マリッジブルーを蹴っ飛ばせ。ドレスの下には、スニーカーを履いて。#この作品に帯をつけるなら【創作大賞感想】
帯なので、いいことしか書きません。

創作大賞2026に応募されている作品に、私が読者として「帯」をつけるなら。
そんな気持ちで、感想を書かせていただく企画をしています。
そしてなんと、きょうたのさんとコラボさせていただけることに!!
私が考えた帯のことばを、きょうたのさんに描いていただきました。
きょうたのさんのnoteはこちらです👇
作品を読んで、ことばを考える。
そのことばを、誰かが文字として描いてくれる。
それだけで、ただの感想だったものが、ほんとうに一枚の「帯」になったような気がしました。
今回読ませていただいたのは、空原ゆにさんのエッセイ。
『PKを蹴った花嫁』
タイトルを見た瞬間、もう気になってしまいました。
PKを蹴った花嫁。
花嫁といえば、白いドレス。
ブーケ。
チャペル。
涙。
祝福。
拍手。
そんなイメージの中に、突然「PK」が入ってくる。
しかも、蹴ったのです。
花嫁が。
このタイトルだけで、もう「何があったの?」と読みたくなってしまいます。
けれど、この作品の魅力は、ただユニークな出来事が描かれているところだけではありません。
むしろ、その出来事にたどり着くまでの心の揺れが、とても印象的でした。
結婚が決まったら、幸せいっぱい。
そんなふうに思われがちですが、現実の結婚式準備は、きっとキラキラしたことばかりではありません。
決めることがたくさんある。
考えることがたくさんある。
周囲の期待もある。
「こうあるべき」という空気もある。
自分たちのためのはずの結婚式なのに、いつの間にか「ちゃんとしなければならないもの」になっていく。
その息苦しさが、このエッセイにはとても正直に描かれていました。
花嫁なのに、楽しみきれない。
幸せなはずなのに、不安になる。
準備を進めるほど、自分らしさが遠くなっていくような気がする。
その感覚は、結婚式に限らず、何か大きな節目を迎えるときの心に近いのかもしれません。
嬉しいことと、不安なこと。
幸せなことと、怖いこと。
楽しみなことと、逃げ出したいこと。
人の心には、いくつもの気持ちが同時に存在してしまう。
ゆにさんのエッセイは、その揺れを無理にきれいごとにしていないところが、とてもよかったです。
そして、この作品には「自分らしさを取り戻す」力があります。
誰かの理想の花嫁になるのではなく、
世間が思い描く結婚式をなぞるのでもなく、
自分たちらしい一日を、自分たちの手でつくっていく。
その過程が、読んでいてとてもまぶしかったです。
特に印象に残ったのは、花嫁という存在が、ただ「きれいに飾られる人」として描かれていないところです。
この作品の花嫁は、悩みます。
迷います。
落ち込みます。
でも、最後には自分の足で立とうとする。
その姿が、とてもいいのです。
ドレスを着る。
でも、ただ飾られるだけではない。
祝福される。
でも、自分を置き去りにはしない。
結婚式という大きな舞台の中で、ちゃんと「私」を取り戻していく。
そこに、このエッセイの強さを感じました。
タイトルにある「PK」は、とてもキャッチーです。
でも、読み終えると、それは単なる面白エピソードではなく、ひとつの象徴のように感じられます。
不安を蹴る。
思い込みを蹴る。
「こうしなければならない」を蹴る。
そして、自分たちらしい形へ向かって、一歩踏み出す。
そういう軽やかな強さが、この作品にはありました。
帯コピーを考えるとき、最初に浮かんだのは、
「マリッジブルーを蹴っ飛ばせ」
という言葉でした。
もう、この一文がとても強い。
明るくて、勢いがあって、作品の芯にぴったりです。
そこに、私はもう一文添えたくなりました。
ドレスの下には、スニーカーを履いて。
花嫁であることをやめるのではない。
ドレスを着ることを否定するのでもない。
でも、その下には、自分の足で立ち、自分らしく動ける靴を履いている。
その感じが、とてもこの作品らしいと思いました。
ということで、私がこの作品に帯をつけるなら。

この帯をつけたいです。
結婚式が楽しみじゃない日があってもいい。
花嫁らしく笑えない日があってもいい。
準備に疲れて、立ち止まってしまう日があってもいい。
それでも、自分らしい一日を探していくことはできる。
このエッセイは、そんなことを明るく、あたたかく、少しユーモラスに教えてくれる作品でした。
そして、読み終えたあとに、思わずこう感じてしまいます。
「ああ、この夫婦、いいなあ」と。
特別に完璧な夫婦、ということではなくて。
不安なときに、ちゃんと隣で一緒に考えてくれる人がいること。
笑える方向へ、ふたりで少しずつ舵を切っていけること。
その感じが、とても素敵でした。
「PKを蹴った花嫁」。
このタイトルの意味を、ぜひ本文で受け取ってほしいです。
ゆにさん、素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございます。
帯のことばを素敵に描いてくださった、きょうたのさんにも感謝を。
喜木 拝
紹介作品
空原ゆにさん
『PKを蹴った花嫁』
応募部門:エッセイ部門
帯の文字
きょうたのさん
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