見出し画像

オーバーオールの君vol.3

「おい、工藤。清水きよみず、起こしてやれよ。」

出席番号、俺の前。
清水きよみずは全く周りを気にしない。
…というか、気にしなさ過ぎる。

その日は卒業式の練習。

俺の出席番号は33番。

…という事は、清水きよみずは32番。

”呼名にタイムラグがあるからってよ…”

俺ら1組だよ…。

順番なんて速攻回ってくんじゃねぇかよ…。

俺の学校は特殊だ。

卒業式の練習、一人一人を担任が呼名し、俺らは学年主任が気にいる声量で返事をし、生活指導教員が望む角度でお辞儀をしなければならない。

無論、仮に駄目な生徒が居た時は初めからやり直しスタイルだ。

清水きよみず匠!

、、、、、zzz…

「工藤、起こしてやれよ!」

半笑いのツッコミを受けながら、俺は考えていた。

仮に清水きよみずを起こしたとして、早過ぎるとまた寝ちゃうし、遅過ぎると変なタイミングで返事!って具合になる。返事って頭にインプットされていれば良いが、もし変な事が頭の大半を占めていたら、清水きよみずは絶対に変な言葉を言いながら立ち上がる事になる。それはそれで、俺が起こしたのが遅過ぎるとか、変な事を刷り込んだとか二次災害になりかねない。ただ、起こさないでいても「何で起こさなかった?」になる。

……これは、俺にとってもミッションだ…。

試しに30番くらいに起こしてみる。

清水きよみず匠!

………にちぇ。

「にちぇ。ってなんだ!おい、工藤もちゃんと清水きよみずを見てろ!」

おいおい…。起こしたじゃないかよ…。

つうか、なんだよ「にちぇ。」って…。
しかも立ってねぇし…。

にちぇが”はい”の派生語だとしたら、エンジンが温まっていないだけだ。

…なら、出席番号一桁から起こしてお前のエンジン温めてやるぜ…。

「ありがとう。」

きたきた、清水きよみずがちゃんとした言葉を発したぞ!

……清水きよみず匠!

………………Impossible…

清水きよみずの口から”はい”という言葉は聞かれなかった。

ん!?

堪らなく隣を見る俺の目に入ってきたのは

単語帳…

見てた単語は…Impossible…。

…もう無理だ…。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集