激動のオフを越えて――セレッソ大阪、2026/27シーズン始動。新体制と今季の展望まとめ
7月5日(日)、YANMAR HANASAKA STADIUMでセレッソ大阪の2026/27シーズンが始動した。Jリーグの秋春制移行後、初めての「夏の始動日」。しかもこのオフ、セレッソには監督の電撃退任、主力の海外移籍と、かつてないほど激しい動きがあった。この記事では、オフシーズンの動き、始動日当日の出来事、そして今季の展望をまとめて振り返る。
目次
1. 激動のオフシーズン
・パパス監督、電撃退任
・後任はパブロ・マチン
・主力の流出――中島元彦、本間至恩、そして石渡ネルソン
・新加入は4選手+レンタルバック3名
2. 始動日、何があったか
・会見のポイント
・レディースも新体制
3. 今季の展望
・追いかける数字は「勝ち点65」
・不安要素と楽しみ
1. 激動のオフシーズン
パパス監督、電撃退任
最大の衝撃は、アーサー・パパス監督(46)の退任だった。2025年から指揮を執り、百年構想リーグではWEST 2位(勝ち点31)、プレーオフでFC東京を破って総合3位という好成績を残した指揮官に、サウジアラビア1部アル・イテファクから現年俸の数倍とも報じられるオファーが届く。6月下旬に退任報道が出ると、クラブは7月3日に正式に退任を発表した。
若手を大胆に起用し、攻撃的なフットボールでチームを再建したパパス体制はわずか約1年半で幕を閉じた。ただ、始動日会見で天野スポーツダイレクターが「ハーフシーズンで好成績を残せば、どの監督にも秋春制の切れ目で新しい挑戦の機会が生まれやすくなると実感した」と語ったように、秋春制時代の新しい現実を突きつけられた出来事でもあった。
後任はパブロ・マチン
同日、後任としてスペイン人のパブロ・マチン氏(51)の就任が発表された。ジローナをラ・リーガ初昇格に導き、セビージャ、エスパニョール、アラベスなどを率いた経歴を持つ指揮官だ。クラブの選定基準は「ビジョンとフィロソフィーへのコミット」「攻撃的フットボールへの理解」「育成への考え方」。天野SDは「システムありき、やり方ありきではなく、現有戦力を見極めた上でアタッキングフットボールを表現できる人を選んだ」と説明している。
主力の流出――中島元彦、本間至恩、そして石渡ネルソン
選手の出入りも激しかった。
中島元彦(→ベガルタ仙台・完全移籍)
6月26日発表。アカデミー出身の27歳は、百年構想リーグで19試合0得点4アシスト。かつて期限付きで在籍した仙台へ約1年半ぶりに復帰する形となった。「セレッソサポーターの僕だったからこその選択だったと思ってください」という言葉を残しての移籍。桜のエンブレムを愛した男の決断だった。
本間至恩(期限付き満了→FC東京・完全移籍)
2025年3月から浦和レッズより期限付きで加入し、今年1月に延長。しかし6月30日で期間満了となり、浦和復帰を経ずにFC東京へ完全移籍した。左足のテクニックでチャンスを演出したドリブラーの退団は攻撃陣にとって小さくない痛手だ。
石渡ネルソン(→シントトロイデン・完全移籍へ)
そして21歳のU-23日本代表MF石渡ネルソン。百年構想リーグWESTのベストヤングプレーヤー賞に輝いた中盤の若きエンジンに、ベルギー1部シント=トロイデンが獲得へ動き、7月4日には「移籍金はクラブ史上最高額(北野颯太の約2倍規模)の見通し」と報じられた。クラブは慰留に努めたが、本人の海外挑戦への強い思いを尊重する方向だという。寂しさはあるが、「育成型クラブ」セレッソの価値を証明する移籍でもある。
新加入は4選手+レンタルバック3名
一方、迎え入れたのは以下の4選手。現時点でトップチームは27名体制となる。
GK阿部航斗(ジュビロ磐田より期限付き/#31)――ビルドアップと守備範囲の広さが武器
FW小見洋太(柏レイソルより期限付き/#41)――ゴールへ向かう推進力が持ち味のドリブラー
エゼモクェ・チメヅェ海(U-18からプロ契約/#43)――17歳。縦への推進力と1対1の粘り強さ
林ライアン(国士舘大学/2027年1月加入)――推進力・運動量・フィジカルが武器
夏のウィンドウはまだ開いており、W杯終了後の市場の動きも見ながら編成作業は継続中とのこと。補強はまだ終わっていない。
2. 始動日、何があったか
