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野生と保護と共存と。【マダガスカル旅行記】

マダガスカルは、多くの旅人にとって憧れの場所のひとつだ。

その理由は、アクセスの難しさとそこにしかない固有種の多さが大きなものだと思う。アフリカ南部のハブ空港であるヨハネスからのフライトでさえ、2日に1回だし、首都アンタナナリボの空港は小さいため、離着陸できる機種の大きさも数も限られている。
観光のためのビザはイミグレで申請して、ひとり10ドルか10ユーロだった。もちろんドルでお支払いしたのだが、その辺りはゆるいらしい。

4日間の自然満喫で、考えさせられる旅を振り返っていきたい。

街並みと世界遺産

空港で、ツアー会社の方と合流した。フランス語圏で英語は基本通じず、移動手段がタクシーや乗合バスくらいしかないので、今回はドライバーさんとガイドさん付きのツアーに申し込んだ。ちなみに日本にありがちなグループツアーというのはほとんどないようだった。

今回申し込んだマダガスカル現地のツアー会社。とても親切でたくさんの質問にも丁寧に答えてくれる素敵なガイドさんとドライバーさんだった。

https://www.tripadvisor.com/Attraction_Review-g293809-d27699961-Reviews-Fetnyglot2our_Madagascar-Antananarivo_Antananarivo_Province.html


空港から市内に向かう道の中で、まず印象的だったのは、赤い土と田んぼだ。日本の田園風景を思わせる、棚田も多くあって、長閑な景色が広がっていた。

飛行機からの景色

世界遺産のお城「アンブヒマンガの丘の王領地」を訪問し、牛を生贄にするアミニズムの説明や木造の瓦屋根のような作りの建物が神社のようで、日本に近い印象を受けた。

どっかで見たことある感じ


アジア方面からたくさんの移民が訪れたらしく、壁紙が浮世絵になっていたり、中国のようなデザインの部屋があったり、少なくともイメージするアフリカというよりアジアの雰囲気がある。マダガスカルの人々は顔立ちもアジアっぽく、私も留学中にマダガスカル人の友達と先生に間違えられたことがあるくらいだ。

ここでは空港のイミグレで私の前に並んでいた人たちを見かけた。彼らは夕食のレストランでも近くに座っていた。お互いプライベートツアーだろうが、同じようなコースを案内されるのだと思う。

首都アンタナナリボへ移動。
街中に近づくと車が多く、しかも古いものがほとんどのため、排気ガスが立ち込めている。けれど、人がたくさん歩いていて、活気があり、ごちゃごちゃした感じが私は好きだ。

掻き分けて進んでいく

出身の友達に聞いてはいたが、マダガスカルはアフリカ最貧国のひとつであり、観光業とバニラビーンズやココアのプランテーションが主な産業で、宿泊するホテルの周りでもたくさんの子どもたちが物乞いをしていて、分断されているヨハネスとの明確な違いを感じた。

ガイドさんに連れられて、地元のレストランに連れていってもらい、その中は、ホテルも同じく清潔でおしゃれな雰囲気が漂うものの、一歩外に出ると観光客だけでは歩き難い喧騒に包まれる、そんな圧倒された1日目だった。
ちなみに、アンタナナリボはリーズナブルにフレンチが食べられることでも有名らしい。

飽きない車窓と盛りだくさんな保護地区

翌朝は早く出発して、国立公園がある東へ向かう。
ドライブ中も、ところどころ家があったり、人が歩いていたり、棚田の絶景が広がっていたりと、旅全体を通してとにかく車窓風景に飽きなかった。家は土や木でできたものが多く、言葉を選ばずにいえばみすぼらしいものばかりだ。街ゆく人は靴を履いていなかったり、ボロボロの服を着ていたりする。
それでも、全体の貧しさをほとんど感じさせなかったのは、私がいわゆる発展途上地域に行き慣れていることもあるだろうが、人々の笑顔とカラフルな街の活気に満ちていたからだろう。

車窓風景

治安の悪い殺伐とした雰囲気は一切感じず、道端の店はカゴに綺麗に盛られたフルーツで飾られ、車の間を自転車が行き交う。下を向いて無気力な顔でスマホを眺めている人なんておらず、太陽の下で目をキラキラ輝かせていた。
道中では主に中国系の大きなトラックとすれ違ったり、追い越したりしたことも印象的だ。

これはライチを運んでいたよう

最初の目的地は、自然保護地区。
車から降りて、案内されるとすぐ木の上に、写真でしか見たことのない小さな猿がたちが!
マダガスカル固有のインドゥリやファシカだ。
職員さんがバナナの破片を差し出すと近寄ってきて手で掴み、パクッと食べる。見上げると木の上でライチを食べていた。
最初は私もバナナをあげてみたり、その近さに驚きながら、興奮していたのだが、彼らを見世物のように扱ってしまっている気がしてだんだん不安になってきた。

