日本人学生がインド工科大学ボンベイ校(IIT Bombay)の大学院に入学するまで

2025年の冬、自分の作ったインタラクティブ作品を、インドの陸軍参謀長に体験してもらった。

肩章のついた軍服を着た将軍が、僕のインスタレーションの前に立って、画面を覗き込んでいた。場所はIIT Bombay(インド工科大学ボンベイ校)のキャンパス。

「こんな展開、誰が想像していただろう」と思いながら、横でその様子を眺めていた。

なぜ日本人の自分がここにいるのか。少し話させてください。



自己紹介

藤田 麟太郎(ふじた・りんたろう)といいます。

京都精華大学のメディア表現学部を2025年3月に卒業し、現在はインド・ムンバイにあるIIT BombayのIDC School of Designで、デザインの修士課程に在籍しています。

IDCはIIT Bombayの中にあるデザイン専門の学部です。IITといえば工学・理系のイメージが強いですが、インダストリアルデザイン、インタラクションデザイン、ビジュアルコミュニケーションなど「つくること」に関わる分野を横断的に研究できる場所で、インドのデザイン界では知名度が高く、国内外から優秀な学生・研究者が集まっています。

研究もするし、メディアアートの制作もしている。どっちが本業かは自分でもよくわかっていません。WIRED Japan主催の「CREATIVE HACK AWARD 2024」ファイナリスト、Siggraph Asia 2024 アートギャラリー出展、アジアデジタルアート大賞FUKUOKA 2025受賞など、制作の記録が少しずつ積み重なってきています。


IITに来た理由、正直に言うと

かっこいい動機があったら格好いいのですが、最初のきっかけは割と偶然の積み重ねでした。

大学在学中にインドを訪れる機会があり、そこで「IIT」という大学の名前を初めて知りました。GoogleやX(旧Twitter)、IBMのCEOを輩出した、インドの理系最高峰。ただ、理系の大学だと思っていたので、最初は自分とは縁のない話だと思っていた。

ところが、「IIT BombayにはIDCというデザイン学部がある」 ということを知り、さらに 「京都精華大学となぜかMOU(協定)を結んでいる」 ということまで知った。

「……行けるんじゃないか?」

その時は本当に淡い期待でした。2023年のことです。

交換留学、Siggraph、そして大学院へ

2024年7月、IIT Bombayへの交換留学という形で来ることができた。

キャンパスに足を踏み入れた瞬間の感覚は今でも覚えています。緑が多くて、広くて、どこかのんびりしていて——「世界最難関の理系大学」という先入観とは全然違った。

半年間の終わり、最終プレゼンテーションを終えた後に「修士も考えている」と話したら、「じゃあ来てよ」という流れになった。それが出願を決めた瞬間だった。

同じ12月、在学中に制作した作品がSiggraph Asia 2024のアートギャラリーに採択されていたため、東京へ飛んだ。Siggraphはコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術の世界最大規模の学会で、アートギャラリーの採択率は約9%(200件中18件)。60カ国以上から8,000人以上が集まる東京国際フォーラムの会場に、自分の作品が並んだ。

その後京都に戻り、卒業制作をまとめ、2025年3月に学部を卒業。卒業後は3月から7月までインターンシップをしながら出願準備を進め、2025年7月にムンバイに戻ってきた。今度は大学院生として。

ちなみにインターン中、ハイデラバードの職業訓練校を訪れる機会があり、食堂で冷めた料理を食べて腸チフスになったこともあるが、それ以外は至って元気だ。

デザインとアートの文脈で、将軍と同じ空間にいる

IIT Bombayでは年に一度「Tech Connect」というイベントがある。研究や作品を学外に向けて発表する場で、企業や政府関係者なども来場する。

2025年冬のTech Connectで、冒頭に書いた将軍のエピソードが起きた。アニル・チョーハン将軍がインスタレーションの前に立ち止まり、画面を覗き込んでいた。

デザインとアートの文脈で、インド最高位の軍人と同じ空間にいる。そういう状況が生まれるのがIITというキャンパスで、インドという国だと思っています。日本にいたら、おそらく一生交わらなかった場所に、今自分はいる。

このNoteについて

IIT Bombayのデザイン大学院で日々感じること、インドの生活、研究のこと、作品のこと——を、日本語で発信していこうと思ってこのアカウントを始めました。

「インドって面白そうだけど、実態がよくわからない」 「IITって理系だけじゃないの?」 「日本からインドの大学院って、どうやって行くの?」

そういう疑問を持っている人に、少しでも解像度の高い話を届けられたらと思っています。役に立つ情報もあれば、ただの日記になる回もあると思いますが、よかったらついてきてください。

藤田麟太郎 / Rintaro Fujita MDes by Research, IDC School of Design, IIT Bombay

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