見出し画像

青のグラデーション[風まかせ文芸部]

「よかれと思って」までが過失だからな。

最近は、午前も怒られる。昼休憩の途中、休憩室がある新品のプレハブから二階の奥の扉から出て、紺色のパイプ椅子2脚と長方形の灰皿があるスペースで一人でコソコソとゲームしているのをあまりしゃべったことの無い同い年で大学の先輩Kに見られてしまった。

そんなおもろい?のんべんだらり、島のゲームって。

結構な間、見られていたらしい。わたしは、焦りと先輩Kの独特な言い回しに、吐息と喉が鳴った音が交じった。その音と繋がるように、はいと漏れる。前歯の裏が渇く。
Kは、左目が碧く、こちらを見下ろすと顔に影がかかって藍色になった。

わたしは知人や親族の顔をゲーム内に投影させて、まるで神のように眺めるのが趣味で、連日の酷暑を忘れるためにも自分にとってゲームは、熱中症対策だった。しかし、誰からも共感は貰えないだろうし、してはいけませんと言われていないだけ、言わなくても分かるでしょという理由だろうか。研修の日はゲーム機の持ち込み禁止と言われなかったと思う。だから持ってきた。必要は無い。業務中が退屈だった。時給が2000円ってことぐらいが取り柄の立ってるだけの業務内容、現場は大阪万博だ。

黒色統一の制服は太陽で焼けて勝色になっていた。汗をかいたら近くのコンビニで汗拭きシートを買える。日本にも飢饉の時代があったんだと今は到底思えない。ミャクミャクのカラフルな色合いの服を着る本部スタッフが大きな声で呼び込んでいるのが仮設トイレの向こうで聞こえる。

先輩Kは立ってたばこに火を点けた。

休憩何時まで?

10時です。

10時、あぁ。そうか。間に合うよな?

あ。はい。

あと8分ぐらいちゃう?

あじゃあ、そろそろ。

うい、おつかれ、あと、あのまぁ、うーん、コソコソすんなよ。

はい、すいません。

わたしは、プレハブに入った。その中は空の青よりも暗かった。






#風まかせ文芸部
#青のグラデーション

いいなと思ったら応援しよう!

中島ジーマ よろしければ応援お願いします。不明瞭な言い方ですが活動費、あるいは勉強代に使わせていただきます。