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ラメントーソ lamentoso       第18話 brillante

院内コンサートの当日は、二階に置かれた、200脚ほどの椅子はすべて埋まり、その後ろにも、立ち見の人が大勢いて、3階、4階からも、大勢の患者さんが、見下ろしていた。
ピアノは、いつの間にか、シゲルカワイグランドピアノになっていて、さっき、少しいじったが、弾きやすかった。
それを見た、西岡と風間は、凄いことになっているなと言って笑っていた。
N響の人達も、何人か来てくれていて、さっき挨拶もした。
矢部も、美久を連れてやってきた。
「今日は、矢部さんの為に弾きますからね。」 と僕が言うと、美久は、ママいいなぁというので、「今度また一緒に弾こうね。」と言うと、にこにこして、嬉しいと言って、用意してあった席に座った。
今日の司会進行をしている、事務の女性のアナウンスに呼ばれ、今日の趣旨と、今までの経緯を簡単に紹介され、僕は、一礼して、ビアノの前に座り、おもむろに弾き始めた。
予定していたベートーヴェン 月光ソナタ 第一楽章を音を減らすことなく、タッチミスもほとんどなく弾き切った。
シゲルカワイの音も良く響き、この建物自体の音響効果も、意外なほどよく、ほんとうに、気持ち良く弾けた。
弾き終わると、色んな方向からの拍手に包まれた。
そして、美久が、花束を渡しに来てくれて、それを受け取ると、緊張の糸が解けた、あの国際フォーラムのステージよりよっぽど緊張していた。
美久が戻っていった先に、花村が立っていて、ハンカチで目頭を押さえているのが見えた、その花村の姿を見たら、普通に、花村と美味しいもの食べにいきたいなぁ、左手は、ナイフ持てるかなぁと思った。
脇の面談室が、控室として用意されていて、そこに、一度戻ると、西岡夫妻や、風間、父、母が集まってきた。
僕がどうだったと聞くと、母も、西岡も、珍しく褒めてくれた。
でも、なんだか、3番の指が勝手に動きそうで、ミスタッチしそうになったと言うと、矢部が来て、僕の指をチェックし始めて、この指、たぶん、今までと違う神経で繋がっていると思うと言って、僕の3番の指をもって、ブラブラさせた。
ほんとうは、今すぐにでも、またピアノを弾いて、3番の指の感じを確かめたかったが、今しばらくは、この達成感に浸ろうと思った。
ちょっと離れたとこで、西岡と風間が、僕の今後を小声で話しているようだったので、それに聞き耳を立てて、どうなっていくんだろうと、期待とも不安とも言えない気持ちになった。
それと、誰も、何も言ってはいなかったが、後ろの方に、テレビカメラのクルーとおぼしき人達がいるのが見えていて、それもその中に、欧米人も何人かいて、なにかなと思っていた。
なにかが、大きく動き出しそうな予感もあったが、僕としては、矢部の研究のこともあるし、矢部に全面的に協力しようと思っていたので、ここにいれるのなら、ソフトペダルのことも解決したいので、矢部ともう少しリハビリを続けたいと、思っていた。
だいたい、まだ、ナイフが持てるか分からないし、このリハビリチーム最高だし。




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