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subarasikiai
[525文字]それ、言っちゃったの?
去年の夏、風邪をひいたあとから耳が妙に詰まったままになった。
飛行機が着陸するときの、あの膜が張ったような感覚だ。すぐ治ると思っていたのに、いつまで経っても抜けない。仕方なく耳鼻科を受診すると、アレルギー性鼻炎の薬を飲み続けるようにと言われ、それ以来、私は毎月そこへ通っている。
その耳鼻科の先生は、40代前半くらいのちょっとだけイケメン、説明は立板に水、いつもすごくいい香りがする。
肩につく髪、足元はグッチのビットモカシン。
白衣の下にはテカリのあるストライプのパンツを履いていた日もあった。
――どう見ても、お金持ちの気配が隠しきれていない。
心のどこかで「すごく、すごく、儲かってるんだね!」と思いながらも、もちろん口に出すはずはない。
そんなある日のこと。
30代くらいのスーツ姿の男性が、受付で声を上げた。
「PayPay使えないの?
カードも? 現金だけ?
なんだよそれ、儲けてるくせに手数料けちるんじゃねぇよ!」
すごい、言ったよ、本当のこと…
怒鳴られた受付の女性には申し訳ないけれど、私はなぜかドキドキしてしまった。
代弁されたような、見てはいけない舞台裏をのぞいたような、妙な興奮。
言えないことを誰かが口にした瞬間って、こんなにも胸がざわつくものなんだ。
