『8(エイト)マン パーフェクト』 (4120文字)
書棚に『8マンパーフェクト』(発行 アップルBOXクリエート)という本がありました。
この本には価格の表示がありません。
それに自分で買った記憶もありません。
なぜ、私の書棚にあるのか謎です。
それはそうと、この入手時の記憶がない書籍には「少年マガジン完全扉絵集」があり、それを見ていると雑誌の扉表紙の余白に作品を読むよう誘(いざな)う1行の文が面白いのでちょっと書き写してみます。
・S38年20号 「新しくはじめった。ロボット探偵まんが! 鉄下りも強い8マンが、大かつやく!」
・S38年22号 「大ひょうばんのロボット探偵まんが! たまよりもはやく、鉄よりも強い8(エイト)マンが、大かつやく!」
・S38年24号 「たまよりもはやく、鉄よりも強い8マンが大かつやくする、ロボット探偵まんが!」
・S38年26号 「大ひょうばんのロボット探偵まんが! たまよりもはやく、鉄よりも強い8マンが、あっとおどろく大かつやく!」
(以下、しばらく同じような文が続きます。)
・S39年5号 「テレビでも、ますます大ひょうばん! たまよりもはやく、鉄よりも強い8マンが、大かつやく!」
・S39年9号の少年マガジン表紙が描かれたページには面白い文字がならんでおり、当時の少年まんが雑誌の状況が分かります。
当時の少年マガジンの価格表示があり、40円となています。
まず特集として「忍術はいまもここに生きている」とあり、他の連載人気まんがとして「ハリス無段」(柔道まんが)、「黒い秘密兵器」(野球まんが)、「紫電改のタカ」(名機まんが)がありました。
読物としては「大和の一生がわかる 『海の王者大和』」、「だんぜんおもしろい撃つい王物語!『ゼロ戦エース坂井三郎』」、「怪力豊登 ちかいの必殺技」(投稿者注:豊登は「とよのぼり」と読みます。この時代の人気プロレスラーでした。)、「きょうふのいっしゅん ああ全身のほねがくだける!」があり、さらに3大サービスとして「長島選手の声がきける テープレコーダー大けんしょう」、「無線で走る 超大型戦車大けんしょう」、「500名にあたる! すいせん切手大けんしょう」と書かれています。
・S39年11号の「8マン」の表紙には「TBSほか全国で放送中」と書かれており、この時期にはテレビの番宣も行われています。この番宣(番組宣伝)は以降の「8マン」の表紙でも続けられます。
・S39年12号 「テレビになって、ますます大評判のロボット探偵まんが!」
・S39年15号の少年マガジンの表紙には、「創刊五周年記念 大サービス特大号」と銘打たれています。価格は50円ですが「どうどう二三二ページ」とあるので、いつもより10円高額ながらそれを補うくらいのページ数の増加だったのでしょう。
この号の特集は「あっとおどろく現代の怪人間」とあります。当時はまだ世界は未知の領域で怪や怪奇がたくさんあると思われていたようです。
さらに日本がまだ貧しかったのか「☆創刊5周年記念5大サービス☆1万人にあたる大けんしょう」として「天体望遠鏡大けんしょう」、「すいせん切手大けんしょう」、「自衛隊の明機シール」、「世界のスポーツかー大けんしょう」と続きますが、5大サービスの5個目が書かれていません。ひょっとしたら232ページという分量がサービスの一つなのかもしれません。
以後の「8マン」の表紙はどれもみな似たようなものなので、目をひくものだけを書いていきます。
・S39年39号(9月20日号)には、8マンの右半身の透視図が描かれています。透視図ではありますが、その面積は少なく機械部分は何がなんだか判断できません。また8マンの顔が少年っぽくてまんがと違うので(この図ではリアルに描いてあります。)少し違和感があります。
・S40年13号は、「8マン」の最終回です。「おもしろさ日本一! たまよりもはやく、鉄よりも強い8マンが、むねのすく大かつやく! さあ、読もう。」とありますが、最終回を読むわけですから、当時の読者である少年達(当時は大人が漫画を読むと奇異な目で見られたそうです。)の気持ちは明るいものではなかったでしょう。
後は、『8マン』の最終回の漫画があります。この漫画の最初の5ページの各々各の余白には次のように書かれています。「おもしろさ日本一!たまよりもはやく、鉄よりも強い8マンが、むねのすく大かつやく!さあ、読もう。」、「8マンは、怪人コズマを倒すために、ひもつ兵器をつかった。すると、とつぜん、コズマのからだがとけだしたのだ!」、「▲来週の第14号の特集は、『アメリカの原子力艦隊』だ!▲」「◎警視庁そうさ一課は、七人づつ七つの班をつくっている。8マンは、そのどれにもはいらない八番目の刑事、じつは人間そっくりのロボットなのだ。」、「今週号の『8マン』は、つごにより、楠たかはる先生に、まんがをかいていただきました。」、「▲来週号から、マガジンスリル劇場第3話『冷凍怪人』がはじまるぞ!▲」「おなじみの『となりのたまげ太くん』が、いよいよ来週の第十四号から登場! 石森章太郎先生(いしもりしょうたろうせんせい)も大はりきりだ!」(後述)