にらめっこしましょ

彼らはどうしてここにいるの?と聞いてみたら、密猟から守るための最終手段としてこの保護地区で守って、観光の収益で運営しているらしい。5年経ったら自然に戻すそうだ。
適応できる、と説明されたが、これだけバナナを与えられたり人に慣れたりしていて、動物たちにとって本当に良いのかと疑問は尽きなかった。
近寄って撫でてみな、と自撮りしやすい位置にバナナでおびき寄せて、写真まで撮らせてもらった。

次はカメレオンで、今度は囲われた中で、そこらじゅうにたくさんの種類のカメレオンがいた。差し出されて受け取って、腕に乗せたりもした。変色している様子が見られて、大きさも形も少しずつ違って、とてもワクワクする時間だった。へび、カエル、トカゲと続いて、ひたすら近くで観察、爬虫類は触らせてもらうまで大満足の時間で、こんなに最初から体験してしまってこのあと暇になるんじゃないかと不安になったくらいだ。

こんなに小さい
上から見たらわからなかった

いつの日か地元の図書館で観た映画『マダガスカル』を思い出す。NYの動物園から逃げ出した動物たちが故郷のマダガスカルに流れ着くコメディだ。
世界中の動物園で檻に閉じ込められる動物たち、野生の森にいても人間に脅かされる動物たち、人間に守られながら知らない森で放し飼いにされる動物たち。どこにいる彼らが一番幸せなのだろうか。

道なき山道で出会う、野生のキツネザル

朝ごはんがたっぷりだったので、程よい酸味と甘みが美味しいバオバブジュースと野菜スープで軽めのランチをいただいてから、国立公園へ。

簡単な登録を済ませてから、今度は新しいレンジャー(自然保護官)が案内してくれる。昼間なので野生のキツネザルに会える確率は低いと伝えられた。ついて歩くこと30分。雨が降ってきた。それでも歩き続ける。
突然、レンジャーにここで待ってろと伝えられる。
葉っぱで雨宿りしながら待っていると山の中から手招きされる。
え?山道でも獣道でもありませんけど?ここを進むんかい!という道なき山道を必死に歩いていく。指を刺されて上を見上げると、高い木の先の枝で何かが動いている!野生のキツネザルだ!鳴き声を上げながら飛び回っている。

遠くに見つけた!


さっきすぐそばで見られたあとだから、こんなに歩き回って探しに行くことの貴重さがわかってより特別になったし、何より動物たちが生き生きとしていた。
その後も歩き続け、同じ流れを繰り返して2時間半ほど山の中にいた。
キツネザルにはいくつかの群れのナワバリがあるらしく、その痕跡を探して見つけているそうだ。それにしても、経験と嗅覚というか、すごい観察力で驚きの連続だった。

陽が落ちた18:00過ぎにナイトサファリへ。同じレンジャーさんについていくのは心強い。森の中はだんだんと暗くなって不気味さを増していく。
それでも、彼が立ち止まってライトを向けた先には、必ず何かがいる。

かえるちゃん
キツネザルがこっちをみてる


葉の影に隠れたカエル、木の枝に同化したカメレオン、そして大木を渡り歩くキツネザル。
なぜこんなに瞬時に見つけられるのかは到底理解ができない。ただただこの島にしかいない生き物たちに出会う感動と、例によって道を切り拓きながら進む感覚が交わってかつてないワクワクの連続だった。

なぜチップを渡すのか

翌朝も山へ向かう。個人的に今回のハイライトだったのは、この朝のハイキング(?)だ。
こちらはより野生に近い状態で、餌付けなどされずに守られている保護区域だ。入り口に国立公園の標識がないことくらいしか昨日との違いはなかった。
私は懲りずにリゾートワンピースにサンダルという格好でついていったものの、だんだんと枝葉を掻き分けていくコツを掴んで行ったようで、蚊が多い場所にいた数分以外は元気に歩き回っていた。
1時間ほど登り続け、そろそろ疲れてきたな、昨日と同じかなと期待値を下げていたところ、山の中で待機していたらしい別のレンジャー(?)ふたりと合流。

彼らに招かれるままに進んでいくと、遠く木の上にインドゥリが何匹も!私たちが歓声をあげたのを見届けた彼らは、何やらスマホで謎のプレイリストを開く。キツネザルたちの鳴き声が流れてきた。待つこと数分。インドゥリたちは確実に降下してきている。最後のひと押しは、山の中に生えていた葉っぱや木の実。もしバナナでおびき寄せようとしたら帰ろうかと思っていたので、キツネザルたち自身が自然にアクセスできる好物の食べ物で安堵した。

葉っぱを差し出してみる

気がついたらすぐそばにいる。私も指さされた草を差し出してみる。目が合って、こっちに来る!と思った瞬間、横にジャンプ。隣の木はあまり太くなく、飛びついたら大きく揺れて、目の前のインドゥリはよろけながら着地して、必死に体制を立て直していた。猿も木から落ちる、である。この状況が数十分も続き、間近でインドゥリを観察できる大満足の時間だった。

