第2話|あの日、友達のひと言が、私の人生を変えた。
映画館で観た
『ロミオとジュリエット』。
ジュリエット役を演じていた
オリヴィア・ハッセーの美しさは、
44年経った今でも鮮明に
心に残っています。
スクリーンの中で描かれる恋は、
美しく、そして切ないものでした。
その頃の私は、
まさか自分自身も、
恋の喜びや切なさを経験することに
なるとは思ってもいませんでした。
高校時代の初恋が終わってから、
私は恋をすることが
少し怖くなっていました。
好きになれば、
また傷つくかもしれない。
そんな気持ちが、
心のどこかに残っていたのだと
思います。
大学では何人かの女性と
お付き合いする機会もありました。
でも、
どの恋も長くは続きませんでした。
当時は、
「相性が合わなかったのかな」
そのくらいに思っていました。
でも67歳になった今、
振り返ってみると違いました。
失恋の傷を抱えたまま、
本気で人を好きになることを、
どこかで恐れていたのです。
そんなある日。
人生を大きく変える出会いが
訪れました。
今のように
スマートフォンはありません。
SNSもありません。
出会い系アプリもない時代です。
人と人をつないでいたのは、
画面ではなく、
偶然と人との縁でした。
その日、
私は友達とボウリング場へ
遊びに行きました。
隣のレーンでは、
二人の女性が楽しそうに
ボウリングをしていました。
すると友達が、
「気になる人がいるから、
声をかけてくれないか。」
そう私に頼んできたのです。
私は少し照れながらも、
思い切って声をかけました。
その一歩が、
人生を動かし始めるとは、
夢にも思っていませんでした。
四人で話をするようになり、
一緒に過ごす時間が増えて
いきました。
やがて友達は、
気になっていた女性と付き合うことになりました。
そして私は、
もう一人の女性と話を重ねるうちに、
少しずつ惹かれていきました。
その人が、
今の妻です。
もし、
あの日ボウリングへ行かなかったら。
もし、
友達が私に頼まなかったら。
もし、
私が恥ずかしさに負けて、
声をかけなかったら。
私たちは、
きっと
出会うことはなかったでしょう。
44年経った今、
私はよく考えることがあります。
人生は、
未来を知って選択することは
できません。
その時その時、
自分が「これでいい」と思った判断を積み重ねながら歩いていくしか
ありません。
でも、
その何気ない選択が、
未来では人生を大きく変える出来事になっていることがあります。
人生とは、
本当に不思議なものです。
一人で歩いているように思えても、
振り返れば、
たくさんの人との出会いがあり、
その人たちとの縁が、
私だけの人生という物語を
紡いできてくれました。
友達のひと言。
ほんの少しの勇気。
何気なく出かけたボウリング場。
そのどれが欠けていても、
今の私は存在していなかったかも
しれません。
だから私は今、
人との出会いを大切にしたいと
思っています。
今日出会う人も、
何気なく交わす会話も、
小さな選択も、
いつか人生の大切な一場面になるかもしれないからです。
人生は、
自分一人でつくるものでは
ありません。
人とのつながりが、
人生という物語を
少しずつ紡いでくれる。
44年前のあの日、
友達の何気ないひと言から始まった
物語は、
今もこうして続いています。
