考え方の自由とは?について考える
わたしたちは、人生という名のスーパーマーケットで、いつも何かを選び続けています。
どの洗剤が一番汚れが落ちるのか、どの野菜が新鮮なのか。
そんな日々の選択と同じように、どんな考え方を自分のカートに入れるのか、無意識のうちに決めているようです。
隣の人が手に取ったから、テレビが「これが新常識!」と叫んでいるから。
そんな理由で選んだ考え方が、自分の人生という料理を、本当に美味しくしてくれるのでしょうか。
どうも、そう単純な話ではないようです。
✅正解があるという神話を崩せ
かつてのわたしにとっての「正解」は、父でした。
家にはいつもアルコールの匂いが立ちこめ、母のすすり泣きが聞こえ、きょうだいと顔を見合わせては息を潜める。
そんな毎日が、わたしにとっての「家族の正解」であり、「世の中の当たり前」でした。
疑うことすら知らなかったのです。
だって、それしか知らなかったのですから。
まるで、生まれたときからずっとモノクロのテレビだけを見て育った子供のように。
その長年信じてきた神話が、ガラガラと音を立てて崩れ落ちたのは、妻との出会いでした。
彼女の実家で目にした光景は、まさにカルチャーショック。
妻が、自分のお父さんと、まるで友達のように冗談を言い合い、屈託なく笑っているのです。
そこには、緊張も、恐怖も、諦めもありませんでした。
わたしが「正解」だと思い込んでいたモノクロの世界とは似ても似つかない、鮮やかな総天然色の家族がそこにはありました。
その瞬間、雷に打たれたように悟ったのです。
ああ、正解なんてものは、一つじゃなかったんだ、と。
わたしがいた世界が、たまたま少し特殊なチャンネルだっただけなのだ、と。
物事の正解は、自分が立つ場所や、誰と一緒にいるかで、いとも簡単に姿を変えます。
会社では「正解」とされる仕事の進め方が、家庭に持ち帰れば大間違いになることなんて日常茶飯事。
ワンオペで育児をしていた頃なんて、世の中の「理想の父親像」なんていう神話を信じていたら、とっくの昔にショートしていました。
猫の手も借りたいのに、我が家の3匹のオス猫たちは、わたしの焦りをよそに日向で伸びをしているだけ。
そんな彼らを見ていると、「まあ、いっか」と思えてくる。
これもまた、ひとつの正解なのでしょう。
✅どこにでも考え方を置ける生き方をする
「正解」の神話が崩れたからといって、すぐに楽になれたわけではありません。
むしろ、羅針盤を失った船のように、どこへ進めばいいのか分からなくなりました。
そんなわたしに、人生はさらなる揺さぶりをかけてきます。
バセドウ病、うつ病、そしてパニック障害。
特に、いつ呼吸ができなくなるか分からないパニック障害の恐怖は、筆舌に尽くしがたいものでした。
健康こそが「正解」だと信じていたのに、その土台すらも崩れ去ったのです。
もがき苦しむ中で、わたしはまるで溺れる者が藁をつかむように、心の仕組みに関する本を読み漁り、カウンセリングの扉を叩きました。
そこで学んだのは、ひとつの考え方に固執することが、どれほど自分を縛りつけるか、ということでした。
それはまるで、サイズの合わなくなった服を、律儀に着続けているようなものです。
「男はこうあるべきだ」「父親はこうでなければならない」「病気は気合で治すものだ」。
そんな窮屈な服を一枚、また一枚と脱ぎ捨てていく。
すると、驚くほど体が軽くなるのを感じました。
妻が仕事の夢を追いかけて単身赴任を決めたとき、わたしが「主夫」という新しい服に袖を通すことに、何の迷いもありませんでした。
世間の目や古い価値観なんて、もうどうでもよかった。
目の前にいる子供たちと、要介護の義母と、自由気ままな猫3匹との暮らしを守る。
それが、その時点でのわたしにとって、最も心地の良い「考え方」だったのです。
もちろん、その服も万能ではありません。
子供が成長し、状況が変われば、また違う考え方がしっくりくるようになるでしょう。
大切なのは、信じていることに少しでも「あれ?」という違和感を覚えたら、ためらわずに別の考え方を試着してみる勇気。
クローゼットには、たくさんの選択肢を用意しておく。
そんな、身軽で柔軟な生き方を、わたしは心から願っています。
✅まとめ
結局のところ、「考え方の自由」とは、どんな状況でも揺るがない「絶対の正解」を見つけることではないのでしょう。
それはむしろ、自分だけのオーダーメイドの「考え方」を、人生の時々に応じて、自分で仕立て直していく力のことなのかもしれません。
かつて、病と生きづらさのどん底で、「もうダメだ」と思ったことも一度や二度ではありません。
しかし、考え方ひとつで、世界は色を変える。
あなたのその苦しみも、考え方という名のメガネを掛け替えるだけで、少しだけ、ほんの少しだけ、楽になるかもしれない。
人生という名のスーパーマーケットで、どうかあなただけのカートを、あなた自身が心地よいと感じるもので満たしてあげてください。
たとえそれが、他の誰かのカートとは、まったく違う中身だったとしても。
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