わたしを10文字で名乗るなら。「本と娘と徒然なる司書」
「あなたを10文字で表すと?」
そう聞かれて、思わず笑ってしまった。
本と娘と夫と仕事。好きなものがぎゅうぎゅうに詰まった毎日は、とても10文字じゃ足りないから。
「だいたい」10文字で、名札をつくる
書く部さんの「30日書けるプログラム」のお題で綴っていて。
10文字で自分を表すなんて、ちょっとむずかしくて、
でも、ちょっとおもしろそうでもあって。
ノートを開いて、しばらくペン先を宙に浮かせていたら、
ふわっと浮かんできた言葉があります。
本と娘と徒然なる司書
数えてみたら、ぴったり10文字。
「(だいたい)」どころか、きっちりおさまってくれて、
ひとりで「おお〜」と小さくガッツポーズしました。
「本」と「娘」と「徒然なる司書」のあいだに
いちばん最初に浮かんだのは、やっぱり「本」です。
図書館で働く毎日は、
本棚と、カウンターと、利用者さんの「ありがとう」に囲まれています。
返却された本を棚に戻すときの、
紙とインクの匂い。
新刊の入った段ボール箱を開ける、ちょっとした緊張感。
「どんな本が好きなんですか?」と
ふと生まれるやりとり。
「本のある場所で働きたい」と願った昔のわたしが、
今のわたしを見たら、きっと少しだけ誇らしく思ってくれるはずです。
そこに、「娘」が重なります。
3歳の娘と過ごす毎日は、
予定どおりに進むようでいて、まったく予定どおりには進みません。
保育園からの帰り道に突然始まる寄り道コース。
「きょうのよみきかせは、これと、これと、これ!」と
寝る前にどっさり絵本を抱えてくる夜。
ダイニングテーブルの上には、
開きかけのノートとペンと、途中の紅茶。
その隣に並んでいく、娘のおままごとのお皿たち。
「書きたい気持ち」と
「今この瞬間を一緒に味わいたい気持ち」が、
毎日、小さくせめぎあって、
それでも最後は、たいてい娘の笑い声に負けてしまいます。
そして、最後に残した言葉が「徒然なる司書」。
古典の『徒然草』のように、
心に浮かんだことを、そのままそっと書きとめておきたい。
図書館での出来事や、
娘のふとしたひと言、
季節の移り変わりや、
夜更けのダイニングテーブルで思ったこと。
そんな「なんでもないけれど、わたしにとっては大事なこと」を、
つらつらと綴っている自分がいるからこそ、
本と娘と徒然なる司書。
という名札が、すとんと胸におさまったのだと思います。
司書であり、母であり、書く人でもある。
どれかひとつではなく、その全部がごちゃっと混ざったところに、
いまのわたしの「素」がある気がしています。
10文字に、入りきらなかったわたしと、そばにいる人
もちろん、「本と娘と徒然なる司書」だけでは
入りきらなかったわたしも、たくさんいます。
夜、家族が寝静まったあと、
ダイニングテーブルの片隅でnoteを書く「書く人」としてのわたし。
Xやnoteで、
だれかの文章にふっと救われる「ただの読者」としてのわたし。
疲れた日には、コンビニスイーツを前にして
「今日はごほうびデーにしよう」と決めてしまう、
ちょっと食いしん坊なわたしもいます。
そして、その少し横には、
いつもの暮らしをいっしょに回してくれている夫がいます。
うちの夫は、基本的にnoteの記事を読みません。
わたしがどんなタイトルで、どんな文章を書いているのか、
細かいところまではきっと知らない。
それでも、仕事で帰りが遅くなった日には
さっと洗い物を片づけてくれたり、
娘と遊びながら洗濯物をたたんでくれたり。
「記事、読んだよ」とは言わないけれど、
代わりに、家の中のいろんなことを一緒に抱えてくれている人です。
わたしが「今日はちょっと疲れたなあ」とこぼしたら、
「じゃあごはんは簡単なものでいいよ」と言ってくれること。
それだけで、またパソコンを開く元気が
少しだけ戻ってきたりもします。
10文字にギュッと絞るということは、
自分を削る作業というよりも、
削ってもなお残ってしまう“濃いところ”を見つける作業
なのかもしれません。
それがいまのわたしにとっては、
「本」と「娘」と「徒然なる司書」という言葉だったけれど、
その背景にはいつも、
家事や子育てを一緒に支えてくれている夫との日常があって、
ひとりではなく「わたしたち」で紡いできた毎日があるのです。
これからの10文字は、きっと変わっていく
今日のわたしは、
本と娘と徒然なる司書。
でも、1年後、5年後、10年後。
そのときのわたしは、また別の10文字で名乗っているかもしれません。
娘がもう少し大きくなったら、
「本と娘と語らう司書」になっているかもしれないし、
いつか本を出せたなら、
「本を書く司書」なんて名札をつけてみたい気もします。
10文字は、小さなタグのようなもの。
そこに何を書くかを考えることで、
「いまの自分」と「これからの自分」を
そっと見つめ直すきっかけになるかもしれませんね。
あなたの10文字も、こっそり知りたい
「あなたを10文字で表すと?」というお題に、
最初は少し身構えてしまったけれど、
書き終わるころには、不思議と心があたたかくなっていました。
ああ、わたしの毎日は、
本と娘と、そして“徒然”な言葉たちに囲まれているんだなあ。
そうあらためて気づく時間になったからです。
もしよかったら、
あなたの10文字も、こっそり教えてください。
仕事の顔での10文字。
家での顔での10文字。
夢見がちな10文字。
どれもきっと、その人の大事な一部なんだろうなあと思いながら、
今日もまた、ダイニングテーブルの片隅で、
ノートをひらいています。
喜木 拝

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