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ありがとうのリレー

You repay them by helping other people whom you can help.
――あなたが助けられる人を助けることで、その恩を返す。

大学受験勉強のころ、『速読英熟語』で出会った英文です。
ラジエーターが壊れて立ち往生した車。助けてくれた人に、主人公は謝礼を渡そうとします。しかし、相手はそれを受け取らず、「お礼は他の人に」と語り、去っていく。

単語や熟語を必死に覚えていた私ですが、この一文だけは英文の響きごと胸に残っています。
第一志望には受かりませんでしたが(笑)、この文章に出会えただけで、受験勉強をしてよかったと思っています。
この本を作った方にも、こっそり「ありがとう」と伝えたいくらいです。

高校生の私にとって、それは映画のヒーローのような台詞でした。
見返りを求めず、助けたことすらさらりと流す。
「あなたが次の人を助ければ、それで十分」という潔さ。
英文法の勉強で読んだはずなのに、その思想は、ずっと私の中で息をしています。

今、図書館で働く私は、日々多くの方から感謝の言葉を受け取ります。
「助かりました」「ありがとう」と言われるたびに思うのです。
この感謝は、私ひとりのものではもったいない。
次に困っている人を見つけたら、この温かさをそのまま手渡せたらと。
感謝は、一人で抱えるより、次の人へ渡したほうが、ふんわりと広がっていく気がするのです。

私の暮らしも、たくさんの「影のヒーロー」に支えられています。
雨の日、レジで「お気をつけて」と声をかけてくれた店員さん。
混雑した電車で、子どもを抱える私にさっと席を譲ってくれた見知らぬ人。
図書館の返却ポストに、本をきれいに拭いてから戻してくれる常連さん。

顔も名前も知らない誰かの優しさが、今日も私の心を温めてくれます。

もしも、そんな誰かにお礼を言う日が来たなら。
その感謝を大切に胸にしまい、その温かさを別の誰かに渡していきたい。 「ありがとう」のバトンが、今日も静かに、でも確かに――そして遠くまで繋がっていきますように。

喜木 拝



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