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光を選んだ少女 第2話「揺れる心、折れない祈り」 〈ミレア スピンオフ〉

夜は、音を消す。

風の音も。
虫の鳴き声も。
人の気配さえも。

ただ――
心の中の声だけが、大きくなる。



ミレアは膝を抱えていた。

冷たい石畳の上。
小さな教会の裏庭。

そこは、
誰も来ない場所だった。



「……どうして、私は……」



呟いた言葉は
夜の空に溶けていく。

返事はない。

当然だ。

神は、
いつも黙っている。



昼間、
彼女はまた責められていた。



「役に立たない聖女候補」
「奇跡も起こせないくせに」
「祈るだけなら子どもでもできる」



笑い声。

ため息。

冷たい視線。



それでも
ミレアは言い返さなかった。



言葉にすると
何かが壊れてしまいそうだったから。



本当は分かっていた。



自分には
特別な力なんてない。



光の加護を持つ少女。
そう呼ばれて育った。

けれど。



誰も見ていない場所では
ただの弱い女の子だった。



「……私は……どうしたらいいの……」



その問いは
誰にも届かない。



涙が一滴
石の上に落ちた。



その瞬間だった。



ふっと。



空気が揺れた。



まるで
世界の呼吸が変わったような感覚。



ミレアは顔を上げる。



夜空の向こう。



遠く。



ほんの一瞬だけ。



赤い光が走った。



「……え?」



それは
稲妻のようにも見えた。

けれど違う。



もっと
生きているような光だった。



心臓が
強く打つ。



ドクン。



ドクン。



理由は分からない。



でも。



なぜか
胸の奥が熱くなる。



怖い。



だけど。



――惹かれる。



「……今のは……」



立ち上がる。



足が震えている。



それでも
歩き出した。



誰かに呼ばれている気がした。



優しい声じゃない。



温かい光でもない。



もっと――



強くて。



激しくて。



危険で。



でも。



なぜか。



救われる気がした。



ミレアは
自分でも理解できないまま
夜の道を進んでいく。



星は静かに瞬き続ける。



世界は
何も変わっていないように見える。



だが。



確実に。



何かが動き始めていた。



それは
少女の運命だけではない。



世界そのものの
歯車だった。



そしてこの夜。



まだ名も知らぬ少年と
真紅の翼を持つ存在が



“契約”を交わそうとしていることを
ミレアは知らない。



ただひとつ。



確かなのは。



彼女の祈りは
もう「静かな祈り」ではいられない
ということだった。



光は。



守るためだけのものではない。



戦うために
灯ることもある。



ミレアは
その意味を



もうすぐ
知ることになる。



――続く。

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