〜第51夜〜卒業式
【はじめに】
えぇ……これはですね、ある女性から聞いた話なんですがね……
もう何年も前になりますけど、その方が中学の先生をしていた頃のお話で……
その年の卒業式、えぇ、まるで演出かってくらい、よく晴れてたんですって。
でもね……空気が妙に張りつめてて、なんというか……“異様に静か”だったらしいんですよ。
子どもたちは最後の時間を楽しんでいたし、保護者の方々もみんな笑顔でね。
でも、その先生──仮にM先生としておきましょうか。
そのM先生だけが、なぜだか“ざわざわ”してたんですって……
えぇ……心の奥が、こう……かすかに震えるような。
【本編】
その学校の卒業式ってのがね……体育館じゃなくて、古い講堂でやるんですよ。
木造で、照明も黄色くて……なんとも懐かしい雰囲気の場所でね。
で、式が始まって、卒業証書の授与がはじまった。
一人ひとり、名前を呼ばれて、壇上に上がっていく。
M先生のクラスは3年B組。
生徒の名前を呼ぶたびに、その姿が誇らしげに歩いていくのを見て……
あぁ、もう今日で終わりなんだなぁ……って、胸がいっぱいになったらしいんです。
でね……
クラス最後の生徒の名前が呼ばれて──
その子が受け取って、深々と礼をして戻ってきて。
一瞬、ざわっ……と会場がざわめいたんですよ。
「おかしいな……生徒の人数、もう終わってるのに……?」
って空気になって。
でもね、先生は見たらしいんです。
壇上に……
誰かが立ってた。
制服姿の、長い髪の女の子。
顔はね……見えないんです。
ずっと俯いてて……髪が、顔を覆ってて。
でも、その子が手を伸ばして……
証書を受け取ろうとしてたんです。
校長先生も、動かない。
えぇ……その場にいた誰も、止めようとしない。
まるで、“それが当たり前”かのように。
M先生……
怖くなって、名簿を確認したんですよ。
3年B組、31人。
でも、壇上に上がったのは……32人目だった。
【あとがき】
……えぇ。
後から、そっと学校の古い記録を調べたらしいんですがね。
その講堂、昔は……旧校舎の一部だったそうで。
何十年も前、火事があったっていうんですよ。
卒業式の直前に……生徒が一人、巻き込まれて。
それ以来……
その講堂では、毎年“見えない誰か”が卒業していくって。
「32人目の卒業生」って……
そう、地元では、ひっそりと……語り継がれてるらしいんですよ……えぇ。
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【裏夜話のご案内】
このあとに続く「裏夜話」では、
この“32人目の卒業生”にまつわる、
その後の出来事を、
M先生の回想として深く掘り下げていきます。
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