7月5日の始動日は、9時30分からの公開練習に加え、SAKURA SOCIO会員限定のサイン会・トークショーなどのファンイベントも開催。トレーニングの様子は公式YouTubeでライブ配信され、1.8万回以上再生された。
そして目玉は、クラブ史上初となるトップチームとセレッソ大阪ヤンマーレディースの合同新体制記者会見。秋春制移行でJリーグとWEリーグの開幕時期が重なったことを機に、「ワンセレッソ」――トップ、レディース、アカデミーが一つになって高みを目指す――という思いを込めて実現した。
会見のポイント
天野SDの振り返りと目標設定はブレない。
百年構想リーグは勝ち点31で終盤まで優勝争いに絡んだ。失点減、特にセットプレーからの失点の大幅減が後半戦の上昇要因。ソロモンの8得点以外にも「誰でも、どこからでも点を取る」形を作れたことは収穫で、これは新シーズンも継続する。
マチン新監督はまだ指導できない。
就労ビザの発給待ちで、来日はしているものの練習の指揮は執れず。この日はメッセージ動画での「登場」となった。ビザが下り次第、正式にお披露目される予定だ。
新加入選手の「意気込み漢字一文字」
阿部航斗「楽」――レベルの高いJ1を楽しみ、見て楽しいサッカーを
小見洋太「結」――推進力をゴールという結果に結びつける。目標は8ゴール
エゼモクェ・チメヅェ海「笑」――よく笑う自分らしく、日々サッカーに励む
林ライアン「攻」――1年目からガツガツと攻める姿勢を
チメヅェ海は「北野颯太選手も高2でプロ契約して海外に行った。自分も背中を追いかけたい」と語り、質疑では石渡ネルソンの名前も飛び交うなど、「育って、羽ばたく」クラブの循環を感じさせる会見だった。
レディースも新体制
レディースは松田監督が続投。「昨季はリーグ戦の順位こそ振るわなかったが、カップ戦はタイトルまであと一歩。今季最大の補強は経験豊富なスタッフ陣」と語り、皇后杯優勝を目標に掲げた。新加入はガールズU-18から昇格の四本(#4「戦」)、イタリアから移籍の久保田(#6「輝」)、米田エイミー(#15、当日は欠席でビデオ出演)の3選手。アカデミー出身者80%を維持しながら、WEリーグで勝てるチームへの脱皮を目指す。
3. 今季の展望
追いかける数字は「勝ち点65」
天野SDが繰り返し強調したのは、昨季から変わらない数字の設計図だ。シーズンは「勝ち点マイナス40」からのスタートと捉え、まず残留ラインの勝ち点40をできるだけ早く「返済」する。連敗しない・勝ち癖をつける習慣化でチームに勢いをつけ、優勝争い圏内の目安である勝ち点65に到達する――。昨季終盤に優勝争いへ食い込んだ再現性を、フルシーズンで示せるかが問われる。
不安要素と楽しみ
正直、不安はある。新監督はまだチームを指導できておらず、中盤の心臓・石渡ネルソンの穴は簡単には埋まらない。攻撃のアクセントだった本間至恩もいない。キャンプイン(7月7日から北海道・東川町、7月19日から宮崎)までにどこまで土台を作れるか。
それでも楽しみの方が大きい。ジローナを昇格させ、セビージャでELを戦ったマチンが、技術と攻撃性を持つこのチームをどう料理するのか。中村航輔と定位置を争う阿部航斗、再起を期す小見洋太、そして17歳のチメヅェ海。夏のウィンドウでの上積みも残されている。
「大阪のシンボルになる」「最高のエンターテイメントを提供する」「スポーツの関連産業を牽引する育成型クラブ」――クラブが掲げるビジョンに向かう、秋春制元年の挑戦。桜は、夏に咲き始める。
参考・出典
・新体制合同記者会見(公式YouTube)
・アーサー パパス監督 退任のお知らせ(クラブ公式)
・パパス監督、電撃退任へ(サンケイスポーツ)
・パブロ マチン氏 監督就任のお知らせ(クラブ公式)
・中島元彦選手 ベガルタ仙台へ完全移籍のお知らせ(クラブ公式)
・本間至恩選手 期限付き移籍期間満了のお知らせ(クラブ公式)
・本間至恩選手 完全移籍加入のお知らせ(FC東京公式)
・石渡ネルソンがシントトロイデンに完全移籍へ(デイリースポーツ)
・阿部航斗選手 セレッソ大阪へ期限付き移籍のお知らせ(ジュビロ磐田公式)
・小見洋太選手 柏レイソルより期限付き移籍加入のお知らせ(クラブ公式)
・2026/27シーズン トップチーム始動スケジュール(クラブ公式)
・2026/27シーズン トップチーム新体制、及び選手背番号のお知らせ(クラブ公式)
