森の中で見つけた、「近づきすぎない優しさ」
今回は、NPO「人と木」の活動で「森の遊び場・秘密基地づくり」のイベントを実施しました。
2日間で3回に分けて開催し、総勢150名以上の親子に参加していただくイベントとなりました。
当日は日差しも強く、山口県長門市ではかなり暑さを感じる日でしたが、森の中へ入ると空気が変わります。
木漏れ日がやわらかく差し込み、風が吹くたびに葉が揺れる。
子どもたちは、木の枝を拾ったり、秘密基地をつくったり、虫を探したりしながら、夢中になって遊んでいました。
誰もが自然と笑顔になり、森の涼しさの中で、思いっきり遊ぶことができました。
そんな中、森の中で、空を見上げた時にいつもみえるものがあります。
「クラウンシャイネス」です。

クラウンシャイネスという不思議な現象
クラウンシャイネス(Crown Shyness)とは、木々の枝葉の先端同士が触れ合わず、少しだけ隙間を空けて成長する現象のことです。直訳で「恥ずかしがりやの樹冠」。日本語にすると「樹冠の譲り合い」になります。
上から見ると、木々の間にまるで川のような線ができているように見えます。枝は伸びているのに、なぜか互いを侵食しない。完全に離れているわけではないのに、近づきすぎない。
その絶妙な距離感によって、森全体がひとつの大きな空間として成立しています。
理由は完全には解明されていないそうですが、
・枝同士がぶつかって傷つくのを避けるため
・光を分け合うため
・病害虫の広がりを防ぐため
など、いくつかの説があるようです。
私はこの現象に、人間社会とも重なるものを感じます。
「近すぎること」が苦しさを生むこともある
人は、「つながり」が必要な生き物です。
しかし同時に、近づきすぎることで苦しくなることもあります。
例えば職場でも、
・常に誰かが口を出してくる
・全部を管理される
・空気を読み続けなければならない
・役割の境界が曖昧
・何でも共有される
そんな環境では、安心感よりも息苦しさが生まれてしまいます。
心理的安全性という言葉がありますが、それは単に「仲が良い」ということではないのだと思います。
むしろ、「安心して、自分の枝を伸ばせること」なのかもしれません。
クラウンシャイネスの木々は、お互いを拒絶しているわけではありません。
むしろ、相手の成長する空間を尊重しているように見えます。
だからこそ、森全体が健全に育つ。
これは組織や地域社会にも、とても大切な感覚なのではないでしょうか。
地域社会も、「森」に似ている
地域にも、いろいろな人や会社があります。
大きな会社、小さなお店、NPO、自治会、行政、子育て世代、高齢者。
それぞれが役割を持ちながら、同じ地域という森の中で生きています。
もし一つの存在だけが大きくなりすぎて、周囲の光や役割を奪ってしまったら、地域全体は弱ってしまいます。
逆に、
・互いの役割を認める
・余白を残す
・全部を抱え込まない
・必要な時に支え合う
そんな関係性ができると、地域は長く続いていきます。
今回のイベントでも、地域の方々、保護者、スタッフ、ボランティアの皆さんが、それぞれ自然な距離感で関わってくださいました。
誰か一人が全部を背負うのではなく、みんなで少しずつ支え合う。
その姿は、森そのもののように感じました。
行政書士という仕事も、「境界」を整える仕事
私は現在、行政書士としても活動しています。
行政書士の仕事というと、「書類作成」のイメージが強いかもしれません。
もちろんそれも大切な役割です。
しかし実際には、「人と人」「人と制度」の間を整える仕事だと感じています。
例えば、
・相続
・遺言
・契約
・許認可
・法人設立
こうした場面では、「境界」が曖昧なままだと、後から大きなトラブルになることがあります。
家族だから分かっていると思っていた。長年の付き合いだから大丈夫だと思っていた。口約束でも問題ないと思っていた。
しかし、人はそれぞれ見えている景色が違います。
だからこそ、「誰が、何を、どうするのか」を整理しておく必要があります。
私はそれを、「争いを防ぐための線引き」ではなく、「安心して共存するための余白づくり」だと思っています。
クラウンシャイネスの木々のように、近づきすぎて枝が折れてしまわないように。
互いを傷つけない距離を整える。
行政書士の仕事には、そんな側面があるように感じています。
森の中で考えたこと
今回、子どもたちが秘密基地をつくる姿を見ながら感じたのは、
人は本来、「安心できる場所」があることで、自分らしく動き出せるのだということです。
無理に管理されなくてもいい。
全部を説明しなくてもいい。
少し距離があっても、ちゃんとつながっている。
そんな空間があると、人は自然と枝を伸ばしていけるのかもしれません。
森の木々は、言葉を持ちません。
それでも、お互いを侵食しすぎないことで、ひとつの森をつくっています。
人間社会も、本当は同じなのかもしれません。
会社も、地域も、家庭も。
近づきすぎず、離れすぎず。
互いの空を残しながら、生きていく。
そんな「共存の知恵」を、森から少し教わった気がしました。
