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【毎週ショートショートnote】トイレットペーパードライバー|ショートショート



タイトル:終身雇用のトイレットペーパードライバー

その仕事は、少し変わっている。

――トイレットペーパードライバー。

見えない道を走って、
必要な場所に紙を届ける。

それだけ。

誰にも見られないし、
感謝されることもほとんどない。

でも、なくなると困る。

だからこの仕事は、終身雇用だった。

一度選ばれたら、
ずっと走り続ける。

「まあ、安定してるよ」

先輩はそう言って笑った。

確かに、悪くはない。

決められたルート。
決められた速度。
決められた供給。

何も考えなくても、
ちゃんと回る仕組み。

でもある日、
ふと気づいた。

「……これ、誰が決めたんだ?」

答える人はいない。

ただ、道だけが続いている。

白く、細く、
どこまでも伸びるライン。

トイレットペーパーみたいに。

そのとき、
視界が少しだけ揺れた。

ルートが、一本じゃない。

分岐がある。

今まで見えなかった道が、
急に浮かび上がる。

「……え?」

心臓が、強く打つ。

選べる。

初めて、そう思った。

終身雇用は、
ただの前提だったのかもしれない。

絶対じゃない。

そう気づいた瞬間、
ハンドルが軽くなる。

「行ってみるか」

誰に言うでもなく、つぶやく。

新しい道へ、少しだけ切る。

タイヤが、違う音を立てる。

それは不安じゃなくて、
どこか新しい感覚だった。

走る理由は、
与えられるものじゃない。

選び直せるものなのかもしれない。

トイレットペーパーは、
今日もどこかで必要とされている。

でも、その届け方は、
ひとつじゃない。



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