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空席の王 ──奴隷だった俺が最強の仲間を召喚して世界を支配するまで 53【最終話】

第五十三章

「もう、空席じゃない。」

数年後。

世界は、
静かに息を吹き返していた。

終末によって裂けた大地には、
広大な草原が広がる。

紫の花は、
風に揺れ。

子ども達が、
笑いながら駆け回っていた。

空には竜が飛ぶ。

人も。

獣人も。

精霊も。

かつて敵だった者達も。

誰もが同じ空を見上げ、
笑っている。

争いは、
完全になくなった訳ではない。

悲しみも、
消えた訳ではない。

それでも。

もう誰も、
独りで抱え込まない世界になっていた。

それが。

レインが守った未来だった。

城の最上階。

黒き玉座の間。

かつて、
禍々しい闇に包まれていたその場所は。

今では、
大きな窓から朝日が差し込む、
温かな広間へ変わっていた。

黒曜石のような玉座は、
紫と黄金の紋様を纏い。

威圧ではなく。

安心を与える王座となっていた。

レインは、
静かに腰を下ろす。

王冠は着けていない。

豪華な装飾もない。

それでも。

その姿だけで、
誰もが王だと分かる。

扉が開く。

「レイーン!!」

真っ先に飛び込んできたのは、
アストラだった。

以前の面影は残しながらも、
その表情にはもう怯えはない。

真っ白な髪を揺らし、
満面の笑みで駆け寄ってくる。

続いて。

「今日も仕事サボってねぇだろうな?」

ゼルヴァが、
いつもの不機嫌そうな顔で入ってくる。

だが。

その口元には、
小さな笑みが浮かんでいた。

フェルグラードは豪快に笑い、
ノクスは静かに一礼する。

エルシアは、
ネメシスを肩へ担ぎながら優しく微笑む。

ルミアは書類を抱え、
少し怒ったような顔をする。

「王様。」

「仕事、山ほど残ってるからね。」

ラグナは、
相変わらず騎士らしく胸へ手を当てた。

「今日も平和です。」

その一言だけで、
皆が笑う。

レインも、
思わず吹き出した。

こんな日常を。

誰よりも望んでいた。

その時だった。

窓から一枚の花びらが舞い込む。

紫色。

レインは、
静かに空を見上げた。

雲一つない青空。

その遥か向こうで。

一筋の紫と黄金の光が、
空へ昇っていく。

虚王だった。

何も言わない。

ただ。

優しく笑っている気がした。

レインも、
小さく笑う。

「見てますか。」

「あなたが守れなかった世界は。」

「ちゃんと続いています。」

風が吹く。

花びらが、
黒き玉座の間を舞う。

レインは、
ゆっくり立ち上がる。

そして。

黒き玉座を見つめた。

第1話。

地下牢で、
何も持たなかった少年。

あの日見た玉座は。

孤独の象徴だった。

誰も座らない。

誰も帰らない。

無数の空席だけが並ぶ、
悲しい王座だった。

だが。

今。

その空席は、
すべて埋まっている。

仲間がいる。

笑顔がある。

帰る場所がある。

レインは、
静かに玉座へ手を添えた。

そして。

優しく微笑む。

「もう、空席じゃない。」


朝日が、
王座を黄金色に染める。

その光は、
世界中へ広がっていく。

誰かが傷付いた時は、
帰って来られる場所になるように。

誰かが孤独になった時は、
隣に座る者がいるように。

それが。

空席の王の願いだった。

そして。

世界は今日も、
新しい朝を迎える。


空席は、誰かを失った証ではない。
誰かが帰ってくる場所だった。

〈完〉

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