日記 │ カラスを召喚された話
昨日、妙な日記を書いた。
日記なので、実話である。もしもあの宇宙旅行者(あるいは俳優や声優の卵、創作者かもしれない)が目にした場合に備えて、細かい部分を変えたり演出は加えているけれど、──まぎれもなく実話なのである。
きょうは、違う時代、違う場所で起こった出来事について話したいと思う。
季節はきっと、今と同じくらい。
くもり空の日だったことをよく覚えている。
わたしは友人といっしょに、遊歩道を歩いていた。
漫画の話だとか、ちょっとした愚痴だとか、他愛のないことを話していた。
両側を木に囲まれた遊歩道をのろのろと歩いていると、前から60代くらいの、深く帽子をかぶった男性がやってきた。目の端でそれは見えていたけれど、とくに気に留めることなくおしゃべりを続けていると、男性が、わたしたちの目の前で足を止めた。
わたしは身構えた。危険なにおいがした。
男性は、マスクをほんの少しずらして、空を指さした。
※なお、コロナのコの字も出ないような時代の話だと付け加えておく。
その指の動きにつられるように、わたしたちは空を仰いだ。すると、彼は、言ったのだ。
「俺は、カラスと話せるんだ」
何の、話ですか……?
困惑してフリーズするわたしとは裏腹に、友人は「スゴイデスネ」と片言でいい、先に進もうとした。男性がこちらに向き直る。ばくばくする心臓を押さえながら、わたしは後退りした。
「本当だ! やってみるぞ!」
「え……?」
すると男性は、マスクを完全にずらし、口の横に手を添えた。ちょうど、遠くにいる誰かを呼ぶときのように。
「カアーッ!!カアーッ!!
ア゛ーーーーーーーッ!!!!!」
彼の叫びは、長く尾を引くように木霊した。
ちょうどそのとき、近くの木から、バサバサッと羽ばたく音がした。驚いて見上げると、二羽のカラスが飛び上がっていた。
白いミルキーな空に、カラスのコントラストが映えていた。だから、この日の天気を覚えているのである。
「ほら見ろ!!!!!」
そのときわたしの頭のなかには「君をのせて」が流れ出した。
目の前の男性は、『天空の城ラピュタ』の中で、ついにラピュタにたどり着いたときのムスカのような誇らしさを滲ませながら、わたしたちにじりじりと迫ってきたのだ。
「俺は、カラスを呼んだ! 呼んだんだ!」
彼はふたたびくり返した。
友人もまた「スゴイデスネ」と片言でくり返した。友人に袖を引かれ、わたしたちはこそこそとその場を立ち去った。
遊歩道にはいつまでも彼の笑い声が響き渡っていた。
痩せるために2時間ほど運動をした帰り道だったわたしたちは、先ほどの現象について語り合いたかったので、ステーキ定食を食べに寄り道するはめになってしまったのだった。
あとがき
毎日更新4,000日まで、あと80日を切りました。
がんばりたいのだけれど、公募にも挑戦中で時間がありません。
そこで、過去にあったしょうもない話ばかりですが、日記として出してみています。
いつか、なにかの創作の種になるかもしれません。
昨日の「水星への移動を禁止された話」については、似た事例に遭遇した方々からのコメントも(Xで)いただくなどしました。
しばらくは日記が続きそうです。
今日は午前中、これまで書いたなかでもいちばん怖いのでは(自分比)と思うサイコホラーに挑戦していました。途中で片づけコラムを2本。夜になってこのカラス召喚日記を……。
このあとふたたびサイコホラーに戻るわけで、頭のなかのスイッチ切り替えのむずかしさを感じています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございます♡