黄色は、憧れのままで。
結婚式のドレス選びは、思っていたよりずっと「自分を見つめる時間」だった。
純白のウェディングドレスを選ぶのは当たり前のように思っていたけれど、カラードレス選びは少しちがった。
わたしの中に、ずっとしまっていた「憧れ」が顔を出した。
黄色。
太陽みたいに明るくて、前向きで、まっすぐな色。
あの色を着ることは、ずっと遠くにある夢のようだった。
幼い頃から、ベルちゃんが大好きだった。
『美女と野獣』のあの舞踏会のシーン。
胸元のフリルがふわりと揺れる、あの黄色のドレス。
本が好きで、勇気があって、相手の心を信じる強さを持っていたベル。
「わたしも、あんなふうになれたら」
そう思い続けてきたのに、大人になるほど自分の“似合う”がわかってきて、
黄色はいつの間にか、“わたしには眩しすぎる色”になっていた。
でも、一生に一度のこの日なら――と、思いきって袖を通してみた。
フィッティングルームの鏡の中には、黄色のドレスを着たわたし。
ちょっとだけ勇気を出したわたし。
なのに、鏡の前で一歩、引いてしまった。
なんだか、ドレスに負けてる気がした。
胸を張るには、自信が足りなかった。
だから、選んだのは桜色のドレス。
やさしくて、やわらかくて、春の風みたいな色。
夫も「その色、すごく似合ってるね」と笑ってくれた。
それでよかった。
そう思っていた。
けれど、ずっと心のどこかで、
「本当は黄色を着てみたかったんだよな」と思い返す日があった。
そんなある日。
娘と歩いていた道の途中で、咲いているのを見つけた。
ひまわり。
真夏の空をまっすぐに見上げて、すっくと立っていた。
「ママ、あのお花、すき!」
娘が指をさして、うれしそうに言った。
「ママみたいだねぇ」
唐突に、そう言った。
「どうして?」と聞くと、娘はにっこりして、
「きいろくて、ニコニコしてるから!」と答えた。
思わず笑ってしまったけれど、ちょっと胸がじんとした。
もしかしたら、わたしが憧れていた“黄色”は、
ドレスじゃなくて、こういうことなのかもしれない。
誰かの視界にそっと灯る、あたたかい色。
まっすぐに立つ、やさしいひまわりのような。
黄色は、わたしにとって“似合う”じゃなくて、“なりたい”色だった。
そしてきっとこれからも、憧れのままでいい。
喜木 拝
三條 凛花さんのメンバーシップの課題で1000文字日記を綴りました。
お題は「憧れ」。
色がテーマなので、黄色について語りました。
日記のようなエッセイを書きたかったのですが、難しいですね。
ここまで、お読みいただきありがとうございます💖
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