夏の日、雷鳴。
今年もお盆がやってきた。
こちら、短編小説です。
供養のためにchatGPTに書いて貰いました。
昼過ぎから、空が何度も光っていた。
そのたびに少し遅れて、腹の底まで響くような雷鳴がくる。雨は窓を叩きつけ、庭の木は風に煽られて、葉の裏側ばかりを見せていた。
悠人はソファに寝転んだまま、スマホの雨雲レーダーを眺めていた。
真っ赤だった。
「今日じゃなくてもいいだろ」
口にしてから、今日じゃなきゃ駄目なんだよな、と自分で答えた。
お盆だった。
毎年、母と一緒に墓へ行く。今年は母が朝から腰を痛めていて、雨もひどいから家にいると言った。
「別に無理して行かなくてもいいんじゃない?」
母はそう言ったけれど、悠人は曖昧に返事をした。
面倒ではあった。
こんな雨の日に墓地へ行くなんて馬鹿みたいだと思う。花を買って、線香を持って、濡れた坂道を歩くことを考えただけで嫌になる。
それでも、行かないという選択肢はなかった。
迎えに行きたかった。
夕方近くになって、雨が少し弱くなった。
スマホを見ると、次の雨雲まで三十分ほど空いている。
「今しかないか」
悠人は立ち上がった。
スーパーで白と黄色の花を買った。ついでにアップルパイもカゴへ入れた。
妹が昔、よく食べていたやつだ。
墓地に着くと、駐車場には誰もいなかった。
空はまだ暗く、遠くで低い雷が鳴っている。木々から落ちる雨粒のせいで、雨が止んだのかどうかもよくわからなかった。
濡れた石畳を歩いて、悠人は妹の墓まで行った。
そこに妹がいた。
墓石の横に立って、黒縁の眼鏡の奥から呆れたようにこちらを見ている。長い髪はひとつに結んでいた。
「こんな日によく来たね」
「久々じゃん」
「いや、久々じゃんじゃなくて。雷鳴ってるよ」
「知ってる」
悠人は花束を差し出した。
「花、やる」
妹は手を出さなかった。
「花瓶に入れてよ。私もてないし」
「ああ」
「忘れてたでしょ?」
「ちょっとな」
「毎年言ってる気がする」
悠人は花立てを抜き、水道まで歩いた。
戻ってくると、妹は墓石の脇にしゃがみ込んで、蟻を見ていた。
「何してんの」
「蟻」
「見ればわかる」
「雨の日も働くんだなと思って」
「お前も暇だな」
「死んでるからね」
さらっと言って、妹は笑った。
笑うと、いつも少しだけ泣きそうな顔になる。
昔からそうだった。
嬉しいときも、くだらないことで笑っているときも、目元だけを見ると今にも泣きそうだった。
悠人はその顔を見ながら、花立てに花を入れた。
白い花が一本だけ飛び出した。
「長い」
妹が言った。
「じゃあ切れよ」
「私もてないし」
「便利だな、お前」
「いいでしょ」
遠くでまた雷が鳴った。
妹が空を見る。
「そろそろ帰ったほうがいいよ」
「そうだな」
「また土砂降りになるよ」
悠人はポケットからスマホを出した。雨雲がこちらへ近づいていた。
「じゃあ帰るわ」
「うん」
「ちゃんと来いよ」
妹が首を傾げる。
「どこに?」
「うち」
「ああ」
まるで今夜遊びに来いと言われたみたいに、妹は笑った。
「行く行く」
悠人は傘を開いた。
数歩歩いてから振り返ると、妹は墓石の横で手を振っていた。
悠人も片手を上げた。
「じゃあな」
「ばいばい」
その場では、それで別れた。
帰り道はまた雨になった。
フロントガラスを水が流れ、ワイパーが何度も景色を消していく。
家に着くと、母が仏壇の前を片付けていた。
「濡れたでしょ」
「ちょっと」
悠人は買ってきたアップルパイを箱から出し、小さな皿に乗せた。
「それ買ってきたの?」
「うん」
「好きだったもんね」
悠人は返事をしながら、仏壇にアップルパイを供えた。
外はまだ雨だったけれど、雷はもう遠くなっていた。
少し待つと、雨も弱くなった。
母と二人で庭へ出た。
濡れた地面の上に焙烙を置き、麻がらに火をつける。
最初は煙ばかりだった。
やがて小さな炎が立ち上がった。
雨上がりの湿った空気の中で、頼りない火が揺れている。
母が炎を見ながら言った。
「迷わずに帰ってくるかな」
悠人は、墓地で妹が笑った顔を思い出した。
行く行く、と軽く言った声も。
たぶん大丈夫だろうと思った。
あいつは道を間違えても、そのうち普通の顔をして帰ってくる。
炎が一度だけ大きく揺れた。
悠人は家のほうを見た。
仏壇にはアップルパイが置いてある。
今年も、ちゃんと迎えに行った。
「おかえり。今年もゆっくりしていけよ」
線香の煙が揺らめいた。

