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セレッソ大阪が選んだ町・東川町がマニアックすぎて面白い

セレッソ大阪が、2026年の夏に北海道・東川町でキャンプを張っています。

「へえ、北海道か」と流しかけたのですが、東川町について調べていくうちに手が止まりました。ここは、ただのキャンプ地ではありません。移住先として全国から注目されている、とてもマニアックで面白い町だったのです。

サッカーの話は正直4割ほど。残りの6割は「東川町ってどんな町なのか」という深掘りに使わせてください。セレッソに興味がない方にも刺さる内容だと思います。


まず結論 ―― 東川町は「ただのキャンプ地」ではない

先にお伝えしたいのは、セレッソの東川キャンプが「涼しいから北海道で合宿します」といった単純な話ではない、ということです。

東川町は人口8,600人ほどの小さな町ですが、この20年で人口が2割も増えています。全国の自治体が人口減に苦しむなか、逆行するように人が集まり続けている“移住の勝ち組”なのです。

その東川が、大阪のプロサッカークラブを呼び込みました。この組み合わせの裏側には、東川という町がずっと続けてきた独特のまちづくり戦略があります。これから、その話をしていきましょう。

なぜセレッソは大阪から北海道まで行ったのか

きっかけは、Jリーグの「秋春制」への移行でした。2026年から、リーグの開幕が従来の2月から8月へと変わっています。

これまで冬に行っていた仕込みのキャンプが、シーズン構造の変化によって「夏」に必要になりました。そこでセレッソが選んだ夏の拠点が、冷涼な気候を持つ北海道・東川町だったというわけです。

つまりこのキャンプは、セレッソにとって“秋春制時代・初の夏キャンプ”という記念すべき第一歩でもあります。日程は2026年7月7日(火)から16日(木)までの9泊10日。リーグ戦へ向けたフィジカル強化とチームビルディングのための一次キャンプという位置づけです。

天然芝グラウンドは“このために”作られた

ここが地味に熱いポイントです。キャンプの主会場「東川町ゆめ公園」の天然芝サッカー場は、このキャンプ誘致に合わせて新しく整備されました。つまり町が、プロを迎えるために本気でピッチを用意したわけです。

しかも初日にはセレッソの歓迎セレモニー、会期中にはキッズサッカースクールも実施されます。「クラブを呼んで終わり」ではなく、町の子どもや住民を巻き込む設計になっているのですよね。菊地町長も「スポーツを一つの柱にまちづくりを」と語っていて、この一言に町の狙いが凝縮されています。

そして、ここからが本題です。この「巻き込む」やり方こそ、東川町の真骨頂なのかもしれません。

日本で唯一「写真の町」を名乗る町

東川町のキャッチコピーは、なんと「写真の町」。さらに今は「写真文化首都」まで宣言しています。

1994年、この町から「写真甲子園」(全国高校写真選手権)がスタートしました。累計3万3千人を超える高校生が参加してきた大会です。さらに1985年からは、毎年「東川町国際写真フェスティバル」も開催されています。

「写真で町を作る」と本気で言い切り、それを40年続けている自治体は、ほかにほとんどありません。かなりマニアックだと思いませんか。

上水道がない町 ―― 蛇口をひねると雪解け水

個人的にいちばん衝撃だったのが、これです。東川町には、上水道がありません。

では生活の水をどうしているかというと、すべて大雪山の雪解けに由来する地下水でまかなっています。町中の蛇口から出てくるのは、長い年月をかけて磨かれた天然のミネラルウォーター(大雪旭岳源水)。年間を通して6〜7℃という水温の贅沢さです。

そして、この水で育つ米は毎年のように特A評価を獲得します。冷めても美味しいお米です。「水がうまい町」ではなく「水道という概念ごと自然に委ねている町」。この尖り方が、最高にマニアックなのだと感じます。

「ふるさと納税」ではなく「ふるさと“株主”」

東川町のまちづくりで、いちばん頭がいいと感じたのが、この制度です。その名も「ひがしかわ株主制度」。

2008年にふるさと納税が始まったとき、東川は寄附を「まちへの“投資”」として捉え直しました。納税する人は“寄付者”ではなく“株主”です。1口1,000円から株主になれて、1万円以上で特産品や宿泊特典があり、町外の株主は「東川町特別町民」に認定されます。

ポイントは、「一回きりの寄附」で終わらせず、“繰り返し町に関わってもらう”設計にした点でしょう。株主が定期的に東川へ足を運び、各地で東川を宣伝し、その一部が実際に移住してきます。関係人口を増やし、それを移住へとつなげる仕組みです。人口2割増の裏側には、この設計があります。

生まれた子に椅子を贈る町

もう一つだけ、東川の“人の温度”が伝わる取り組みを紹介させてください。「君の椅子」プロジェクトです。2006年から続く取り組みで、東川で生まれた赤ちゃんに、町の工房で作った手作りの椅子を、毎年オリジナルデザインで贈ります。

込められたメッセージは「生まれてくれてありがとう。君の場所はここにあるよ」。町に生まれたその瞬間から「あなたの居場所はここにある」と、椅子という形で示してくれるのです。移住したくなる町の空気は、こうした細部から生まれるのかもしれません。

考察 ―― なぜ東川はセレッソを“呼べた”のか

ここまで読んでいただいた方は、もう気づいているのではないでしょうか。セレッソの誘致は、東川町がずっと続けてきたことの延長線上にあります。

株主制度で「一度きりではなく、繰り返し関わってもらう」。写真甲子園で「全国の高校生を巻き込む」。君の椅子で「生まれた瞬間から居場所を渡す」。東川が続けているのは、すべて“関係人口を増やす”という一本の思想でつながっています。

セレッソとの契約も、単発のキャンプ誘致ではなく包括連携協定です(スポーツ教育・地域交流・環境保全・観光まで含みます)。つまり町は、セレッソとそのサポーターを“新しい関係人口”として迎えにいっているわけです。

大阪のクラブが北海道の小さな町とつながる入口がサッカーというだけで、狙っているのはもっと長い関係です。東川は、たぶんそこまで見据えているのでしょう。

おわりに

正直なところ、最初は「セレッソが北海道でキャンプ」という一本のニュースでした。ですが調べてみると、“投資される町”“巻き込むのが異常にうまい町”という、とても面白い自治体に行き着きました。サッカーは、ただの入口だったのです。東川町、一度きちんと訪れてみたい町になりました。

セレッソのキャンプを追いかけながら、この町のこともさらに知っていきたいと思います。

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