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【短編小説】👻「焚き火のパレード」 #虹色創作部

 風がひゅうと吹いた。
 古い墓場の奥、月に照らされた広場で、焚き火が青や緑に燃えあがる。
 その周りに、幽霊たちが集まっていた。

 首のとれた道化師が自分の頭をジャグリングし、骸骨の笛が甲高く鳴る。
 氷の花嫁は笑いながらドレスを燃やし、影の踊り子がくるくると舞う。
 兵士の幽霊は胸の空洞を太鼓にして、ドンドンとリズムを刻んだ。

 狂騒の宴。
 けれどその輪の外に、一人の少女の幽霊が立ちすくんでいた。
 まだ死んだばかりで、どうしていいか分からない。
 焚き火の光に照らされるたび、透きとおる自分の姿が心細く見えた。



 そのとき。
 輪の中央にいた黒衣の青年が、ふと彼女を見つけた。
 外套に包まれた背の高い影。
 片目に古い傷、けれど残る瞳は星のように冴えている。

 彼は口元にかすかな笑みを浮かべ、手を差し伸べた。
 「怖がるな。ここでは誰も君を裁かない。……踊るだけでいい」


 少女は躊躇した。
 けれど、その声は不思議にやさしくて、手のひらは炎に照らされてほんのり温かく見えた。

 「……わたし、幽霊になってから笑ったことがないの」
 「じゃあ、初めてを俺にくれ。……こう見えて、口説き文句だけは生前から得意なんだ」

 ――その言葉に、胸がちり、と鳴った。
 彼女は小さくうなずき、その手を取る。

 輪の中に引き込まれる。
 骸骨の笛が旋律を変え、影の踊り子が彼女を囲む。
 笑い声、太鼓の音、火花。
 彼女は思わず声をあげて笑った。
 自分の声がこんなにも鮮やかに響くなんて、忘れていた。

 青年は踊りながら、帽子を取って彼女にかぶせた。
 「ほら、似合う。ちょっと魔女みたい」
 「……からかわないで」
 「本気さ。……今の君の笑顔、焚き火よりも熱い」

 少女は顔を伏せる。
 心臓はもうないはずなのに、胸の奥がとくんと跳ねた。

 やがて夜が白みはじめる。
 幽霊たちは次々に影へと戻っていく。
 焚き火も、しゅうっと音を立てて灰になった。

 青年は彼女の手を放さず、霧の中で言った。
 「また来い。火が灯れば、俺は必ずここにいる」

 少女は涙のような笑みを浮かべて答えた。
 「……約束、してくれる?」
 「幽霊の約束は、永遠だ。ちょっとロマンチックだろ?」

 そう言って外套を翻し、彼は闇に消えた。

 少女はまだ赤い炭火を見つめ、胸を押さえる。
 ――次に会うときも、きっと笑える。
 そう信じて、初めて夜を愛しいと思った。




虹色創作部  お題「焚き火」
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