車いす生活になって一ヶ月:病名のない病気 彷徨う謎の症状(8)
2020年になっても、私の症状は暴れていた。
いくら点滴などをしても現状維持ができない。私の症状が一生治らないのも知っているし、私の症状に近い(正確に言うと、近いというより診断基準にもれた)筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群や線維筋痛症の人たちも、原因が不明で治療法もなく、つらいと聞く。そんな現実でも毎日杖をついて部屋を移動して。ふと気がついたら、部屋で倒れてはなんとか起き上がって。そんなこともあってか、私は嫌々ながらも、先月車いすデビューをした。
症状の暴走は、去年の9月辺りから。症状は悪い方向へどんどん転がっていき、動ける範囲が日に日に狭まっていた。1年ほど前なら、リリースイベントなどは杖をついて行っていた。だが、去年の9月あたりからはどんなに慣れている場所でも、母の助けが必要になっていった。車での送迎・交通機関の移動のサポートを母や妹にしてもらって。ヘトヘトになりながら必死になって歩いている私を見て「車いすでも、いいんじゃいかな?」と、母は心配して言っていた。けれども、どうしても自力で歩きたい気持ちが強く、「まだ車いすはいらないよ。自由に歩いていたいんだ。車いすなんかに頼りたくない。」と、なんとか母に助けてもらい、杖をついて外に向かっていた。
2020年1月下旬頃。この記事を書いた一ヶ月前ほど。私は母と買い物をしていた。ちょうど、冬物のセールの時期だった。「折角だから、セールで安くなった洋服を見に行こう」と、おしゃれなお店へ向かった。いくら症状が酷くても、いつもどおりに休憩をとれば杖を使って歩けるはずだし。
好きなように見たいお店の前を歩いて。
気になるのがあれば、止まったりして。
だが、この日は足がやたらと重く感じた。杖をついていても、足元が危なくてフラフラしていた。だけど、こんなのは毎回あるし、ちゃんと杖ついて歩けているから大丈夫なはずだ。フラフラしながらも、おしゃれなお店へたどり着く。SALEと書かれたポスターが綺麗に置いてある店内。店員さんはタイムセールの準備をしていたりと、この時期特有の風景を楽しんでいた。
ふと、上の棚に飾ってある何かを見ようと、首の角度を少し変えてみる。そこで起きる、めまい。ぐわっときためまいで足元がフラつきそうになるのを杖でなんとか食い止める。「今日はなんか調子良くないから、上の棚を見るのはやめておこう。」と、目の前にある洋服の生地を触ってみようとしてみた。すると、全身に激痛が走る。こんな時に激痛が来るなんて考えてもなく、思わず、痛みを口から溢れそうになり、近くにあったベンチへ。ペンチに座るという動作からの衝撃と、どしっとくる身体の重さ。全身にペットボトル飲料がぎっしり入った買い物カゴを持っているみたいだ。
もう歩くのは、限界。車いすに乗りたい。
たまたま、別行動で買い物していた母にそう伝えて、私は車いすになるのを決めた。自分の限界に気づいたからだ。もう、自力では歩けないと。助けが、車いすが必要だと。
この日の夜、私は自分の症状が怖く感じてしまい、泣いてしまった。限界を知りたくなかった。私の同い年の人たちは、車いすなんて他人事のようにしか思ってない年頃だ。「それなのに、なぜ…。」と、この日だけは悩んでしまった。
車いすなんか頼りたくなりのに頼らなきゃいけない現実。
限界なんて知りたくなかった。
そうして、車いすユーザーへとなった。
車いす生活も、もうすぐ1ヶ月が経つ。
ここ1ヶ月は、主な移動が車いすとなり、そのせいか生活環境が大きく変わって忙しい。限界なんて知りたくなかったと悩んでいた自分は、どこへ行ったのか。「なんだかんだで車いすのが楽だし。」と、ちゃっかりと車いすに乗っている。車いすになってから、気付くバリアフリーの重要性。バリアフリーと謳っている施設や街でも、よくよく考えるとバリアフリーじゃなかったりするのもあったりして、「バリアフリーって、なんだろう?」と思っちゃったりもする。
そういえば、車いすのおかげで、街中をじっくり見られるようになった。以前は歩くので精一杯だったが、今は移動は介助式車いすに全てを任せられる。上の方にある展示物を見てめまいでふらついても、車いすが受け止めてくれる。どんな症状が起きても、車いすが受け止めてくれるかのよう。
車いすになって不便さを感じるのは多いが、車いすがあるおかげで今の症状のなかでも外出ができる。一ヶ月前よりも、また症状は悪くなっていて家の中でよく倒れ込んでしまう。そんな倒れ込んでしまうくらいの症状でも、車いすさえあれば外出できる。本当にありがたい存在だ。あんなに頼りたくなかったはずの車いすが、今じゃいなきゃ困る存在になっている。
「ずっと、このままでいたい。」と思っていても、変わっていく現実。
どうしても受け入れなきゃいけない出来事。
そのなかでも、車いす生活へなったのは未だに驚いてしまう。ここまで症状が悪くなると思ってもなかった。けれども、その現実に直面すると、人間ってどんどん受け入れていくのだなと自分で感じている。このように受け入れちゃっていいのかもわからない。正解がわからない。
けど、それでいいのかもしれない。現実は待ってくれないし。
正解なんて、あるようでないのだろうし。
きっと、それでいいのだと思う。
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