ほろ酔いの六甲道

神戸は、海に両手を広げ
山に背中をあずけている街だ。
六甲山の登り口にある六甲道駅。
アーケードの照明、惣菜の湯気、
部活帰りの学生の声が
コンコースを低く流れていく。
その一角の小さなショットバーで、僕はバーボンを舐めている。
暮れゆく駅の気配も、季節の移ろいも、氷が溶ける速度に合わせて身体に染み入る。
「おかわり、いかがですか」
若いバーテンダーの、いつもの誘い水。
じゃあ、もう一杯。
いつのまにか
六甲山は黒い背中になり、
僕は少し謎めいた男になる。
ひらがなで会話をしたい気分。
構内アナウンスが夜を告げる。
そろそろ明日に向かって席を立とう。
ろっこうみちは、すきなえき。


