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第二部 失われた声が、雪の中で目覚める(短編小説)

女性は歩き出した。
私は吸い寄せられるようにその背中を追った。

街の灯りが滲む。
心が弱ったときの夜空は、どうしてこんなに優しいのだろう。

「ねぇ、あなた。」
女性は歩きながら言った。
「あなたは自分を責めすぎる癖があるでしょ?」

図星だった。

私は何かを失敗するたび、
自分の存在そのものを否定してきた。

“私なんて、生きてる価値がない”
そうやって責めることでしか、
心の均衡を保てなかった。

女性は私の胸にそっと手を当てた。

「ここ、ずっと痛かったでしょ?」

——ドクン。

心臓の鼓動が、久しぶりに
“私に向かって”聞こえた。

「あなたね、死にたかったんじゃないよ。」

女性の声は雪より静かで、
炎より温かい。

「本当はただ——
助けてほしかっただけ。
もう苦しまなくていい場所に行きたかっただけ。」

呼吸が止まった。

女性は続ける。
「あなたがあの日、フェンスを越えようとしたとき、
本当は最後の一歩が踏み出せなかった。」

それは、今までずっと
“弱さ”だと思っていた。

でも女性は言った。

「それは弱さじゃない。
あなたの中に、まだ“生きたい子”が残ってた証だよ。」

胸の奥が、ぎゅっと掴まれたように痛くなった。

「あなたはね、死にたいんじゃなくて……
“生き方を間違えた自分をリセットしたかっただけ”なんだよ。」

その瞬間、泣くことさえ忘れていた心が、
静かに泣き出した。

私は震える声で問う。

「……私、生まれ直せますか?」

女性は首を横に振った。
絶望が胸をよぎる。

だが彼女は続けた。

「誰かに“生まれ直させてもらう”んじゃないの。
あなたが自分に“生まれ直していいよ”って
言ってあげるんだよ。」

涙が頬を温かく伝った。

それは絶望の涙じゃない。
ずっと失っていた“希望”の重さだった。

雪の中で、女性は最後にこう言った。

「イブの奇跡はね、
誰かがあなたを救ってくれることじゃない。
あなたが、自分を許す日が来ること。
その夜のことを言うんだよ。」

その言葉とともに、
女性の姿は雪の粒に溶けるように消えていった。

静寂だけが残された。

それなのに——
私はもう孤独ではなかった。

胸の奥に小さな炎が灯るのを感じた。
弱くて頼りない炎。
でも、確かにそこにある。

私は、生きたいと思った。

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