クレイジーなのに、どうしてこんなにまぶしいんだ。#この作品に帯をつけるなら【創作大賞感想】
帯なので、いいことしか書きません。
創作大賞2026に応募されている作品に、私が読者として「帯」をつけるなら。
そんな気持ちで、感想を書かせていただく企画をしています。
そしてなんと、京たのさんとコラボさせていただけることに!!
私が考えた帯のことばを、京たのさんに描いていただきました。
京たのさんのnoteはこちらです👇
作品を読んで、ことばを考える。
そのことばを、誰かが文字として描いてくれる。
それだけで、ただの感想だったものが、ほんとうに一枚の「帯」になったような気がしました。
今回読ませていただいたのは、アルロンさんのエッセイ。
『限界オタク♂、推しアイドル♀のコスプレをして本人に会いに行く。』
応募部門は、エッセイ部門です。
タイトルを見た瞬間、思いました。
これは、絶対にただごとではない。
「限界オタク」
「推しアイドル」
「コスプレ」
「本人に会いに行く」
この単語の並びだけで、すでに情報量が多い。
しかも、タイトルの時点でオチまで見えているようで、まったく見えていない。
いったい、どうしてそうなったのか。
どんなテンションで会いに行ったのか。
そして、本人はどう反応したのか。
読み始める前から、もう完全に引き込まれていました。
この作品は、ひとことで言えば、かなりクレイジーな推し活エッセイです。
でも、読み終えたあとに残るのは、ただの「すごいことをした人がいる」という驚きだけではありませんでした。
むしろ、読めば読むほど、そこにあるのはとてもまっすぐな愛。
推しに喜んでほしい。
推しの誕生日を祝いたい。
ほかの人とは違う形で、全力の「好き」を届けたい。
その気持ちが、なぜか「推しのコスプレをして本人に会いに行く」という方向へ全力疾走してしまう。
冷静に考えれば、かなりの奇行です。
いや、かなりどころではないかもしれません。
でも、この作品のすごいところは、その奇行をちゃんと笑わせながら、最後には「いいなあ」と思わせてしまうところです。
読んでいるこちらは、何度も心の中でツッコミを入れます。
どうしてそうなった。
なぜそこまでした。
誰か止めてあげて。
でも同時に、思ってしまうのです。
そこまで誰かを好きになれることって、すごい。
そこまで誰かに喜んでほしいと思えることって、まぶしい。
このエッセイの魅力は、語り口の軽やかさ。
自分の行動を自分でツッコミながら、どこか誇らしげでもある。
恥ずかしさも、勢いも、後から振り返った冷静さも、全部まとめて文章の中に置いてある。
だから、読者は安心して笑える。
笑いながら読み進めていくうちに、少しずつ見えてくるものがあります。
それは、推しという存在が、その人の人生にどれほど深く入り込んでいたのかということ。
推しは、ただ眺める対象ではない。
会いに行くために動く理由であり、日々を明るくする光であり、ときには人生の記念日をつくってくれる存在でもある。
誰かを推すということは、ある意味で、自分の人生の一部をその人の輝きに預けることなのかもしれません。
この作品に出てくる推し活は、かなり振り切れています。
でも、その振り切れ方が、どこか清々しい。
「好き」を中途半端に隠さない。
「喜ばせたい」をちゃんと行動にする。
「どう思われるか」よりも、「推しが笑ってくれるか」を優先する。
その姿は、可笑しいのに、まぶしい。
今回、キャッチコピーにとても迷いました。
最初に浮かんだのは、
クレイジーなのに、
どうしてこんなにまぶしいんだ。
という言葉でした。
これは、読後感にとても近いです。
たしかにクレイジー。
どう考えても普通ではない。
でも、その普通ではなさの奥に、誰かを本気で好きでいる人の光がある。
この作品を読み終えたときの感情をそのまま言うなら、こちらのコピーがぴったりでした。
なので記事タイトルとして、使用しています。
けれど、もうひとつ浮かんだ言葉がありました。
それが、
これは奇行ではない。
愛が全力疾走した記録である。
こちらです。
この作品の行動だけを切り取れば、たしかに奇行に見えるかもしれません。
でも、文章を読み進めていくと、それだけでは片づけられなくなる。
これは、誰かを笑わせるためだけの話ではなく、
誰かを本気で好きになった人が、全力でその気持ちを形にしようとした記録なのだと。
愛が走り出してしまった。
誰も止められなかった。
本人すら、たぶん止められなかった。
その勢いごと、この作品の魅力です。
ということで、私がこの作品に帯をつけるなら。

この帯をつけたいです。
京たのさんに何パターンかいただいたのですが、「愛」がまっすぐ伝わるこちらを選ばせていただきました。
笑える。
かなり笑える。
でも、笑っているうちに、いつのまにか「推す」ことの尊さに触れている。
誰かを好きでいること。
その人に会いに行くこと。
その人に喜んでもらいたくて、自分なりの全力を尽くすこと。
それは、外から見れば少し変に見えるかもしれない。
でも、本人にとっては、人生を照らすほど大切なことだったりする。
このエッセイは、そのまぶしさを、全力で笑いに包んで届けてくれる作品です。
アルロンさん、素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございます。
そして帯のことばを素敵に描いてくださった京たのさんにも感謝を。
喜木 拝
紹介作品
アルロンさん
『限界オタク♂、推しアイドル♀のコスプレをして本人に会いに行く。』
帯の文字
京たのさん
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