今年の漢字は「灯」|ゆく年、わたしの灯り
灯りが点くのは、いつも遅い時間だった。
娘が眠って、家の音がほどけて、ようやく机に戻れた夜。
そのときだけ、わたしは「わたし」に戻れた。
一日を終えるたび、部屋はちゃんと片づかない。
洗いものの残り、たたみ切れない洗濯物、途中で終わった絵本。
それでも、最後にひとつだけ「片づけたかったもの」があった。
それは、今日の気持ち。
言葉にしないままにしておくと、心の中で湿って、重くなっていく。
だからわたしは、夜に小さな灯りを点けるように、文字を置いた。
大げさな決意は、今年も何度もくじけた。
毎日投稿がきつい日もあったし、書きかけのまま閉じた夜もある。
「今日は無理」と言いながら、それでも指だけがキーボードに触れていたのは、たぶん、心だけは嘘をつけなかったからだ。
言葉は、不思議だ。
書いた瞬間に、誰かの部屋に届くわけじゃない。
でも、投稿ボタンの向こう側で、ふっと返ってくるものがある。
「読んだよ」
「わかる」
「今日、ちょっと楽になった」
その短い一言が、こちらの胸のあたりで静かに灯る。
ああ、届いたんだな、と。
わたしが点けたつもりの灯りは、実は、受け取ってくれた誰かが点け直してくれていた。
今年のわたしは、たぶんずっと“弱火”だった。
強く燃え上がるより、消えないことを選んだ。
家族の生活の真ん中で、仕事の合間で、眠い目をこすりながら、ちいさく灯し続けた。
そして気づいた。
灯りって、まぶしい必要はない。
暗闇を全部なくす必要もない。
ただ「ここにいる」を知らせるだけで、十分あたたかい。
ゆく年。
今年のわたしを表す漢字は、「灯」。
来年もきっと、派手にはなれない。
でも、灯りは点けられる。
誰かのためにというより、まず自分が迷子にならないために。
その灯りが、もしどこかの誰かの夜を少しだけやわらかくできたなら――それは、今年のわたしのいちばんの贈り物だ。
喜木 拝
マイトンさんの記事で凛花さんの素敵な企画を知りました。

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