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harunoyonaga
夏休みは、いちご色|#シロクマ文芸部
夏休みも、もう半ば。
カレンダーを見るたび、少し焦る。
娘に、夏らしい思い出をつくってあげられているだろうか。
幼稚園は休みでも、私は仕事。娘は預かり保育のため、いつもと同じように登園する。
けれど、園にいる子どもは、ふだんよりずっと少ないようだ。
娘も、近ごろはあまり行きたがらない。
小さな背中を見送りながら、「仕事だから仕方がない」と自分に言い聞かせる。それでも胸の奥には、ちくりとしたものが残る。
夏休みの宿題には、思い出を絵に描くものもある。
海にも行っていない。
旅行にも行っていない。
このままで、娘は何を描くのだろう。
思い出をつくらなければ。
そう考えはじめると、まるで親に出された宿題のようで息苦しい。
そんなわが家に、待ちに待った白くまのかき氷機が届いた。
氷を入れて、娘と一緒にハンドルを回す。
しゃり、しゃり。
涼しい音とともに、真っ白な氷が器の中へ降り積もっていく。
娘は、いちごシロップを好きなだけかけた。
白い山が、みるみるピンク色に染まる。
かけ放題が、うれしくてたまらないらしい。
いちご色のかき氷を前に笑う娘を見ていたら、思い出は、遠くへ出かけなければつくれないものではないのかもしれない、と思った。
白くまのハンドルを一緒に回したこと。
いちごシロップを、好きなだけかけたこと。
冷たいね、と笑いながら食べたこと。
そんな午後も、娘の夏の一枚になってくれたらいい。
それでもやっぱり、海にも連れていってあげたい。
波の音を聞いて、熱い砂の上を一緒に歩きたい。
焦らなくていい、と自分に言いながら、まだ少し焦っている。
夏休みは、もう半ば。
でも、まだ半ばだ。
宿題の白い画用紙は、まだ白いまま。
どんな夏の色に染まるのかは、これからのお楽しみ。
喜木 拝
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