⑶秋田一人旅に行ってみた(バスに揺られながら)
田沢湖駅に着いた。

二年ぶりに踏み入れた秋田の空気は、大好きな、あのひんやりと澄み切った匂いだった。
体いっぱいに吸い込んで、ひとり旅という責任をちょっぴり肩で感じながら、心地よい緊張のままに、駅を出た。
早速、予約していた温泉宿に向おう。
宿に行くまでは、バスと徒歩。
バス停で待っていると、長い列が、一つずつ進んでいった。
入り口で整理券をもらうバスの乗り方に目新しさを感じながら、念のため、目的地の方に辿り着くバスなのか、運転手さんに聞いてみた。
すると、優しい笑顔でこくんとした。
全身に包まれるような温かさに、「秋田に入ったんだ」そう心と体が頷いた。
しばらくその感覚を味わっていると、ふとこんな掲示が目に入った。

「親切な言葉と態度で応対します」
当たり前のようにも思えることだけど、その当たり前を改めて言葉にしていることに、思わず見とれた。
特に都会の方になれば、忙しない日常の中で、丁寧な言葉は使えても、親切な態度で接することはなかなか難しかったりする気がする。
そんなことを思いながら、窓からの景色に再び目が奪われていると、あっという間に、目的の停留所に着いたようだった。
すると、さっきの運転手さんが、アナウンスで声を掛けてくれた。
「〇〇で降りたい方、到着しましたよ〜」
この黄色い看板に、偽りはなかった。
親切な態度、そのものだ。

ありがとう。運転手のおじちゃん。
もう少し、この世界を信じてみても、いいのかな。
この連載は、全てがいっぱいいっぱいになった冬のある日、肩掛けのバックひとつで飛び出した旅の記録です。
あなたの日常にもきっと潜んでいる、小さな奇跡に満ちた、不思議な愛と繋がりの物語へ、ようこそ。
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