なぜ、これほど中学受験理科にこだわるのか|木ノ下翔の4つの物語②
大学生の頃に浜学園で講師を始めて以来、20年以上、中学受験理科を教え、入試問題を解き続けています。
なぜ、これほど長く同じ科目を続けているのか。
仕事だからと言えば、それも事実です。
ただ、仕事という理由だけで、毎年新しい問題を解き、教材を調べ、説明を考え続けるのは難しいと思います。
結局のところ、私は中学受験理科そのものが好きなのです。
最初から理科の専門家を目指したわけではありません
私は京都大学では法学部に進学しました。
理系の学部で自然科学を専門に学び、そのまま理科教育の道へ進んだわけではありません。
浜学園の講師を始めたのも、大学時代のアルバイトです。
最初は、授業がうまくいくことが面白かったのだと思います。
自分の説明で生徒が理解する。
難しい問題を整理すると、教室の空気が変わる。
もっと上手くなりたい。
もっと問題を解けるようになりたい。
そう考えて教材や入試問題を調べているうちに、いつの間にか、授業以上に中学受験理科そのものへ引き込まれていました。
「なぜ?」を一段掘ると、理科は急に面白くなる
中学受験理科には、覚える知識がたくさんあります。
植物、昆虫、月や星、天気、電気回路、力のつり合い、水溶液、燃焼。
一問一答の形で覚えるだけなら、理科は暗記科目に見えます。
しかし、「なぜ、そうなるのか」と一段掘ると、急に話が変わります。
植物の形には、その環境で生きるための理由があります。
天体の見え方には、地球や天体の動きが関係しています。
計算問題の式にも、その式が成り立つ理由があります。
知識の後ろにある仕組みを考え、別の単元とつながったとき、「ああ、これはあの話と同じなのか」と分かる。
私はこの瞬間が好きです。
豆知識を並べるだけでは、物足りません
授業では豆知識や小話も使います。
ただ、単に物知りな先生と思われたいわけではありません。
面白い話を聞いて終わるだけでは、知識はまたばらばらのままです。
その現象は何とつながっているのか。
どの条件で起こるのか。
条件が変われば結果も変わるのか。
入試問題ではどう問われるのか。
そこまで考えて初めて、知識は問題を解くための道具になります。
雑学を増やすのではなく、知識同士をつなげたい。
これが、私の理科の見方です。
公式より先に、量の関係を見る
てこ、ばね、浮力、電気、熱、水溶液、燃焼。
中学受験理科には、さまざまな計算問題があります。
典型問題を速く処理するために、公式や解法を覚えることは必要です。
ただ、私はそれだけでは物足りません。
なぜ、この二つの量が比例するのか。
一方を2倍にすると、もう一方はどうなるのか。
何を1と考えれば、関係が見えやすいのか。
複雑な条件から、どれを取り出せば単純になるのか。
関係を整理していくと、難しそうな問題が「なんだ、結局こういうことか」という形までほどけることがあります。
この瞬間も、かなり好きです。
私が研究したいのは、答えより「最初の一手」です
完成した解答を見れば、解き方は分かります。
しかし、子どもが本番で困るのは、答えを確認できない状態で初めて問題を見たときです。
何を見ればよいのか。
どこから手をつければよいのか。
どの条件が重要なのか。
過去に学んだ何と似ているのか。
私は問題を解くとき、ここをかなり考えます。
答えを知っている大人が完成した解法を順番に説明するだけにはしたくありません。
初めて見た小学生が、何を手掛かりに最初の一歩を踏み出せばよいのか。
その一歩を言葉にして渡すことが、解説の重要な役割だと思っています。
初見問題も、完全なゼロからは解きません
受験生は4年生、5年生、6年生と学習してきています。
知識を覚え、典型問題を解き、比や割合を使い、表やグラフを読んできました。
見た目が初めての問題でも、知っている構造が隠れていることがあります。
問題を見る。
何の現象なのか認識する。
過去の問題との共通点を探す。
条件を整理する。
そして処理する。
私はこの思考の流れを「木ノ下FIVE」と整理しています。
初見問題を、知っている形へ戻せるようにすること。それが私の理科指導の大きな目的です。
面白さを、得点につなげる
理科を面白いと思ってほしい。
ただし、「好きになれば点数はどうでもよい」とは考えていません。
中学受験をする以上、点数は取りにいきます。
覚えるべき知識は覚える。
典型問題は速く正確に処理する。
過去問を分析する。
取る問題と、深追いしない問題を判断する。
意味を理解した方が覚えやすく、知識がつながっている方が初見問題でも取り出しやすい。
面白さや理解を、最後は得点へつなげる。
そこまでが受験指導です。
同じ科目でも、問題は毎年変わります
20年以上教えていても、入試問題は毎年新しく作られます。
新しい題材が出ます。同じ知識が別の角度から問われます。学校ごとの出題も変化します。
過去の経験だけで教え続けることはできません。
経験が長いこと自体よりも、その経験の上に新しい研究を積み重ねることが重要です。
理科の問題を解く。
なぜその解き方になるのか考える。
もっと単純に説明できないか考える。
子どもがどこで止まるかを見る。
また説明を変える。
私は、分からなかったものが、考えることで分かる形へ変わることが好きなのだと思います。
だから、これほど中学受験理科にこだわり続けています。
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