第40夜「誰もいない教室」
はじめに──
9月って、妙な静けさがありますよねぇ……
夏のざわめきが遠のいて、虫の声だけが残って、空が高くなっていく。
──でも、そんな季節の“隙間”にね、
こっちの世界と、あっちの世界が重なってしまうことがあるんですよ……えぇ。
今夜の話は、そんな“少しズレた教室”の物語です。
これはね、ある地方の中学校で起きた話なんですよ……。
3階の一番奥に、長らく使われていない“空き教室”がありましてね。
もともとは図工室だったらしいんですが、今では倉庫代わり。
重ねられた机と椅子、使い古したロッカー。
誰も近寄らない、ひっそりとした空間だったそうです。
──ある日、9月3日。
夏休み明け直後の放課後。
日直の女子生徒が、職員室に教科書を取りに行く途中、
ふと、その空き教室の前を通ったんだそうです。
……ドアが、半分だけ開いていた。
風もないのに、誰かが開けたみたいに。
好奇心から、彼女は中を覗いた──
埃っぽい空気の中に、ぽつんとひとつだけ、整った机と椅子があった。
机の上には、黒くてシンプルな筆箱。
新品のように見えるけど、どこか“古くささ”がある。
彼女は筆箱を開けてしまった。
──そこに入っていたのは、黄ばんだプリント1枚と、折れた鉛筆。
そしてプリントの裏には、
小さな文字でこう書かれていた。
せんせいへ
きょうも ありがとうございました
また きいてくださいね
彼女は思ったそうです。
「これは誰かの……置き手紙?」
──その瞬間。
背後で、「ギィ……」と椅子を引く音が響いた。
慌てて振り返ると、誰もいない。
……でも、教室の奥、夕日に照らされた床に、濡れた足跡がぽつん……ぽつん……
筆箱の横に、いつの間にかプリントがもう一枚置かれていたという。
ただし、それを見た瞬間──
彼女の記憶は、そこから途切れているそうです。
学校の記録には、20年前の9月3日。
早退した生徒が一人、失踪したまま戻らなかったと記されています。
その日を境に──
**「誰もいないはずの教室に、毎年誰かが座っている」**という噂が立ち始めた。
誰も見ていないのに、筆箱が置かれている。
プリントが提出されている。
足跡だけが残っている。
今年もまた、その日がやってくる。
──ねぇ、あなたの学校にも、空き教室……ありますよね?
今日、そこの扉は……閉まっていましたか?
🕯あとがき
“置き去りにされた時間”というのは、
ときに“人の想い”すら、そこに縛りつけてしまうのかもしれません。
あの子は、ただ誰かに
「今日もありがとう」って伝えたかっただけなのかもしれない……。
……なのに、まだ“帰れていない”。
📩ご感想・コメント
あなたにも、似たような“空気のズレ”を感じた経験はありませんか?
• 空き教室で感じた気配
• 誰もいないのに聞こえた音
• 説明のつかない“既視感”
コメント欄にて、ぜひあなたの体験を教えてください。
言葉にすることで、“何か”が成仏できるかもしれませんからね……えぇ。
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それを拾い、語り、静かにそっと置いておく。
そんな空間が、ここにはあるのです──。
👁🗨 裏夜話──
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