自転車で富士山五合目に何度も行ってわかった、人生山頂への向かい方
私は何度も富士山の五合目まで自転車で行っている。富士スバルライン五合目(吉田口)は何度か麓まで車で行って、富士ヒルクライムレースに出るお友達の試走に付き合っただけだけど、富士宮口五合目と須走口五合目までは家から自転車で行って自転車で帰ってきた。
須走口五合目までは、あざみラインを通っていく。かなりのベテランサイクリストでもちょっとしり込みする激しい坂が続き、途中には馬返しという、昔は馬も嫌がって引き返したという地名まで残っているあざみラインは、途中壁面に鳥の絵が描かれた長閑な風景もある。でも基本的にはずっと緩みなく傾斜のキツイ坂が11キロ以上続く。あまりにも延々と続くので、まっすぐな箇所では感覚がマヒして平らに見えてくる──そんな地獄の坂道として自転車乗りに有名だ。しかも登山者を運ぶ大型バスがたくさん通るので気を抜けない。

私もあざみラインに行ったときはかなりの覚悟を持って挑み、途中、何度も引き返したい、もうヤダと思って死にそうになりながらよちよち登った。実際、途中で引き返してしまって最後まで登って来ない自転車乗りも普通に見かけた。でも「あざみラインを走り切った」といえば自転車乗り界隈ではそれなりにちょっとしたドヤ顔ができるので、達成感があった。あそこまで家から自転車で行って自転車で帰って来れたのは長年走り続けた結果であり自分でもまあまあスゴイと思う。
ただ私が富士宮口五合目へ行ったときは、私は自分がどこへ向かっているのかを知らなかった。夫がキャンプへ行こう、というのでふたりで行きつけの道志の森キャンプ場まで80キロ弱走りテントを張ってキャンプをした。
翌朝はいつものように山中湖方面へ行ってサイクリングをしたけれど、その時はなぜか道中がきつく、いつまでたっても目的地へ着かなかった。私は走るルートを夫にお任せしてしまうことも多いので、その時、自分がどこを通ってどこに向かっているのかよくわかっていなかった。
途中、自衛隊の演習の音が聞こえたり、自衛隊ヘリが飛ぶのを見たりした。そして延々と坂道が続き、何の説明もないので途中で私は夫にキレた。
「これ、いったい、いつまで続くの!?」半べそになっていた。
その時はあともう少し、確か小一時間ほどで富士宮口五合目まで到着しそうなところまで来ていたけれど、私はあとどれくらい走るのかわかっていなくて、もう自分の限界を超えていた。「もう、帰りたい!」
そして、いつもの夫婦喧嘩。空気が悪くなって、ふたりで黙って走り続けた……でも、そのうち景色が開けてきて、思っても見なかった景色が目の前に現れ、先ほどまでの険悪な空気がいつのまにか吹き飛んでいた。
感激して「来てよかったね」とふたりで笑いながら写真を撮った。


聞くところによると、富士宮口五合目まで27キロ以上続く富士スカイラインは天気によってはそこまで眺めが良くない日もあるみたいで私達はラッキーだった。
ひとしきり眺望を楽しんだ後は、危険なくらいスピードが出てしまう延々と続く下り坂を下って、私達は道志の森キャンプ場まで戻りテントを撤収して自転車で家まで帰った。調べたら富士宮口五合目から道志の森キャンプ場までは70キロあったけど、帰りはあっというまだった。
というわけで、夫のおかげで予期せぬ絶景と感動に出会えたけれど、その道中で私は一度、死んでいた(笑)
これは、もしも私が自分がその日どこへ行くのか、どのくらい走るのかを正確に把握していたら、違った結果になっていたと思う。
体力配分を考えたり、あともう少しだという見通しをもって最後の坂道に挑んでいたら、泣いたり叫んだりすることはなかったはずだと思う(笑)
仕事の時は特に。明確な見通しやロードマップを頭に描いて仕事を進めていくことはとても大切だ。組織やチームで動くときはよりその重要性が増すとは思う。
でも……私のような凡人、一般人はたまに自分がどこに向かっているのか、何を頑張っているのかを見失ってしまうことがある。そして、それなのに、なぜだか自分でも思ってもみなかったようなところにいて自分でもびっくり、なんてことだって稀に起きるのが人生なのかなって最近思うようになった。
人生には目的地を知らないからこそ、出会える景色だってある。
長い人生、誰だってスランプに陥ってしまうことがある。たまに道を見失ったって、頑張る気になれなくてふて寝したっていい。また力が湧いてきたときに、心の赴くままに走って、それで景色が変わることだって長い人生にはあるんじゃないかなって今は思っている。
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FIREしたら、日本全国を自転車で巡る旅に出たいと思っています。
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