桑田次郎は、1965年(昭和40年)に拳銃所持が発覚し『8マン』ほかの全ての連載が打ち切りになりました(この拳銃は自殺用に入手したのだそうです。なぜ拳銃自殺を考えたのかというと、その前にナイフを胸を刺して自殺しようとして失敗したからだそうです。)。そのため、この最終回は桑田次郎の弟子の楠たかはるさんが描いたものが連載されました。その後桑田次郎が書き直したものが単行本等に収められています。ただ、結末に大きな違いはありません。)
なお桑田次郎はペンネームで、本名は桑田二郎(くわたじろう)だそうです。
この最終回の余白の文章で最も注目したいのは、石森章太郎を「いしもりしょうたろう」とふりがなをつけているところです。
石森章太郎は正しくは「いしのもりしょうたろう」のはずで、後年ペンネームを「石ノ森章太郎」に変えたと聞いています(後述)。
石森章太郎は、1985年(昭和60年)、画業30年を機に「石森章太郎」から「石ノ森章太郎」に改名しました。
もともと彼のペンネームは故郷の石森町に由来するもので、「石森」と書いて「いしのもり」と読ませるつもりだったそうですが、誰も「いしのもり」と読んでくれず、「いしもり」としか呼ばれなかったため、初心に戻る意味をこめて改名を行なったのだそうです。
そうそうこの当時一般のテレビ視聴者やミステリ小説の読者は、「警視庁は全国の警察の上級官庁だ」と思っていたそうです。少年マガジンの読者は少年ですから、勿論そう思っていたでしょう。(警視庁というのは、東京都に置かれる警察組織またはその本部であり、東京都内を管轄区域とします。この組織関係に疎いミステリ作家の作品では地方の警察から警視庁に転勤するという描写があったりします。原則的には管轄を異にする警察への人事異動はありません。)
この「8マン」の最終回を描いた「楠たかはる」は、楠 高治という漫画家で本名は楠 高治(くすのきたかじ)といいます。彼は、桑田二郎の弟子で「月光仮面」「遊星仮面」などの有名作品があります。204年12月10日没(78歳)。
ところで、この最終回でコズマを倒した8マンは、さち子さんに招待を知られたことから表舞台から去ってしまいます。
YouTubeで「8マン」の動画を観ると、同じようにさち子さんが8マンの正体を知ってしまう回があるのですが、そのときは谷博士によりその記憶を消去してもらっています。8マンは次の週もさち子さんに気がねなく活躍したことでしょう。
『8マン』は大ヒットしたそうで、いろいろな小物が発売されました。
まず、「8マンノート」。表紙に8マンの漫画が描かれているだけです。
ほかにはワッペンやカードやバッジ、それに幼児用の靴にも8マンの絵が描かれました。靴のメーカーは「アサヒ靴」だったようです。
さらに、絵葉書、トランプ、人形、ハンカチ、キーホルダーそれに8マンチョコレートもあったとこの本に書かれています。
8マンシールに至っては89種類が掲載されています。当時も著作権を気にしない業者もいたでしょうから、市場にはもっとたくさん流通していたものと思います。
この少年マガジンの表紙群を見ていると、「8マン」の画が、初期のころからずっとほとんど変わっていないことに驚かされます。
故鳥山明さんの『Dr.スランプ』の登場人物らは、連載が進むに連れて幼児化していったり背が縮み太っていったりと画が変わっています。これは、作者の物語世界のイメージの変化によるものだと思いますが、「8マン」にはそれがありません。
恐らく、「8マン」は連載当初からイメージが固まっていたのでしょう。
同様のことは、小林まことさんの「柔道部物語」にも感じました。
それにしても、漫画では「8マン」ですが、アニメでは「エイトマン」と表記が異なるというのはアニメの方が低年齢の視聴者に配慮したということでしょうか。
そうだとしても、アニメのエイトマンのオープニングでは新幹線ひかり号を追いかけ追い越すシーンがありますが、これは8マンが走行の力を緩めています。
エイトマンは人間の目に見えないくらい速く移動できますが、新幹線は現代のものが最高速を出したとしても人間の目で捕捉(「ほそく」とらえること。)することができます。だから、8マンはあっという間にひかり号を追い抜くことができるはずです。
もっとも、当時は石森章太郎さんの漫画『サイボーグ009』でも、009が走行中のひかり号の屋根に座って「やっぱり速いや。」と言っています。
当時のひかり号は高速移動物体のアイコンだったので、主人公が持つ高速機能の比較対象として登場させる必要があったのでしょう。
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