胃袋は空っぽ。それでも私の人生は、案外ちゃんと満ちている。#この作品に帯をつけるなら【創作大賞感想】
帯なので、いいことしか書きません。

創作大賞2026に応募されている作品に、私が読者として「帯」をつけるなら。そんな気持ちで、感想を書かせていただく企画をしています。
そしてなんと、きょうたのさんとコラボさせていただけることに!!
私が考えた帯のことばを、きょうたのさんに描いていただています。
今回読ませていただいたのは、みくさんのエッセイ。
『胃袋と私の一日戦争~美を追い求め、空腹の果てで「ギブミーライス」と叫ぶ~』
タイトルから、すでにお腹が鳴りそうです。
「胃袋と私の一日戦争」
「美を追い求め」
そして、「ギブミーライス」。
美しくなりたい気持ちから始まったはずなのに、最終的に求めているのは白米。
この時点で、ただの美容体験記では終わらない予感がします。
物語のきっかけは、仕事用のプロフィール写真。
仕事のステージが変化していくなかで、そろそろ正面を向いた写真が必要なのではないか。
そう考えた著者は、自分の姿と向き合います。
鏡の前に立つと、目に入ってしまうのは、若い頃とは違う輪郭や体形。
誰もそこまで気にしていないとわかっていても、自分だけは見過ごせない。
今の自分をそのまま写すことに、少しだけためらってしまう。
その気持ちは、私にも覚えがあります。
若さに戻りたいわけではない。
けれど、変わっていく自分をすぐに受け入れられるわけでもない。
「今のままでいい」と「もう少しきれいになりたい」の間で、人の心は簡単に揺れてしまいます。
そんな著者が挑むのが、一日断食。
ここから始まる空腹との戦いが、とにかく可笑しい。
食べられないとなった途端、頭の中を占領していく食べ物たち。
なかでも、炊きたての白いごはんへの情熱は、もはや恋と呼びたくなるほどです。
空腹のつらさは切実なはずなのに、豊かな比喩と自分への容赦ないツッコミによって、次々と笑いに変えられていく。
苦しんでいるのは胃袋なのに、読者は笑ってしまう。
そして笑いながら、「食べるって、なんて幸せなことなのだろう」と思わされます。
けれど、このエッセイの魅力は、空腹との戦いだけではありません。
胃袋を空っぽにしたことで、著者はやがて、自分の中にすでにあるものを見つめ始めます。
仕事を続けてきた時間。
書くことで身につけてきた力。
言葉を受け取ってくれる人たち。
日々の暮らしのなかにある、ささやかな幸せ。
若さや美しさは、少しずつ変わっていくものです。
でも、これまでに積み重ねた経験や、誰かと結んできた関係まで、なくなるわけではありません。
むしろ、年齢を重ねたからこそ、少しずつ中身が満ちていくこともある。
そう思わせてくれるところが、この作品のあたたかさだと感じました。
笑いながら読み進めているうちに、いつの間にか「今の自分を、もう少し好きになってもいいのかもしれない」と思えてくる。
美しくなることを諦めるのではなく、理想通りではない自分も一緒に連れていく。
そんな軽やかな自己肯定が、このエッセイには流れています。
ということで、私がこの作品に帯をつけるなら。

この帯をつけたいです。
空腹の先で見つけたのは、理想の姿ではなく、今ここにある自分の人生。
白米への愛に笑い、空腹との戦いにハラハラしながら、最後には自分が積み上げてきたものの豊かさに気づかされる。
笑って読めて、読後には今日の自分を少しだけ愛おしく思えるエッセイでした。
みくさん、素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございます。
帯のことばを素敵に描いてくださった、きょうたのさんにも感謝を。
喜木 拝
紹介作品
みくまゆたんさん
『胃袋と私の一日戦争~美を追い求め、空腹の果てで「ギブミーライス」と叫ぶ~』
応募部門:エッセイ部門
作品URL:
帯の文字
きょうたのさん
企画記事
喜木凛(ききりん)
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