追放死神は病魔を狩り、人を救う。
【あらすじ:命を奪うことを嫌い、天界を追放された死神のリム。彼女は人を救い、感謝されることに喜びを見い出していた。人の健康を蝕む怪異である病魔を討伐するため、リムは旅を続ける。その旅の先でリムは、魔法医学会を名乗る組織と出会う。そして彼らに、病魔を倒すには資格が必要であると知らされる。死神を追放された経験を持つリムは、組織に属することを嫌い反発する。そんな彼女を監視するため、魔法医学を扱う剣士の少女、ナオが同行することになる】
「お願いします! 娘を! 娘を助けてください!」
診療所の扉を叩く音が響く。6つほどの幼女を抱えた母親は、声を震わせながら大声で助けを求めていた。その物音に痺れを切らした様子で、診療所の中から白衣を着た医師が現れた。
その男の表情は、母親と対象的にとても無愛想で厄介だとでも言いたげな表情を浮かべていた。
「あのねぇ……。何度も言ってるけど、あなたのお子さんの身体には、何も異常は見られないんだよ。他の診療所でも同じことを言われたんでしょ?」
「で、でも! そんなはずはないんです……! だって、こんなに苦しそうなのに! もう何日もまともに動くことも出来ないんですよ!」
「はぁ、知らないよ……。あなたの生活環境に問題があるんじゃないの? とにかく、ウチには何も関係ないことなので……」
無慈悲にも医師は扉を閉め、親子は希望を絶たれてしまった。しかし、医師の言うことに嘘はないのだろう。本当に、彼には子供の異常を見つけることは出来ないのだ。
「うぅ……! 神様……。どうか、助けてください……!」
医者に見放された母親は、神頼みを始めた。もう、あの親子が頼れるのは、いるかどうかも定かではない神しかいない。
そんな親子の傍らに、1人の少女が立っていた。
「え……?」
母親は思わず固まってしまった。その少女は、いつの間にか親子の側にいた。漆黒のローブを纏い、身の丈ほどの巨大な鎌を抱えているその姿は、ひと目で普通の少女ではないと感じさせる不気味さがあった。ツーサイドアップの黒髪と大きな瞳は、少女としての幼さを漂わせていたが、それがかえって怪異的な質感を高める要因となっていた。
その異様な少女に釘付けになっていた母親は、正体を聞かずにいられるはずはなかった。恐る恐る、言葉を選びながら少女へと投げかける。
「あの……。あなたは……?」
「死神」
あまりにもあっさりと、少女は不吉な2文字の言葉を返してきた。母親は、目を丸くして固まっている。大きな鎌を持っている理由を、直球、的確に表す返答に、母親はそのまま納得せざるを負えなかった。
「悪いけど、狩らせてね」
漆黒の少女は薄っすらと笑みを浮かべる。そして、巨大な鎌をゆっくりと振り上げる。母親はむしろ納得していた。娘を苦しめている理不尽な現状に説明が付いたのだ。この残酷な運命は神が与えたものだった。母親は、神の裁きが下る瞬間を待ち構える。
鎌を掲げる少女は、母親の覚悟を見届けたような冷酷な表情で、スルリと鎌を振り下ろした。
「ギィシャアアアアアッ!!」
「えっ!?」
親子の背後で、凄まじい悲鳴が上がった。複雑に絡み合った蔓が、人間のような姿を形成している背丈の高い植物。そんな異形の化け物が、娘の背後に立っていたのだ。その植物の右腕は、謎の少女に斬り落とされていた。
「フシャアアアアアッ!!」
「な……何なの……!?」
目の前で繰り広げられる衝撃の光景に、母親は呆然と眺めることしか出来ない。そんな母親を余所に、漆黒の少女は絶叫する植物を蹴り飛ばし、異形の怪物を親子から遠ざけていた。
「シュアアアアッ!!」