帰路に着く前、4日間ついてきてくれているガイドさんから「インドゥリを近くで見せてくれた彼らにチップを渡したら?」と提案を受けた。そういえば、今までリキシャに乗ったり、ホテルで荷物を運んでもらったりもしたけれど、チップを勧められたことは一度もなかった。「いくらくらい?」と聞くと20000アリアリ(700円くらい)をそれぞれに、ということだった。この時は通貨(アリアリ)と日本円の換算がパッとできなかったため、言われるままの金額を渡した。歩き出してからふと思った。彼らは私たちのツアーの基本料金から収入はなく、このチップのみだったのではないか。ガイドさんはもちろん、2日間山を案内してくれたレンジャーさんはその額はわからないが、ツアー代の一部が渡されているだろう。

しかし、山の中でインドゥリが見つけられて、観光客が満足したときにもらえるわずかなチップしか、彼らには届かない可能性が高い。想像以上の、この旅のハイライトになるくらいの体験をさせてもらったのだから、浮かれていた間にもっと考えて、多めに渡せばよかった、と後悔した。適切な価格とか、仕事量に対する対価というより、感謝の気持ちとして。

入口付近ではなぜか行きも帰りもカップヌードルの香りが漂ってきてお腹が空いた。お土産屋さんでは、中国製かな?と浅はかな考えて眺めていたアウトドアハットが、キツネザルたちの刺繍だけでなく帽子の生地から明らかに手縫いで手作りされてオリジナルのタグも塗ってあって可愛すぎたので購入。お店のお姉さんに聞くと、街の女性たちがひとつひとつ作っているそうだ。値段は35000アリアリ(1200円くらい)。正直安すぎで、少し埃を被りかけたこのお土産屋さんでの商売に生活がかかっている人もいるのだろうな、と思いを馳せた。

誰のための”保護”なのか

その後は高級リゾートの敷地内にあるキツネザルスポットへ。今までよりさらに放し飼いの動物園のような感じが強くて、観光客で混み合い、大量のバナナで餌付けされた複数種のキツネザルが狭い範囲の至る所にいた。

竹を食べていた

本来の森では群れごとに縄張りが被らないように分かれているらしく、これだけ密に集まっていて争いが起きないのか心配になった。写真を撮ろうとするときにぶら下がったりと人に合わせて芸当ができるように躾けられていて、これまで自然で見つけるハードさを体感してきたからより、簡単に出会えてしまう状況に拍子抜けしていたし、自分は楽な状態で見ているのに見せ物にされている事実が違和感のように残った。
なぜここにいるの?と聞いたら最初と同じ、保護地区であるという説明を受けたが、どちらかというと観光色が強く感じた。ここで出会うだけでは自国の動物園となんの変わりもない気がして、でも観光資源を活かせないと人々の生活が成り立たない。

道のマーケットを眺めていると赤い皮に包まれたライチがたくさん売られているのがわかる。この地域の名産なのかと思っていたが、輸出向けのライチを別の地域で作っていたものの今年は海外への輸出の価格が低く、国内で大量に余ってしまっため、政府が国民に配って貧しい人たちの収入源になっているということだった。ライチは大好きなので、車を降りてお店へ向かう。どこも1kgで1000アリアリくらいで売られている。みんなが配られているのなら誰が買うのだろう…と疑問ではあった。

途中の街ではリキシャに乗って散策もした。
アヒルを売り付けされそうになる。

道には汚れた水たまりができていた

首都に戻って、「最後の楽園」を思い返す

車と人で道路が埋め尽くされた首都アンタナナリボに戻ってきた。轢かれそうになりながら道路を横切ったりして、人々に混ざりながら街を歩く。
マーケットはさらに活気にあふれている。人混みだったが幸いにもスリなどの犯罪に巻き込まれることはなかった。カット野菜やスパイスが売られていたのが印象的だった。

カラフルな野菜たち

王宮を見学した後は、教会にも立ち寄った。マダガスカルはカトリックの国家。フランスとの植民地に対する抵抗なども動画で見たが、基本的にフランス語とマダガスカル語のみなので、画像での理解しかできなかった。次はフランス語をわかるようになって訪問したいと思う。

たくさんの人が待っていた

教会の裏にある展望台から街を眺めた。中心にある新しいサッカースタジアムの存在感が強い。ビル群や中心部とはっきりわかるような富裕層地域は見当たらなかった。全体的に赤や白っぽい色の低い建物が広がっていて、それが明らかなスラムのようには見えないけれど、家の作りの様子から、豊かではないことがわかる。

ここでしか見られない固有種がたくさんいる「最後の楽園」でありながら、動物たちが密猟や環境破壊の危機に晒され、貧困や汚染といった社会問題も抱えるマダガスカル。
その複雑さが混じり合って驚きが折り重なる感覚が、私は好きだ。
日本に遠く離れながら、米食であり、建築が似ていて、村に流れる時間感覚に通じるものがある。
そんな国をいつか、駆け足ではなくて、ゆっくりと周ってみたいと思う。


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