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10年使われるハッシュタグ「#1h3q」。その正体は時間を貯める魔法だった

10年前の秋のこと。

わたしは、とにかく時間に追われていた。
ミニマリストになる必要があったのだ。
そのためにある投稿をした。

この投稿が、わたしの生活を大きく変え、そして、当時生み出したハッシュタグ「#1h3q」は、今でも使われている──。


ものに溢れた部屋から(一時的な)ミニマリストへ


当時のわたしは、入院するほどの悪阻つわりからようやく解放されたところだった。

そうして直面したのは、暮らし方の問題。


13.5畳の1DK──といっても、ほとんどワンルームのような間取りだった。うちにはすでに2匹の猫がおり、ここで子どもを育てていくのは現実的ではないように思えた。

都内で、猫が飼える物件。それでいて子育てができる環境。

引っ越し先を探してみたものの、今でさえ限界の家賃を支払っているのに、最低でも家賃を月額3万ほど上げなければ希望の物件には住めそうになかった。


そこでわたしが目をつけたのは、一人暮らしをはじめたころに読んだ雑誌で知った、原状回復ができるリフォーム。

夫と相談し、決断した。
数十万かかったものの、引っ越しをしてそのまま数年暮らした場合のシミュレーションをしたところ、80万ほど安く済んだ。


引っ越さずにまる1日でリフォームをしてもらう。
そのためには、一時的にミニマリストになる必要があったのだ。

家じゅうのものを、処分したり、どうしても捨てたくない大切なもの(おもに書籍や漫画)は実家に送ったり……。部屋をからっぽにしなければならなかった。


夫は当時、毎日終電で帰ってくる日々。
わたしひとりでやるしかなかった。

妊娠中期のふくらんできたおなかを抱えながら、一生けんめい動いていた。

やることが多すぎて、頭のなかもぐちゃぐちゃ。
悪阻がひどすぎて痩せて体力も落ちていたので、心が折れそうだった。


そんなとき、わたしはTwitterに書き込むことで乗り切っていた。
誰も見ていないかもしれない。けれども、誰でもアクセスできる場にやるべきことを書きこむことで、なんとなく背すじが伸びる感じがあった。

※10年前のはなしなので、この記事ではXではなくTwitterとして書いていく。



スリークエストが生まれた日


Twitterで日々のタスクをつぶやくのが習慣になりつつあったある日のこと。

区切りの時間を決め、頭のなかにあったものを3つだけ選んで動いてみた。そのときの実際のツイートがこちら。

ポイントは、ツイートした時間が「9:36」であること。
1時間で行なうのではなく、「今」を軸にして、次のキリのいい時間を〆切として設定する。


そして30分後のツイートも紹介する。

予定していたものがすべて完了した。
気をよくしたわたしは、このやることを「クエスト」と名づけて、1時間ごとに投稿していった。

クエストの本来の意味は、「冒険」「探求」といったものだ。だから、ゲームをあまりしない人からすると耳馴染みがないかもしれない。

もともとゲーマーだったわたしにとって、クエストというのは、ゲームを進めるために必要なタスク(ToDo)だった。でもタスクというより、クエストのほうが楽しそうな気がして、このワードを選んだ。