化け物が無数の蔓を伸ばし、漆黒の少女を狙う。少女は鎌を高速回転させ、四方八方から襲い来る蔓を斬り裂いていく。表情のない怪物は激しく全身を震わせ、怒りの感情を表しているかのようだ。
「いつまでも、構ってあげられないの。鎌だけにね!」
闇に溶ける影のように、少女の身体は一瞬揺らいだ。そして、次の瞬間、少女は怪物の背後に立っていた。怪物は直ぐ様反応し、蔓を大きな槍の形に変形させた。
「ギィシャアああああッ!?」
槍が少女に届く前に、眩い閃光を放ちながら斬撃が弾けた。その直後、おぞましい断末魔と共に、植物の体はバラバラに砕け散っていた。
「あ、あれ……? わたし……?」
「エミ!?」
母親の腕の中で、熱の影響で息も絶え絶えだった幼い娘のエミ。医者も対処することが出来なかったはずの重い症状は、あまりにも突然に、あっさりと綺麗に消え去っていた。親子は状況を飲み込めず、顔を見合わせていた。その様子を見兼ねた様子で、漆黒の少女は口を開いた。
「さっきの化け物、あれは病魔」
「病魔……?」
「病気に見せ掛けて、人を弱らせて生命力を奪う怪異。あなたの娘は、その怪異に取り憑かれていた。病魔は私のような存在が干渉しない限り、普通の人間には見ることは出来ない」
淡々と、目の前で繰り広げられていた現象を説明する少女。母親は、説明をすぐには飲み込むことが出来ない様子だった。辺りは沈黙に包まれ、親子と少女はしばらく見つめ合っていた。そして、少女はプルプルと身体を震わせ始めた。
「……とう、は?」
「えっ……?」
「“ありがとう”はァ!? 助けてもらったら、普通、ありがとうって言うもんでしょうがァ!!」
「えええええええっ!?」
冷静な様子を保っていた少女は、欲望が溢れ出したように感謝の言葉を要求した。親子は困惑しながらも、慌てて少女に向けて頭を下げた。
「あ、ありがとうございます! あなたのお陰で、娘の命が助かりました! 本当に、なんてお礼を言ったら良いか……」
「おねえさん、助けてくれてありがとう! あの、あなたのお名前は……!?」
「ふっ……。名乗るほどの者じゃありません。死神のリムと申します!」
「名乗ってる!!」
お礼を言われ、リムは満足そうに名を名乗った。リムは呆気にとられる親子を残し、軽やかにスキップしながら、その場から立ち去っていった。
「き、気持ちええ〜……。やっぱり、感謝されるのって最高じゃ〜……」
ひと仕事終え、リムは、ご機嫌なまま夜の平原を歩いていた。死神である彼女は、人間の身体とは違う概念のような存在である。食事も睡眠も基本不要。気まぐれに人間の真似事をするのも本人次第。実に自由気ままな生活を送っている。
「天界を追放されて、私は今の生活を手に入れることが出来た……。絶対に、手放したくない……!」
リムは少し屈むと、軽々と空へと飛び上がった。そして、背の高い針葉樹の先端に飛び乗ると、橙に輝く月を見つめた。
(私は神々の世界で、死神としての命を与えられた。その名の通り、死を司る存在。世界の流れを良好にして、均衡を保つため、私は気まぐれに人々の命を奪わなければいけなかった)
木のてっぺんで、リムは器用に膝を抱えてしゃがんだ。両手で支えるように頬を乗せ、ぼんやりと夜空を眺め続けた。
(私は、私のことを創造した女神様に見放され、天界から追放された。そして、永遠に地上へ降ろされ、居場所と役目を失った私は、自暴自棄のまま地上を彷徨っていた)
リムはすくっと立ち上がり、大きく伸びをした。彼女は夜空を眺めることに満足し、木の上から飛び降りた。爪先が触れた地面は、軽快な着地音を鳴らしていた。
(でも、天界を追放されてから私は気付いた。私はもう、使命に縛られなくて良いんだ。苦しんでいる人を救って良いんだ。人に感謝されたって良いんだ!)
