ミラノ風ドリアと永遠の憧れ ー 幽霊でも会いたい人には、敵わない ー
「恋じゃないけど、妬けること」
ありませんか?
夫の卒業アルバムを開くと、そこに写る夫は、やっぱり"よかにせん"。
今より少し細くて、ちょっと影のある目が、なぜだか胸を締めつける。
「崎尾先生だったら、何て言うか考えるんだ」
夫が時折語る、主治医だったという、立ち姿の美しい女医さん。
真剣で、冷静で、でも不思議とあたたかくて。
彼の心に、一筋の光を残してくれた人。
「幽霊でもいいから、もう一度会いたい」
夫がそう言ったとき、私は飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。
いつも現実的な夫が。幽霊に会いたいなんて。
でも、わかる。
だって私も、会ったことがないのに、崎尾先生がちょっと怖い。
憧れって、手強い。
夫に「ミラノ風ドリアが食べたい」と言えなかった過去。
好きなのに、本当は腹ペコで食べたいのに、
つい「あなたは何が食べたいの?」と笑ってみせた。
だけど今は、言いたい放題。
「ダブルチーズにして、タバスコもらってきて!」と胸を張る。
それでも、ふとした瞬間に思う。
―崎尾先生、あなたにはまだ勝てない。
きっと夫の心の片隅に、永遠にやさしく立っているんでしょう。
白衣姿で、静かに彼を見守ってる。
でも、だからこそ思うんです。
私は、となりにいる。
ドリアの湯気越しに笑い合って、しょうもない話で夫を笑わせる。
いつか、あなたにだって言ってみたい。
「崎尾先生、見てますか? あなたが救った人を、今、私が笑わせて、生かしてます。だから、ちょっとだけ―私の勝ちってことで、いいですか?」
そんな日が、きっとくると信じて。
私は今日も、サイゼリヤでミラノ風ドリアをすくう。
喜木 拝
追伸
ヤスさん、整いました!
実際はミラノ風ドリアではなくて、辛味チキンなんですけど。
フィクションを含むエッセイ風です。
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