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【せりふ三題噺】負けず嫌いだからね|うさぎ.ボール.万年筆|ショートショート


タイトル:閃きを追いかける白いうさぎ

森のはずれに、不思議な図書館があった。

そこでは、本は読むものではなく、まだ生まれていない物語を待つ場所だった。

ある日、少女は一匹の白いうさぎに出会う。

うさぎは赤いボールをぽんぽんと弾ませながら走っていた。

「待って!」

少女が追いかけると、うさぎは振り返って笑う。

負けず嫌いだからね

そう言うと、また森の奥へ駆け出した。

少女は夢中で追いかける。

転びそうになりながらも、ボールを見失わないように。

やがて二人は図書館へたどり着いた。

うさぎは棚の奥から一本の古い万年筆を取り出す。

「これを貸してあげる」

少女が受け取ると、ペン先が淡く光った。

紙の上に線を引こうとした、その瞬間。

何も考えていなかったはずなのに、言葉が次々とあふれ出す。

風が歌い、

雲が笑い、

星が花を育てる。

ページはあっという間に物語で満たされた。

「すごい……」

少女が息をのむ。

うさぎは満足そうに耳を揺らした。

「それが閃きさ」

「どこから来るの?」

少女が尋ねると、うさぎは空を見上げる。

「追いかけている時には見つからない」

「でも、夢中になって走っていると、向こうから飛び込んでくるんだ」

そう言って赤いボールを高く投げた。

ボールは夜空へ消え、一瞬だけ流れ星になった。

少女が目を閉じて願い事をすると、万年筆の先から小さな光がこぼれる。

その光は新しい一冊の本になり、図書館の棚へ静かに並んだ。

それ以来、森では時々白いうさぎが走る姿が目撃されるという。

赤いボールを弾ませながら。

誰かの心へ、次の閃きを届けるために。



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