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バナナが転がる。すれ違う想いも、青春も、まっすぐには進まない。#この作品に帯をつけるなら【創作大賞感想】

帯なので、いいことしか書きません。

創作大賞2026に応募されている作品に、私が読者として「帯」をつけるなら。
そんな気持ちで、感想を書かせていただく企画をしています。

そしてなんと、京たのさんとコラボさせていただけることに!!

私が考えた帯のことばを、京たのさんに描いていただきました。

京たのさんのnoteはこちらです👇

作品を読んで、ことばを考える。
そのことばを、誰かが文字として描いてくれる。

それだけで、ただの感想だったものが、ほんとうに一枚の「帯」になったような気がしました。


今回読ませていただいたのは、なみあさむさんの作品。

『バナナを坂で転がせば』

応募部門は、恋愛小説部門です。

ひとこと紹介には、こうありました。

バナナが転がり、想いが削られる?!
恋×バナナ×坂!な青春物語です😌

この時点で、もう好きです。

恋。
バナナ。
坂。

恋愛小説の紹介文に、こんなに堂々と「バナナ」が入ってくることがありますか。

しかも、ただの小道具ではありません。
この物語では、バナナが転がります。
そして、想いが削られます。

なんて不思議で、なんてかわいくて、なんて切ない設定なのだろうと思いました。

物語の舞台には、「恋する坂」と呼ばれる場所があります。

黄色い物をその坂で転がせば、悲しさも寂しさも、転がした分だけ削ってくれる。

この設定が、まずとても素敵です。

恋の痛みを消すのではなく、削る。
全部なくなるわけではない。
でも、少しだけ軽くなるのかもしれない。

この「削る」という言葉の感触が、青春の恋にとても似合っていると思いました。

青春の恋は、まっすぐ進みそうで、なかなか進まない。
言えばいいのに、言えない。
近くにいるのに、届かない。
ずっと一緒にいたはずなのに、ある日ふと、距離が変わってしまう。

幼馴染という関係は、近いようで、いちばん難しいのかもしれません。

家が隣同士。
小さい頃から一緒。
知っていることが多すぎる。
だからこそ、言えないことも増えていく。

「好き」と言った瞬間に、これまでの関係が変わってしまうかもしれない。
でも、言わないままでいたら、別の未来へ進んでしまうかもしれない。

そのもどかしさが、この作品にはあります。

そして、そこにバナナが転がる。

この組み合わせが、本当にいいのです。

切ないだけではなく、どこか可笑しい。
可笑しいのに、ちゃんと胸がきゅっとする。

バナナという言葉の持つ明るさがあるから、恋の痛みが重くなりすぎない。
でも、明るいだけでは終わらない。

坂道を転がっていくバナナのように、想いもまた、自分の思った方向へは進んでくれません。

止めたいのに止まらない。
追いかけたいのに追いつけない。
削られていくものが、悲しさなのか、寂しさなのか、それとも言えなかった気持ちなのか。

読みながら、その行方が気になってしまいました。

この作品は、現時点ではまだ未完です。

だからこそ、今の段階で断言できないことがあります。

ふたりの想いがどこへ向かうのか。
恋する坂は、どこまでふたりの気持ちを削るのか。
削られた先に残るものは何なのか。

まだわからない。

でも、その「まだわからない」が、連載を追う楽しさでもあると思いました。

完結した作品を一気に読むよさもあります。
けれど、未完の作品には、未完の作品にしかない魅力があります。

登場人物たちと一緒に、途中の坂道に立っているような感じ。
まだ先が見えないまま、次の一話を待つ感じ。
この恋がどうなるのかを、読者も一緒に見守っているような感じ。

それは、創作大賞の季節に連載作品を読む楽しみのひとつなのかもしれません。

また、この作品には「青春」の空気がとてもあります。

卒業。
進路。
幼馴染。
変わらないと思っていた日々。
でも、少しずつ変わっていく関係。

高校を卒業したあとも、同じように続いていくと思っていた時間が、実は少しずつ別々の道へ分かれていく。

その時期特有の、まぶしさと不安。

大人になって振り返ると、あの頃の悩みは小さく見えることもあるかもしれません。
でも、そのときの本人たちにとっては、世界が変わるくらい大きなことだったりします。

好きな人と違う道へ進むこと。
会える時間が減ること。
相手の未来に、自分がどれくらい残れるのかわからないこと。

そういう不安を、物語は軽やかな設定に包みながら、ちゃんと描いているように感じました。

「恋×バナナ×坂」

この言葉だけを見ると、とてもポップです。
でも、その奥には、言えない想いと、すれ違いと、変わっていく季節があります。

だから私は、この作品の帯を考えるとき、バナナの可愛さだけではなく、青春のままならなさも入れたいと思いました。

ということで、私がこの作品に帯をつけるなら。


この帯をつけたいです。

バナナは坂を転がっていく。
想いもまた、まっすぐには届かない。

でも、転がった先に何があるのか。
削られたあとに、何が残るのか。

それを見届けたくなる青春恋愛小説でした。

なみあさむさん、素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございます。
続きを楽しみにしています。

そして帯のことばを素敵に描いてくださった京たのさんにも感謝を。

喜木 拝



紹介作品

なみあさむさん
『バナナを坂で転がせば』

応募部門:恋愛小説部門

帯の文字

京たのさん

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