希望に満ちた笑みを浮かべながら、リムは夜の平原をひた歩いた。
◇
「注意喚起。死神の目撃情報多数。遭遇した際には、身の安全のためすぐに逃走されたし」
「…………は?」
翌朝、ふらっと立ち寄ったとある街。そこで、リムは呆然と立ち尽くしていた。街中には、リムの似顔絵が描かれた紙が大量に貼られていた。
「だ、誰がこんな物を〜!? 私がいつ悪いことしたっていうのさ!」
リムは憤慨し、貼られている手配書を片っ端から剥がそうとしていた。……が、黒髪で黒いローブ姿の彼女を、周囲の人々は怪訝そうに見つめていた。
(ぐぬぬ〜! これじゃあ、私の慈善活動に支障を来たしてしまう……! 私は人を助けて、たくさん感謝されたいのにぃ!)
目立つのを恐れたリムは、ローブのフードを被り、建物の陰へと隠れた。キョロキョロと辺りを見回し、ひとまず落ち着けそうな場所を探しながら歩く。すると、路地裏で苦しそうにしている座り込んでいる男の姿が目に入った。
「はぁ、ふうぅ……」
「ん? あれは……。病魔の仕業か……!」
浮浪者らしき男は、ボロボロの薄汚れた帽子やマントを身に纏い、ボサボサの頭にヒゲ面。誰にも助けを求められず、ただただ弱っていくような状態に見えた。そんな男の背後には、タマネギのような頭を持ち、頭から生えた無数の根が体を形成している怪物が、獲物が力尽きるのを待つかのように不気味に佇んでいた。
「おっちゃん! 今助けるから!」
リムはどこからともなく鎌を出現させ、病魔に向かって駆け出した。鎌の切っ先はすでに、タマネギを斬り裂ける軌道を描いていた。
「見つけましたよ!!」
「は!?」
その時。リムの上空から少女の声が響いた。思わず空を見上げるリムの目には、片手剣を構える少女の姿が飛び込んで来た。
「うわっ!? 何すんだコラ!」
「動かないでください!!」
赤毛のセミロングヘアーに、赤い服と黒のスカートに身を包んだ少女は、リムの背中に飛び乗るとそのまま地面に押し倒した。理由も分からず拘束され、リムは怒鳴り散らしながら少女を振り解こうともがいている。
「よくやった、ナオ。そのままそいつを取り押さえていろ」
「はい! ヘルス先輩!」
リムの上で、ナオと呼ばれた少女は元気良く返事をした。ナオの視線の先には、ナオと同じ赤い服に黒のズボンを履いた青年が立っていた。
ヘルスと呼ばれたその青年は、長い刀身の剣を構える。ヘルスに気付いた病魔は、無数の根を一斉に伸ばしていた。
「執刀」
目にも止まらぬ速さで、銀の閃光が飛び交う。根は空中で、花火のようにバラバラに飛び散っていた。病魔は新たな根を生やし、再び攻撃を仕掛けようとしている。
「悪しき病魔、お前を切除する」
ヘルスが剣先を病魔に向けると、流星群の如く切っ先の連撃が、病魔の頭部に無数の穴を開けていた。
「ギシュウウウウウッ!!」
ダメージに耐えきれなくなった病魔は、朽ちるように地面に倒れ込んだ。病魔に取り憑かれていた男の顔色は、みるみる明るさを取り戻していった。
「執刀終了」
ヘルスは剣を鞘に収め、ナオに取り押さえられたままのリムを見下ろした。リムは不機嫌そうに、ヘルスのことを睨み返していた。
「ふーん。あんたらも病魔が見えるんだね。私の手柄を奪うのは感心しないけど」
「それはこちらの台詞だ。病魔を切除出来るのは、魔法医学会に所属している者だけだ。無免許の執刀は許されていない」
「魔法医学会?」
ヘルスの語る言葉に、首を傾げるリム。未だにリムの背に跨がっているナオは、リムの顔を覗き込むように身を乗り出した。
「知らないんですか? 魔法医学会、通称“魔医学”は、魔力で病魔に立ち向かう組織です。私たちはそこに所属している魔法医師。病魔のような人に取り憑く魔物には、宿主の命に関わる繊細な作業が要求されます。なので、病魔との戦闘には免許が必要なんですよ!」
「え? めんどくさっ」
