〜第62夜〜「年越しの名簿」
🕯️ はじめに
えぇ……年末っていうのはね……
「終わる」ための時間のはずなんですが……
実は、一番“残りやすい”時期でもあるんですよ……。
やり残した仕事。
言えなかった言葉。
果たせなかった役目。
そういうものがね……
年をまたぐと、
人じゃなくなっても……
続けてしまうことがあるんです……。
今日は、
“年を越してはいけなかった人”
のお話です……。
📖 本編
これは、私の知人――
市役所で総務を担当していた男性から聞いた話です。
その年の大晦日、
彼は年末当番で、
役所にひとり残っていました。
館内は真っ暗。
エレベーターも止まり、
使えるのは一部のフロアだけ。
彼の仕事は、
年内最後の 職員名簿と当番表の確認。
そこで、
どうしても目に引っかかる箇所があった。
名簿の一番下――
赤ペンで丸がついた名前。
半年前、
事故で亡くなった同僚の名前でした。
削除されたはずの名前。
なのに、
横にははっきりと書かれていた。
「12月31日 年末当番」
「誰かのいたずらだろう」
そう思って名簿を閉じた瞬間――
カツ……ン
廊下の奥で、
革靴が床を打つ音。
時計を見ると、
23時58分。
一定の間隔で、
ゆっくり……
こちらへ近づいてくる。
足音は、
役所の構造を“知っている者”の歩き方だった。
23時59分。
彼は耐えきれず、
声を出した。
「……誰ですか」
返事はない。
そして――
0時00分。
年が変わった瞬間、
背後で、はっきりと声がした。
「……今年も、当番に来ました」
振り返っても、
誰もいない。
だが名簿を見ると……
赤ペンの丸が、
今つけたばかりのように濃くなっていた。
⸻
📝 あとがき
年末というのは、
人の時間と、
人の役目が交差する瞬間です。
終わらなかった仕事は、
終わらせるまで……
そこに居続けることがあるのかもしれません。
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本編では語れなかった
・亡くなった同僚の“最後の数日”
・なぜ名簿が「年末」に限って動いたのか
・彼が今も続けている“当番”
……その裏側を、お話しします。
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