ひとりで毎日発信していたのに、気づくとみんながいた。


翌日には「1時間スリークエスト方式」という仮タイトルが生まれた。長いので、短めのハッシュタグもつくった。

#1h3q

読み方は「わん・えいち・さん・きゅー」。


「1h」は「1hour(1時間)」
「3q」は「3quest(3つのクエスト)」

1時間スリークエスト方式


はじめは一人だった。

別にさみしくはなかった。とにかくミニマリストにならなければいけない。その焦りに突き動かされていた。


1週間ほど経ったころだろうか。

「凛花さんのスリクエを見てたら、家事がはかどりました」

こんなDMやリプをいただくようになる。

ひとりでやるだけでも捗ったけれど、誰かの声があるとうれしくなった。

だって、家事なんて「やって当たり前」のものなのだ。
それなのに、その当たり前のことをがんばっただけなのに、ほめてくれる人が出てきた。

ずっとできない自分を責めていたのに、心があたたかくなった。
わたしも他の人を全力でほめるようになった。調子に乗って、どんどん投稿していった。


数週間続けるうちに、ひとり、またひとりと、ほかのフォロワーさんがタグをつけて投稿してくれるようになっていった。

はじまりはわたし一人だったけれど、スリークエストはさまざまな人の知恵で、どんどんブラッシュアップされていく。

やがて、アカウント名やプロフィールに「1h3q」や「スリクエ」と入れてくれる人まで出てきて、うれしい驚きに震えた。


「子どもにスリクエを進めたんです。受験が近くて。勉強、すごく捗っていました!」

そんなDMもいただいた。そうか、家事だけじゃなく、いろいろなシーンで使えるのかもしれない。
わたしも家事や雑務だけじゃなく、仕事や執筆に取り入れていった。

気がつくと、ひとつのコミュニティのようになっていた。


▼10年も前の記事なので、もうTwitterをやめてしまった方もほとんど。

Twitterを開くと、誰かががんばっている。
疲れてだらだらしようと思って開いたSNSで、逆にやる気をもらう。ハッシュタグ「#1h3q」をつけて、3つだけやることを選んで、ツイートボタンをタップ。

スマホを置いて、立ち上がった──。


スリークエストとは、なんだったのか


ここまで読んでみて、スリークエストをやってみたいと思った方がいたら、うれしい。一応、やり方も書いておきたいと思う。

上に書いたように、わたしが考えたものを、いろいろな人が、自由にアレンジして楽しんでいったものだ。
だから、「必ずこうやること!」というような決まりはない。

でも、誰でも取り組みやすいように「まずはこれでやってみて」という基本ルールがある。

ひとことでいうと「決める」→「動く」→「振り返る」の3ステップだ。

1.決める

まずは時計をチェックすることからスタート。

次の正時を確認し、やることを3つ決める。
正時というのは、「15:00」「16:00」などのキリのいい時間帯のことを指す。

自由に決めることができるけれど、できれば、次の正時までに終わりそうなことだと最高。一度やり切ると、達成感がどんどん溜まっていく。それによってどんどん動けるようになるのだ。


2.動く

決めたことを念じるような気持ちで動く。とにかく動くことに集中する。このとき、決めた内容を思い出せない人は、絵文字を活用するのもおすすめ。

絵文字なら頭に残りやすい。
もしずれてしまっても、動き出しただけで花丸。


3.振り返る

3つが終わったタイミング(あるいは疲れたとき)で、休憩しながらできたことを振り返ってみる。
これを「できたこと探し」と呼んでいる。
決めた「3つ」以外に、どんな小さなことでもいいからできていたら、最高がすぎる。


スリークエスト実例

それでは、ここからは実例を紹介していく。

ある日の午前11時台のツイート。

持ち時間は1時間ある。状態はよくない。とにかくねむかった日。こういうときは、「換気」のように手軽で立ち上がる作業からはじめると切り替えスイッチになっておすすめ。
スリークエストで行なうのは家事や仕事だけじゃない。「漢方を飲む」「水分補給」のようなささやかなことも入れてOK。


こちらはある日の朝の事例。

こんなふうに、3つ目のタスクは「◯◯スタート」というふうにすると便利。「時間内に終わらなくてもいい」という安心感があって、すすめやすい。

「時間内に終わる」ように設計するのがポイント。もちろん終わらなくてもいいのだけれど、終われば終わるほど「達成感」がたまっていく。それがやる気をどんどん連鎖していくのだ。



