雉と鴻鳥----------------------------------------❆ 野鳥写真・鷺・池 /2min ❆
いまの住まいに越した翌日のことである。
じりじりと蝉が鳴く夏だった。日が傾いているのに子どもたちを連れて公園に向かった。
住宅街のすきまにある小さな公園だ。
わたしはベンチに沈み込んだ。疲れた……。
2歳と5歳をつれての引っ越しのあと始末は、思いのほかたいへんだった。
憧れのマイホームを手に入れたわくわく感よりも疲労のほうが勝っていた。
「あれ、なに……?」
顔を上げると、娘が藪を指さしている。
がさがさと音がして出てきたのは、鳩よりも烏よりもずっと大きい、見慣れない鳥。鮮やかな色彩に息を呑む。
「まま、あれ孔雀?」
孔雀にしては小さすぎる。あれは……
「雉……?」
あれから数年が経った。
ひとりで通学するようになった娘が、雉は「レア」な鳥だと力説する。現にわたしもあれ以来お目にかかれていなかった。
つい先週のことだ。
息子と自転車を走らせていたら、目の前を茶色い地味な鳥が駆け抜けていった。
「雉……だ」

雌は地味な色
前に雉を見たとき2歳だった息子は、来年小学生になる。
「あれが雉? 桃太郎の?」
「ほら」
指さしたときには、道路の向こう側に雉の姿は消えていた。
また別な日。
息子を迎えに行くと、ため池に見慣れない白い鳥がいる。大きい。ふだんは池の王者である青鷺ですら小さく見える。
細い首や長いくちばしがサギ科の鳥にも似ているけれど、真っ黒な鋭いくちばしと、羽の先を縁取る漆黒が印象的だ。
息子の友だちは「鶴がおる!」と叫んだ。

前に一度だけ見たことがある。鴻鳥だ……! 背の高さは、110~120cm程度。息子と変わらぬ大きさをしている。
これまでの人生で見た野鳥のなかでも、圧倒的に大きい。
わたしたちは、ため池のそばにそっと近寄った。水鳥は警戒心が強い。人が近づくとすぐに飛び立ってしまうのだ。幸いそのままじっくり観察できた。
鴻鳥は、国の特別天然記念物。
1971年に野生のものは絶滅していた。
野生復帰を目指し、兵庫県豊岡市で人工飼育された5羽が、世界初の試験放鳥されたのは今から20年前──2005年のことだという。2016年の時点で、鴻鳥は青森から沖縄までで確認されている。
地元では見た記憶がない。
わたしが住んでいたころにはいなかったのだろう。
雉を見たときもうれしかったけれど、鴻鳥はまた違った感動がある。水辺に凛と立つ姿はうつくしく、優美だ。
世界にはまだまだ知らない生きものがたくさんいて、見つけるたびにわくわくしている。



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