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【青ブラ文学部】黙っているのは嘘つきと同じよ|ショートショート


タイトル:本音は湯気の向こうに

朝食の食卓。

焼き魚の香りと味噌汁の湯気が部屋に広がる。

祖母は新聞をたたみながら、私の顔をじっと見た。

「何か言いたいことがあるんじゃない?」

私は首を横に振る。

「別に」

祖母はお茶をひと口飲んで、ふっと笑った。

「黙っているのは嘘つきと同じよ」

私は思わず顔を上げた。

そんな大げさな、と思った。

でも祖母は続ける。

「本当のことを隠してるって意味じゃないの」

「伝えたいことを胸の中にしまったままだと、相手には何も伝わらないでしょう?」

その日は、父の誕生日だった。

私は照れくさくて、「おめでとう」の一言が言えずにいた。

どうせ分かっているだろう。

そんな気持ちも少しあった。

けれど祖母の言葉を思い出し、玄関で靴を履く父に小さく声をかけた。

「……お誕生日、おめでとう」

父は振り返り、少し驚いた顔をした。

そして照れくさそうに笑う。

「ありがとう」

その一言だけだった。

でも、家の中が少し明るくなった気がした。

夜、祖母がお茶を飲みながら言う。

「ほらね」

私は笑って答えた。

「黙ってるだけじゃ、分からないね」

祖母はうなずく。

「言葉ってね、相手に届いて初めて贈り物になるんだよ」

湯気はゆっくりと天井へ昇っていく。

その日の食卓は、いつもより少しだけ温かかった。



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