物語の力で考える、ジェンダー・不平等・環境――ドラマとSDGsの関係
秋の夜長に楽しんだドラマたち。その物語の中に、実はSDGsにつながる大切な視点が詰まっていました。
看護師の誇り、海と向き合う漁師、冤罪と報道、そして“音のない世界”を描くラブストーリー。
最終回ラッシュの今、改めて秋ドラマをSDGsの視点から振り返ります。
「ドラマを観る」ことが、「社会を考える」ことにつながるかもしれません。
ーーあっという間に年末ですね。
ほんと、早いですよね。
ーー今年最後の放送回、今日はどんなテーマでお話ししてくれますか?
いろいろ迷ったんですが……どうしても、明日最終回を迎えるドラマ『silent』が気になってしまって。
ということで、今日は秋ドラマとSDGsをテーマに語ってみたいと思います。最終回ラッシュの今、いろんな作品が話題になってますが、何かご覧になってましたか?
ーー中井貴一さんと岡田将生さんの『ザ・トラベルナース』は毎週欠かさず観てました。
ーーあれは中園ミホさん脚本の、年齢差のあるフリーランスの男性看護師2人が主人公の医療ドラマでしたよね。私も観てました!
ーーで、今回のテーマ、「秋ドラマとSDGs」って……関係あるんですか?
はい、実はあるんです。SDGsの視点から見ると、大きく3つの側面があると考えています。
1. ドラマで扱われるテーマが、社会の課題=SDGsと重なっている点
2. ドラマを制作するテレビ業界自体にもSDGs的な課題が潜んでいる点
3. ドラマづくりのプロセスそのものが、SDGsの達成につながるヒントになる点
ーーそれぞれ、具体的に教えてもらえますか?
1. ドラマのテーマがSDGsそのもの
まず、『ザ・トラベルナース』から。看護師という職業は、長い間「女性の仕事」と見なされてきましたよね。逆に医師は男性が多く、発言権も医師の方が強い。
このドラマでは、そんな固定観念に挑むような描写がたくさんありました。
中井貴一さんと岡田将生さん、どちらも男性で、看護師としての仕事に誇りを持ち、患者に寄り添う姿勢を貫いていました。
さらに、中井さん演じる久喜静は、年下の岡田将生さん演じる那須田歩に対しても丁寧に接し、働き方や使命感のあり方を言葉や行動で示していきます。
このような描写は、
• SDGs目標5「ジェンダー平等」
• 目標8「働きがいも経済成長も」
• 目標10「人や国の不平等をなくそう」
といった視点から考えるきっかけになります。
ーー他に印象的だった作品はありますか?
『ファーストペンギン』もそうですね。こちらは実話に基づいたドラマで、奈緒さん演じるシングルマザーが漁業の世界に飛び込み、男性社会で奮闘する物語です。
食品添加物を使わず、持続可能な形で魚を届けようとする点も、
• 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
• 目標14「海の豊かさを守ろう」
など、SDGsに通じるテーマがたくさんありました。
2. テレビ業界が抱えるSDGs的課題
ーー次に、テレビ業界そのものが抱えている課題について。
これを描いたのが『エルピス―希望、あるいは災い―』です。
長澤まさみさん演じる女性アナウンサーが、冤罪事件を追うストーリーの裏側には、テレビ業界に蔓延する
• 権力への忖度
• 歪んだジェンダーバランス
• セクハラ、パワハラといったリアルな問題が描かれていました。
ーーそういえば、女性アナウンサーがスキャンダルで左遷されたのに、相手の男性は出世していましたよね……。
まさにそこです。日本のジェンダーギャップは、教育・健康の面では世界トップクラスですが、経済・政治の分野では大きく遅れを取っています。
例えば、世界経済フォーラムが出している「ジェンダーギャップ指数2022」では、
• 「教育」:146か国中1位
• 「健康」:146か国中63位
に対して、
• 「経済」:146か国中121位
• 「政治」:146か国中139位(ほぼ最下位)
という深刻な格差が示されています。
『エルピス』では、これらの構造的な不平等に対して、黙って従うのではなく、声を上げて戦おうとする姿が描かれていて、
• SDGs目標5「ジェンダー平等」
• 目標16「平和と公正をすべての人に」の視点と強く重なっていました。
3. 創作のプロセスから見えるSDGs
そして最後に。この秋、私が一番心を奪われたドラマが『silent』です。川口春奈さんと目黒蓮さんが演じる切ないラブストーリーですが、その描き方に注目したいんです。
ーー『silent』、本当に話題でしたね。
はい。脚本を手がけた生方美久さんは、連ドラ初挑戦の新人。にもかかわらず、登場人物一人ひとりが丁寧に描かれていて、主人公だけでなく、脇役たちの視点にもしっかりと物語が与えられているんです。これはまさに「誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念と通じます。
また、日常の中の小さな選択や感情の揺れに丁寧にフォーカスすることで、「効率重視」の現代社会に対して、違う価値観を提示しているようにも感じました。
さらに、若手脚本家を起用し、大きなチャレンジをしたフジテレビの姿勢そのものが、
• 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の実践だったと思います。
ーードラマって、ただの娯楽じゃないんですね。
本当にそう思います。物語が社会の現実を映し、私たちの価値観や行動を変えるきっかけになる――そう考えると、秋のドラマはSDGsを語る上でも、とても豊かな材料になるんです。
ーー今回も興味深いお話、ありがとうございました。では、良いお年を!
良いお年を!

