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冬色の交換日記が溶けた日

空の色が冬だった。ごくごく薄い水色。
今にも雪が降りそう。

個人懇談の時間が迫る中、わたしは長めのコートにふわふわのファーティペットを巻いて、自転車に乗っていた。ペダルを漕ぐたびに、耳元でしゃらりとイヤリングが揺れる。



小学校に着いた。
ドアの上にある「2-2」の看板を見たとき、一気に過去に引き戻された。

わたしも2年2組だった。


* * * * *


ランドセルから鮮やかなピンク色のキャンパスノートを取り出した彼女は、そっけない感じでわたしに押しつけた。
うれしくなってその場で開き、固まった。


「リンカちゃん、交換日記しようよ」

誘ってくれたのは彼女だった。小さく整った文字でびっしり書かれ、イラストも添えられた彼女の”番”は、とても読み応えがあった。

内容が変わってきたのは、いつからだったのだろう。


ある日、戻ってきたノートを開いて、虚しくなった。

書かれていたのは「好きな友だちランキング」。どこにもわたしの名前はない。1位にその子の名前を書いて戻した。


別な日。
わたしは、彼女の「好きなところランキング」を書いた。
性格や特技から美点を探し、その中で3つに絞るためにとても迷った記憶がある。

返ってきたのは「リンカちゃんの嫌いなところランキング」だった。わたしの性格へのダメ出しがつらつらと、綴られていた。


彼女と縁が切れたのは高校生の冬。
バスで隣に座ってきたかと思うと、自慢と否定をくり返す。同じバス停で降りてから、はじめて言い返した。

彼女はみるみる真っ赤になった。そうして逃げていった。
雪に残った足あとを見て脱力した。煮た大根みたいな透明度で、泥にまみれていた。

数年後、帰省中に彼女と母親が買いものをしているところに出くわした。彼女は、怯えた表情で母親の影に隠れた。こちらが加害者のようで腑に落ちなかった。


* * * * *


先生は娘を手放しで褒めてくれた。

「特にすごいと思ったのは、よくないことを、言葉を選びながらやわらかく伝えるんです。諦めずに、伝わるまで」


* * * * *


家に着くと、テーブルの上に交換日記が置いてあった。

娘のためにデザインしたものだ。

「ママはかわいくてやさしいね! りょうりもおいしいよ。いつもありがとう」

そんな言葉が綴られていた。

もしわたしが2年生のとき、娘がクラスにいたら仲良くなれただろうか。きっと友だちになれた。

誰も書いてくれなかったわたしの”好きなところ”を見て、泣きそうになった。



(1,000字)

▼交換日記。PDF版は一番したへ。


1,000文字ぴったりの文章を楽しむ遊びをしている。ちょうどになるように磨いていく作業が好きで、楽しい。


今回はちょっと悲しい思い出を書いてみた。

2年生のときの傷を、いま2年生の娘が埋めてくれた出来事。


娘は家だとよく癇癪を起こしたりするので「学校の姿は違うから、いい子にしてるんだから。先生には教えないでよ」と念押しされていた。

まあ、ママも家での姿と外での姿があるしなあ、などと思いながら、微笑ましく思っている。


「学校での姿の娘」と「外での姿のわたし」ならきっと、すごくいい友だちになれる。


出会う人には、なるべくポジティブで優しい言葉を伝えたいと思っている。そう思ったのはやっぱり、このときの悲しさが影響しているのかも。

記事では省いたけれど覚えていることがある。


彼女は、わたしにこう言ったのだ。

「リンカちゃんはさ、好きなところランキングを書いてほしくて、やってるんでしょ。わかってるからね? あたし、リンカちゃんのそういうところが嫌い」

にこにこしながら。

結構刺された。


そのために書いたわけじゃない。純粋にテーマを考えて、彼女の美点を厳選したつもりだった。

でも、わたしのことも書いてくれたらうれしいな、とは思っていた。
それは、いけないことだったのだろうか。

大人になってもわからない。


ふたりきりの交換ノート、彼女はどうして始めたんだろうな。



それでもわたしは、優しい世界のほうが好きだ。

娘だけじゃなくて、今年出会ったママ友たちが、あるいはnoterさんたちが、たくさんわたしのいいところを見つけてほめてくれて、とても救われた一年だった。

わたしも好きな人に、好きなところを具体的に伝えていきたい。



▼PDFはこちら。A4両面印刷推奨です。

※今回の交換ノートは小学生と親を想定。幼稚園時代は ↓これを使ってたんだけど、物足りなくなってきたみたい。



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三條 凛花 最後までお読みいただき、ありがとうございます♡