「めんどくさいとはなんですか!! 人の命が掛かっているんですよ!!」
ナオに跨がられたまま解説を聞き、露骨に嫌そうな顔をするリム。そんなやり取りを見下ろすヘルスは、無表情のまま、懐を探りながら鎖の音を鳴らしていた。
「死神。お前の噂は常々聞いていた。魔医学に所属せず、無許可で執刀を繰り返す無法者だと。手配書を貼り出し、注意喚起を促していたが、こんなところで鉢合わせるとはな」
「私は人を助けてるんだよ? それの何がいけないって言うのさ」
「ルールを犯す者に正しさなどない。資格も持たぬ未熟者に、人の命を救う役割などあるものか」
「資格とか、役割とか……。私はもうそういうのはウンザリだっての!」
「きゃっ!?」
リムは上に乗っていたナオを跳ね除け、この場からの逃走を図る。ヘルスは飛び上がったリムに向かって、輪の付いた鎖を投げつけた。
「うわっ!?」
前屈みになった状態で身体に鎖が巻き付き、ヘルスに引っ張られたリムは尻餅をついた。ヘルスは冷静に、鎖の先端にある手錠をリムの両手に嵌めた。
「おい、何すんだ! 外せぇ!」
「無駄な抵抗はやめろ。その手錠は魔力を封じる。どんな小細工も使えない。ナオ、そいつを見張っていろ。これから他に異常がないか、街の見回りを始める」
「はい! 了解しました、先輩!」
ナオはヘルスから鎖を受け取り、力強く両手で握った。ナオにリムの監視を任せると、ヘルスは踵を返し立ち去ろうとする。そこへ、病魔に取り憑かれていた浮浪者の男が駆け寄ってきた。
「あの、助けてくださってありがとうございます……! あなたは、命の恩人です……!」
(うぐぐ〜! 本当は、感謝されるのは私のはずだったのに〜!)
感謝の言葉を奪われ、悔しがるリム。そんなリムとは対照的に、当のヘルスは無反応のまま。感謝を述べた男は思わず狼狽えていた。
「あ、あの……」
「感謝の言葉などいらない。これは職務だ。与えられた役割をこなす、それ以外に意味などない」
その言葉を聞き、リムは拘束されたまま身を乗り出した。ナオが鎖を引っ張っているのもお構いなしに、ヘルスを至近距離で睨み付けようとする。
「ふざけんな! 助けた方も、助けられた方も、影響されあって、その言葉に支えられて生きていくもんだろ! 感謝の言葉を無下にするなよ!」
「ふん。くだらん。行くぞ、ナオ」
「は、はい!」
ヘルスは浮浪者の男を残し、不満そうなリムを連れ、街の見回りを始めた。拘束されたまま歩かされ、晒し者のような状態になり、リムはさらに不機嫌になっていた。
「はぁ〜……。いつまでお散歩させられるワケ〜?」
「私語は慎んでください。ヘルス先輩に怒られますよ」
「真面目ちゃんめ……。ナオって言ったっけ? あんたは、あんな堅物のこと慕ってんの?」
ナオはリムの言葉にため息をつきつつ、前を歩くヘルスには聞こえない声で、ヘルスについて語り始めた。
「ヘルス先輩は、あたしの命の恩人なんです。病魔に取り憑かれて、生死の境を彷徨っていたあたしを助けてくれたんです。とても優秀な魔法医師なんですから」
「命の恩人ねぇ……。それもただの役割、ってか」
そんな会話をしながら、ヘルスたちはしばらく見回りを続けた。そして、異常が見られないことを確認し終えると、3人は足を止めた。
「特に異常はないようだな。ナオ、その死神を連れて、本部に帰還するぞ。……ナオ、聞いているのか?」
「う、あうぅ……」
ナオは呻き声を上げ、膝をついてうずくまっていた。ナオの身体からは、タマネギ頭の病魔が姿を現していた。
「なっ!? こいつはさっきの……! まだ生きていたのか!」
「倒されたように見せ掛けて、その子の中に潜り込んでたみたいだね。どうすんの?」
「黙れ。病魔は執刀するのみ!」
ヘルスは剣を抜き、病魔に向かって飛び掛かった。だが、病魔はナオの身体を持ち上げると、盾のように彼女の背後に隠れていた。