この日は持ち時間がたったの5分しかなかった。

でも大丈夫。スリークエストは「あと5分」「あと3分」のような、短い時間でも効果を発揮する。だって、何もやらずにだらだらする5分と、やった5分とでは大きく違う。

子どもが生まれる前のわたしは、ゲームをやめることができなかった。そういうとき、お手洗いに立ったタイミングでスリークエストをやることがあった。

3つだけならがんばれる。そう思って、窓を開けて、テーブルをリセットして、シンクに洗い物を下げる。動き出すとふしぎとやる気が湧いてくる。どんどん動ける。

活用法やアレンジはいくらでもあるのだけれど、今回はさらっと紹介してみた。


わざわざ3つ選ぶことには、メリットがたくさんある


スリークエストをやっていると、たまに「事前に考えないと動けないのだろうか」といった辛辣な言葉をかけられることがある。

もちろん、考えなくても動くことはできる。

でも、3つ選ぶと「集中」の速さと深さが変わってくるのだ。

さらに3つだけならタスクを忘れにくいというのもある。タイムリミットをつくることで焦りが生まれ、自然と動くスピードそのものが速くなる。

とはいえ、考えることすら面倒なときもあって、そういうときはなにも考えずに動くのも全然良い方法だと思う。わたしもそうしている。

スリークエストというやり方に縛られるのではなくて、たくさんの時間の使い方バリエーションを持っておくのが良いとわたしは思っていて。

そうして、いまの自分の状態に合わせて使い分けていく。状態を見て、それに合わせたポーションを調合していくようなイメージで。

このゲームの主人公は自分自身なので、ルールは自分でどんどんアレンジしたってよいのだ。

いつやめたっていいし、いつからでも再開できる。
これがスリークエストの魅力だと思っていて、わたしも1ヵ月ぶりにやってみたりすることが全然あるのだ。


なにもしたくない。動けない。
そういうときの”武器”のひとつとして、頭のなかにとどめておいてもらえたらうれしい。


▼その後、無事にミニマリスト部屋が完成。


上が片づけ前。
下が片づけ後。


▼リフォームも完了。

硝子仕切りを外し、部屋の中央を本棚で仕切った。
これで夜に夫が帰ってきても
子どもが寝ているところは暗い状態に。
ものすごくかわいくしてもらった!

▼その後、東京を離れて四国に移住。現在の住まいについてはこちら。




なにも思いつかないあなたのための、とりあえず10クエ


最後に、なにも思いつかないというあなたのために、やる気がでる10個のクエストを紹介する。
困ったらここから3つ選ぶだけで大丈夫。

1.とりあえず立つ
2.水分補給
3.換気
4.メールチェック(5分厳守)
5.財布の中身を全部出す
6.ToDo洗い出し(5分厳守)
7.目の前のものを3つ片づける
8.シャワーを浴びる
9.テレビを消す
10. タイマーをセットする

▼時間術の本を商業出版しています。


スリークエスト2025


スリークエストは10年経ったいまでも使われている。

LINEオープンチャットにつくった、家事についてリアルタイムで話せるグループの中で。ここでは、挨拶も不要で、ただみんなが淡々とスリークエストや、似たアイディアとして生まれた「リミット15」という試みに取り組む。

たまにスタンプを押したり、ほめたり、情報交換をしたり……。わたしが積極的に呼びかけなくても、いろんな人が、好きなタイミングでスリクエに挑戦できる場が整っている。

これは、わたしが思い描いた理想の形だった。


Twitterでスリクエをやっていたころ、いろんな人に言われた。

「凛花さんが頑張っているのをみたら、やろうと思えたんです」と。

逆のパターンだってあった。ほかの人たちがタグをつけて投稿したものが視界に飛び込んでくる。すると、日本のどこかで誰かががんばっていることがわかり、わたしはソファから立ち上がることができた。

3つだけならできそう。やってみよう。

最近、「凛花さんだけ時間の流れが違う気がする」と言われることがあるのだけれど、もしもそうだとしたら、このスリークエストの積み重ねが大きいのではと思う。

たとえばだらだらする前に3つだけやることを終わらせたとする。なにもやらずにだらだらした人と比べると、3歩先に進んだことになる。これを繰り返していくと、1ヵ月で30歩も進むことができるのだ。
なにもやらなかった自分の人生と比べると、大きな差だと思う。


だからわたしは今日も時計を見る。
いまから次の正時まで──次は、なにをしよう。


#創作大賞
#ビジネス部門



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三條 凛花 最後までお読みいただき、ありがとうございます♡

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