第1話 わからないままで生きていく それでも、人は今日を生きている
わからないことは、不安を連れてくる。
この先どうなるのか。
どれが正しいのか。
自分は間違っていないのか。
私たちは、できるだけ早く答えを出そうとする。
白か黒か、正解か不正解か。
そうやって世界を整理できれば、
少し安心できるから。
でも、人生には、
どれだけ考えても答えが出ないことがある。
考え続けるほど、
むしろわからなくなっていくこともある。
それでも、不思議なことに、
人は生きている。
わからないまま、朝を迎え、
わからないまま、誰かと話し、
わからないまま、今日を終えていく。
「わからない状態」は、
何かが欠けている状態ではない。
むしろ、人間が生きている“本来の姿”なのかもしれない。
医療の現場でも、
日常の中でも、
「確実なこと」は思っているより少ない。
予測できない経過。
想定外の出来事。
説明しきれない感情。
それでも、人は選び、迷い、立ち止まり、
また一歩を踏み出していく。
わからないからこそ、
考え続ける。
わからないからこそ、
他人の言葉に耳を傾ける。
わからないからこそ、
今日という一日を、なんとか生きている。
正解を持っていなくてもいい。
確信がなくてもいい。
白黒つけられなくてもいい。
わからないままで、生きていく。
それは諦めではなく、
この世界と折り合いをつける、
ひとつの誠実な姿勢だと思う。
今日も、すべてはわからない。
それでも、私たちはここにいる。
それでいい。
あとがき
このシリーズでは、
「答え」を提示することよりも、
わからない状態に一緒に寄り添うことを大切にしていきます。
次回は
第2話「正解を出さなくてもいい」
答えを急ぐ社会の中で、立ち止まるということ
を書いていきます。
