見出し画像

お祭りが始まる午後



夕暮れ。
お祭りがはじまる午後。

夕方でも
汗をかくほどの暑さ。

年子の兄弟は、
お気に入りの甚平さんに
腕をとおします。

「にあう?」
弟がくるりと回ると

「うん、かっこいい。」

お兄ちゃんは
少し照れながら
にっこり笑いました。

お母さんが
甚平さんの紐を
きゅっ、きゅっと結びます。

「迷子にならないようにね。」

「はーい!」

玄関を開けると
むわっと夏の空気。

空は
オレンジ色から
少しずつ藍色へ。

遠くから
どん、どん。

太鼓の音が聞こえてきます。

「急ごう!」

二人は手をつないで
石畳の道を歩きます。

角を曲がると
赤い街灯が
ぽっ、ぽっ、と灯り始めました。

りんご飴。
焼きとうもろこし。
わたあめ。



甘い香りや
香ばしい匂いが
風に乗ってやってきます。

「何から行く?」

弟の目は
きらきら。

「まずは金魚すくい!」



お兄ちゃんが指をさすと、
水の中で
赤い金魚が
ひらり、ひらりと泳いでいました。

「ぼく、すくえるかな。」

弟は
そっとポイを水に入れます。

すると…

「あっ!」

紙が
ふわりと破れてしまいました。

弟の肩が
しゅん、と下を向きます。

そのとき
お兄ちゃんは
自分のポイを差し出して言いました。

「いっしょにやろう。」

二人で息を合わせて
ゆっくり、ゆっくり。

金魚も
「がんばれ。」
と言うように
近くまで泳いできます。

すいっ。

小さな赤い金魚が
ポイの上で
きらりと光りました。

「やったー!」

二人の声は
夜空へ
まっすぐ飛んでいきます。

その笑顔を見て
お母さんも
おばあちゃんも
うれしそうに笑いました。

お祭りの灯りは
家族みんなの笑顔を
やさしく照らしていました。

#tales note小説レビュー読み合い企画
#君色文庫

いいなと思ったら応援しよう!

かずみん よろしければ応援よろしくお願いします😊 心に響くお話しを書いていきたいと思っています。 よろしくお願い🤲します٩(๑❛ᴗ❛๑)۶