空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで㉓
第二十三章
“王が座る時”
《RAIN》
最後の席へ、
その名が刻まれた瞬間。
世界が、
悲鳴を上げた。
──ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
空間崩壊。
空が裂ける。
大地が沈む。
まるで。
“世界そのもの”が、
その席の完成を拒絶しているみたいだった。
ルミアが叫ぶ。
「ダメ!!」
「レイン、座っちゃダメ!!」
だが。
レインの身体は、
もう止まらなかった。
胸の紋章が脈打つ。
──ドクン
──ドクン
紫雷。
黒い魔力。
黒き玉座が、
彼を呼んでいる。
いや。
“帰って来い”と囁いている。
レインの意識が、
揺れる。
頭の中へ、
大量の記憶が流れ込んでいた。
滅び。
戦争。
神々。
終末。
そして。
仲間達。
エルシア。
ノクス。
フェルグラード。
ゼルヴァ。
ルミア。
皆、
笑っていた。
今とは違う。
もっと穏やかな顔で。
まるで。
本当に“仲間”だったみたいに。
その光景が、
胸を締め付ける。
懐かしい。
なのに。
思い出せない。
その時。
天門の奥の“終末の瞳”が、
大きく開かれた。
──ギョロォォォ……
無数の白い“手”が、
一斉に落下する。
空そのものが、
押し潰してくる。
アルティナが絶望した声を上げる。
「防ぎ切れません!!」
神聖院術師達が、
次々と消滅していく。
白い“手”に触れた瞬間、
存在が削除される。
悲鳴すら残らない。
終末。
完全なる終末。
その時だった。
フェルグラードが、
前へ出る。
黄金炎爆発。
長髪が燃え上がる。
獣の牙を剥き、
笑った。
「ハッ!!」
「だったら全部焼き尽くすだけだろォ!!」
──ドゴォォォォォン!!!!
黄金炎柱。
空へ突き刺さる。
白い“手”を、
まとめて焼き払う。
だが。
数が違いすぎる。
ノクスも動く。
黄金の瞳が深淵色へ変わる。
黒い翼が、
背後へ展開された。
「王へ近づかせるな」
深淵ブレス。
空間ごと、
白い“手”を呑み込む。
ゼルヴァが、
巨大な漆黒の剣を担ぎ笑う。
片目の黄金。
片目の深紅。
竜骨外套が、
紫雷で揺れていた。
「しゃーねぇ」
「王様が座るまで」
「全部斬るぞ」
──ズバァァァァァン!!!!
空間断裂。
白い“手”が、
数十本まとめて両断される。
エルシアだけは、
動かなかった。
蒼い瞳で、
ただレインを見ている。
苦しそうに。
泣きそうに。
彼女は知っている。
レインが、
この席へ座った先を。
その時。
レインの脳内へ、
黒き王の声が響く。
《……選べ》
景色が変わる。
黒き玉座。
無数の空席。
その中央。
王が立っている。
紫の瞳。
孤独の王。
彼は静かに、
最後の席を見つめていた。
《座れば》
《お前は思い出す》
沈黙。
王は続ける。
《だが》
《二度と戻れない》
その言葉は、
酷く重かった。
レインは、
拳を握る。
怖い。
本能が拒絶している。
けれど。
後ろでは、
仲間達が戦っていた。
自分を守る為に。
孤独だった怪物達が。
今。
“王の為”に命を張っている。
その光景を見た瞬間。
レインの胸の奥で、
何かが決壊した。
奴隷だった頃。
誰も助けてくれなかった。
誰も隣にいなかった。
独りだった。
でも今は違う。
初めて。
“居場所”がある。
レインは、
ゆっくり最後の席を見る。
そして。
静かに呟いた。
「……だったら」
紫雷が走る。
空席達が震える。
終末の瞳が、
初めて“焦り”を見せた。
レインは、
最後の席へ手を伸ばす。
「今度は」
「絶対に失わない」

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