「ぐっ……! 小癪な真似を!」
動きの止まったヘルスに目掛け、病魔は大量の根を伸ばす。ヘルスは剣で根を斬り裂き、病魔の猛攻を防ぎ続ける。
「フシュウウウウウッ!!」
病魔の本体は根に紛れ、一直線にヘルスへと迫っていた。ヘルスは斬り伏せるべく剣を構えるが、病魔は再び、ナオのことを盾にしていた。ヘルスの攻撃が止まった隙に、病魔は強烈な体当たりを見舞った。
「ぐあッ!!」
吹き飛ばされた衝撃で、ヘルスは剣を落としていた。丸腰のヘルスにお構いなしに、病魔はさらに、根を槍状に変え攻撃を仕掛ける。
「ぐううううッ!!」
病魔の根に右肩を貫かれ、ヘルスはその場に倒れ込んだ。反撃する気配のないヘルスを残し、病魔はナオを連れ、逃走を図ろうとしている。そんな状況を見兼ねたリムは、両手を拘束されたまま、ヘルスに駆け寄った。
「何やってんの! このままじゃ逃げられるよ! 私が代わりにやるから、手錠外してよ!」
「ふ、ふざけるな! 資格のないお前になど、任せられる訳がない!」
「じゃあ、今のあんたに助けられるの!? 剣も握れないような状態で、あんたには、その資格があるっていうの!?」
「ぐ、ぐぐ……!」
ヘルスは苦虫を噛み潰したような顔をしたまま、懐から鍵を取り出し、リムの拘束を解いた。
「よっしゃ! ありがとよ、堅物!」
「ぐうぅ! 礼など、言うな!」
嫌味っぽく礼を残し、リムは病魔の元へと駆け出した。リムの接近を感じ取った病魔は、根を伸ばし迎撃を開始する。
「はぁッ!!」
リムは鎌で根を斬り裂きながら、病魔との距離を詰める。攻撃が通用しないと悟った病魔は、ヘルスとの戦いのようにナオを盾に使う。
「そんなのお構いなし! 鎌だけに!」
リムの身体は影のように揺らぐ。リムの姿を見失った病魔は辺りを見回す。……病魔の足元の影に、リムは潜んでいた。
「おりゃあッ!!」
地面からの不意討ちで、病魔の身体は真っ二つに斬り裂かれていた。倒されたように見えた病魔の中から、小さな球根が飛び出していた。
「あれが本体か!」
上空へ飛び上がり、逃走しようとする病魔。リムは人間離れした脚力で、空の病魔に追い付いていた。
「“鎌威太刀”!!」
リムは小さな病魔に向かって、渾身の一撃をお見舞いした。核を斬り裂かれた病魔は、粉々になって絶命していた。
「ふぅ〜……。ようやく思いっきり身体を伸ばせたわ〜」
大きく伸びをしながら、リムは倒れているナオの様子を窺う。病魔の支配から解放され、ナオはゆっくりと目を開いた。
「お、目が覚めた? 大丈夫?」
「は、はい……。あなたが、助けてくださったんですね……」
「そうだけど〜。まぁ、お礼を言いたくないなら、別に無理に言わなくても良いけど〜?」
「いえ、あなたのお陰で助かりました……! どうも、ありがとうございます……!」
「な、なんだ素直じゃん。どっかの誰かと違ってさ」
ナオにお礼を言われ、嬉しそうに照れるリム。そんな2人の様子を、ヘルスは複雑な表情で見つめていた。
◇
その後、負傷したヘルスは街の医者の治療を受け、しばらく療養が必要になった。心配そうに見つめるナオに、ヘルスは任務を託す。
「あの死神。あのまま放置していたら、また勝手に病魔に手を出すだろう。あいつのことを見張っていて欲しい」
「で、ですが、ヘルス先輩を残して行くなんて……」
「俺は大丈夫だ。怪我が治れば、また合流する。ナオにしか頼めない任務だ。よろしく頼む」
「は、はい! 分かりました! あたしに任せてください!」
ナオは病室を後にして、リムの姿を追って駆け出した。1人、病室のベッドの上で、ヘルスは天井を見つめた。
「……あの力も、俺が手に入れる」
https://note.com/rich_nerine857/n/nc389656b164c
https://note.com/rich_nerine857/n/nf440b2bf846c
