は敵に狙いをつけるときに測量のような計算が必用なのではないかと思う。

 私たちが迫撃砲の弾道を考えるとき、暗黙の前提として「①自砲と敵が同じ高度にいる。②自砲は平らな地面に設置する。③自砲と敵との間にはほどよい高さの障害物がある。」としているものと思う。

 この①から③の中で、実戦で通用しそうな前提は③だけであろう。

 ①と②は、「そんなに迫撃砲に都合のいい戦場があるかね。」と言いたくなるくらい攻撃側についての好条件なのである。

 大体が、敵は丘の上にいるなど自砲と敵との高度には差があることが多いだろうし(①)、自砲は傾斜地に設置することになるだろう(②)。

 最近、主な戦場となっている市街での戦いでは①が多いのではないかと思う。
 市街地での交戦では、敵はビル内に機関銃を設置したり、ビルの屋上に迫撃砲を設置して攻撃(防御)の拠点にすることが多いと思われる(私は実戦経験がないので、映画で観たことや想像を基に書いている。)。

 では、そういう敵をどのように迫撃砲で攻撃するかを想像する。

 まず、前提として自砲である迫撃砲で打ち出す砲弾の重量と火薬量は変更できないから(同じ砲弾を使うと思う。)、その弾道は一定であるはずである。
 となると、その砲弾の到達高度や飛距離の調整は、迫撃砲の砲の角度で行うことになる。砲の角度はすなわち砲弾の射出角度になる。

 ところで、この射出角度は「水平面からの砲の角度」としてデータ化されていることであろう。
 つまり、45度の射出角度なら最長到達距離に至るが最高到達高度を得ることができない。逆に、90度(真上)の射出角度なら(このような自殺行為は絶対しないだろうが)最高到達高度を得るが到達距離は最短になる。
 さらに0度(水平射撃)の射出角度なら、とても低い到達高度ととても短い到達距離になる(漫画『秘密探偵JA』で主人公が目の前に現れたパンサー戦車にこの射角で迫撃砲を発射し撃破したシーンがあった。この漫画は古い作品だったようだし、物語の舞台が貧しい発展途上国だったから、まだ軍隊で第二次対戦中の兵器を使っていたという設定だったと記憶している。)。

 恐らく、これらは射出角度と到達距離を一覧表に迫撃砲の砲手に配られていたことであろう。現在なら、砲手は電子的な装置で射出角度と到達距離の関係を知ることができるようになっているだろう。


 さて、ここからがこの稿で考えたいことになる。

 まず、市街戦で敵が建物を利用して潜伏している場合、こちらが道を通って行軍する場合、多くの場合敵は自軍より高い位置にいることになる。

 その敵を迫撃砲で攻撃する場合、自軍の迫撃砲の砲弾が描く放物線と敵の位置が交差するように砲の角度を調整する必要がある。
 これは、自軍と敵との仰角ぎょうかく(後述)が分かれば、計算できる。

 仰角 水平面(目線の高さ)を基準にして、上方の物体を見上げた時の視線と水平線がなす角度のこと。太陽、星、飛行機、建物などを見上げる時の角度を指し、別名「高度」とも呼ばれる。これと逆に見下ろす時の角度は俯角ふかくである。


 次に、迫撃砲の設置面である。
 市街戦の場合、多くはアスファルトやコンクリートの路面であろうが、瓦礫がれき(建物や道路の解体・改築時に生じるコンクリート破片、アスファルト片、レンガなどの不要物である。)の山もたくさんある。
 そういう足場のよくない場所に迫撃砲を設置すると、迫撃砲の底盤(後述)の水平を維持できなくなる。
 つまり、砲身と水平面との角度を知ることが難しくなる。

 底盤(Base Plate) 砲身を地面に支えるための強固な板。発射時の反動(衝撃)を地面に分散させ、吸収する役割を持つ。

 そこで、底盤と水平面との角度を知るか、砲身と水平面との角度を知る必要が生じる。

 底盤と水平面とおの角度を知ってもさらにそこから砲身の角度を算出する必要があるが、砲身と水平面との角度を知ることができればさらなる計算は必要なくなる。
 敵への迅速な攻撃を求められる戦場では、後者(砲身と水平面との角度を知ること)が一目で分かる方法が必要とされるだろう。

 迫撃砲を傾斜地に設置し、自軍よりも高地にいる敵を攻撃する場合は、上記のふたつの方法を組み合わせて砲身の角度を決め(敵の位置が分かっていれば、射出方向は簡単に決められるであろう。)、砲弾を発射する。

 発射後は反撃を避けるため、急いで場所を移動する必要がある。

 敵は迫撃砲の発射時の音(大きくはないので音で探知されることはあまりないであろう。)や煙(これも少ない)の他に、迫撃砲弾が着弾し破裂した痕跡(この痕跡の規模から、飛来した迫撃砲弾の大きさも分かるという。)から当該迫撃砲の位置を知ることができるから、反撃は短い時間で比較的正確に行われると覚悟しなければならない。


 迫撃砲は、歩兵が持ち運べる兵器であるから、敵と対峙たいじ(向かい合って立つこと)する距離で使用されることが多いだろう。

 また、砲身の上部から砲弾を入れるという迫撃砲の構造から、砲手はその姿を敵にさらすことになる。
 適当な遮蔽物で砲手が見えないという場合でない限り、砲手は狙撃の対象になりやすい。
 アメリカの戦争ドラマ『コンバット』では、主人公のサンダース軍曹の小隊はよく斥候せっこうに出る。
 このような小隊には狙撃兵そげきへい(後述)がいるだろうから、その狙撃兵が迫撃砲手を狙うことになるのだろう。
 狙撃兵に狙われて助かる確率は、迫撃砲弾が初弾で敵の機関銃手らを制圧する確率よりかなり高いだろうと思う。

 
 狙撃兵
 映画『プライベート・ライアン』に登場する狙撃手ダニエル・ジャクソン二等兵が印象深い。彼は、祈りの言葉を口にしながら引き金を引く。
 また、故黒澤明監督の映像と音楽・効果音をあえて一致させず、相反する要素をぶつけることで緊張感や皮肉、感情の深みを増幅させる映画演出手法(コントラプンクト(対位法)は、映画『狙撃兵』からヒントを得たということなので、私は一度この『狙撃兵』を観たいと思っているのだが、同名の映画が複数あって選択しかねている。


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